■預貯金だけではない老後資金の備え方



【40~50歳代】リアルな貯蓄額を円グラフでみる。元金融機関...の画像はこちら >>

40代、50代といえば収支のバランスが大きく変動する時期です。



生涯において最も収入が高くなり、またお子さんのいる世帯では、大学費用と重なる方も多いのではないでしょうか。



とはいえ、目の前の収支ばかりを気にしていると、あっという間に老後を迎えることになります。



まだまだ働き盛りの時期とはいえ、確実に近づいてきている老後についても向き合わなければいけません。



では、いま40代や50代のリアルな貯蓄平均額はどれくらいなのでしょうか。近年問題になっている「老後破産」の対策も含めてお話していきたいと思います。



■40歳代の貯蓄事情はどうなっている?



まずは、40代の二人以上世帯の金融資産保有額を、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」で確認してみましょう。



【40~50歳代】リアルな貯蓄額を円グラフでみる。元金融機関社員が老後破産の対策を解説

出典:金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとにLIMO編集部作成



■40代世帯「金融資産保有額」 ※金融資産を保有していない世帯を含む



  • 平均値:916万円
  • 中央値:300万円

■分布



  • 金融資産非保有:24.8%
  • 100万円未満:9.4%
  • 100~200万円未満:7.5%
  • 200~300万円未満:6.2%
  • 300~400万円未満:4.6%
  • 400~500万円未満:3.9%
  • 500~700万円未満:9.2%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:8.5%
  • 1500~2000万円未満:4.8%
  • 2000~3000万円未満:5.8%
  • 3000万円以上:4.8%
  • 未回答:3.7%

平均値を見ると1000万円に近い金額を貯蓄しているというデータになりました。

ただ、平均値は一部の大きい値に引っ張られ、しばしば実態とはかけ離れたケースが散見されます。



たとえば、年収2000万円、500万円、200万円の社員が1人ずついた場合、「平均年収」は900万円になります。これでは、あまり実態を捉えているとは言いにくいですね。



「中央値」はデータを小さい順に並べた時に、ちょうど真ん中に来る値を示したものです。よって「平均値」ではなく、「中央値」でみた方がより実態に近いといえます。



中央値を見ると、平均値では約900万円あった金融資産保有額が300万円まで下がっています。



分布を見ると最も多い割合を占めているのは「金融資産非保有の世帯」で、実に全体の約4分の1です。



4世帯に1世帯が金融資産を保有していない一方で、1000万円以上の金融資産を保有している世帯も全体の約4分の1となっており、差が非常に大きいことがわかります。



ちなみに、金融資産を保有している世帯に限ると、平均値は1235万円、中央値が531万円という結果になっています。



■50歳代の貯蓄事情はどうなっている?



では次に50代の貯蓄事情についてみていきましょう。



【40~50歳代】リアルな貯蓄額を円グラフでみる。元金融機関社員が老後破産の対策を解説

出典:金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとにLIMO編集部作成



■50代世帯「金融資産保有額」 ※金融資産を保有していない世帯を含む



  • 平均値:1386万円
  • 中央値:400万円

■分布



  • 金融資産非保有:23.2%
  • 100万円未満:8.9%
  • 100~200万円未満:6.5%
  • 200~300万円未満:4.5%
  • 300~400万円未満:4.0%
  • 400~500万円未満:3.4%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.3%
  • 1000~1500万円未満:8.0%
  • 1500~2000万円未満:5.7%
  • 2000~3000万円未満:6.6%
  • 3000万円以上:12.9%
  • 未回答:3.5%

平均値こそ約1400万円となっていますが、中央値をみると400万円となっており、老後が近づいていることを考えると非常に不安の残る数値となっています。



また、50代においても、最も多い割合を占めているのは「金融資産非保有の世帯」となっています。



次に多い層は「3000万円以上」の12.9%となっており、少し前に話題になった「老後2000万円問題」をすでにクリアしている世帯も見受けられます。



とはいえ、約4割もの世帯が金融資産保有額200万円未満となっており、老後に向けてしっかりとした資産作りが求められる世帯が多数存在することがわかりました。



■「老後破産」にならないために



「老後破産」という言葉を聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。



「なんとかなるだろう」「年金があるから大丈夫」といったように自身の老後について根拠なく楽観的に考えていると、万が一のことが起こってしまうかもしれません。



老後に向けてできることは、自分自身でしっかりと資産を増やしていくことです。



そこで近年では、「つみたてNISA」や「iDeCo」などの資産運用に興味を持つ人が増えてきています。



資産運用と聞くと、どのようなイメージでしょうか。「難しそう」「お金持ちがやっている」といった声をよく聞きますが、決してそんなことはありません。



日本銀行調査統計局の「資産循環の日米欧比較(図表2 家計の金融資産構成)」をみて下さい。



【40~50歳代】リアルな貯蓄額を円グラフでみる。元金融機関社員が老後破産の対策を解説

出典:日本銀行調査統計局「資産循環の日米欧比較(図表2 家計の金融資産構成)」



■家計の金融資産構成:現金・預金の割合



  • 日本:54.3%
  • 米国:13.3%
  • ユーロエリア:34.3%

■家計の金融資産構成:債務証券・投資信託・株式等



  • 日本:15.7%
  • 米国:55.2%
  • ユーロエリア:29.6%

欧米、特に米国では富裕層に限らず一般家庭においても資産運用は馴染みのあるものといえるでしょう。



日本ではまだまだ資産運用が身近なものになっていない印象ですが、2022年度より高校の家庭科の授業で、資産形成の授業がスタートしています。



預金をしっかりと保有することも大切ですが、超低金利時代が叫ばれているこの昨今では、預金だけではなかなか効率よく資産を増やすことはできません。



また、大きな金額となる老後資金を準備するには、長期間かけて準備する必要があります。



まずは情報収集をして、リスクを確認しながら自分に合った資産運用を探してみましょう。一歩踏み出すことで、老後は大きく変わってくるはずです。



■参考資料



  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/pdf/yoronf21.pdf )
  • 日本銀行調査統計局「資産循環の日米欧比較(図表2 家計の金融資産構成)」(2021年8月20日)( https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf )