■文房具メーカーの業績や株価はどうか?
「鉛筆」と聞いて思い浮かべるブランドは、40~50代なら三菱鉛筆の”uni”やトンボ鉛筆の”TOMBOW”ではないでしょうか。いや、昔からファーバーカステルを使っていたぞ、というおしゃれな方もいらっしゃるかもしれません。
大人になると鉛筆を使う機会は減りますが、ボールペンの使いやすさにこだわりがあったり、文房具が全般的に好きだという方も少なくないと思います。そこで、今回は文房具メーカーが現在どのような経営状況にあるのかを見ていきたいと思います。
■日本の文房具メーカーはすでにグローバル企業
三菱鉛筆(7976)やパイロットコーポレーション(7846)の売上高の地域別構成を見ると、2016年12月期決算では三菱鉛筆で売上高の50%弱が国内以外、またパイロットでは半分以上が海外という状況です。日本の文具メーカーは国内事業が中心かと思いきや、実際は海外で積極的な事業展開をしていることが分かります。
では、一般向けの文房具を扱う海外メーカーである仏BIC(以下、ビック)を見てみましょう。ビックの2016年の売上高は2,272百万ユーロ(1ユーロ=121円換算で約2,750億円)。その売上高構成は、拠点の欧州が全体の24%、北米が47%、残りがそれ以外の新興国となっています。
ただ、ビックは文房具だけではなく、カミソリやライターなどの事業も行っています。ちなみに文房具の売上高は737億ユーロ(同891億円)で全体の32%、その後にライター、カミソリ事業と続きます。
ビックの文房具事業だけを見ると、売上高が最も大きいのがアジアで、売上高のうち37%を占めます。次いで欧州の26%、北米の18%となっています。
このほか、万年筆でおなじみのパーカーやウォーターマンのブランドを有する米ニューウェル・ラバーメイドなどの文房具メーカーもあります。
■日本の文房具メーカーの業績はどうか
先に触れたように、日本の文房具メーカーの事業構造は既にグローバルなものになっています。ということは、事業としては電機や自動車メーカーと同じく、国内で生産する場合には為替レートの影響を受けると言えます。
パイロットも三菱鉛筆も、アベノミクスの金融政策で円安誘導されてきたこともあり、2012年以降の経常利益は堅調に拡大してきています。
ただ、円安のみの恩恵を受けてきたかといえばそうではありません。たとえば、三菱鉛筆は1990年代後半から2000年にかけて為替レートが大きく円高に振れ、一時的に業績が低迷した時期もありますが、現在の為替レートを考慮するとその収益性は改善されていると見ることができます。
日本の文具の評価は人それぞれかもしれませんが、一度海外で文房具を手にすると日本製品の品質の良さとその価格の安さに改めて驚きます。100から200円で手に入り、日頃は大して気にせずに使っている文房具ですが、日本製品は同価格帯の海外の競合製品と比べて使い勝手と費用対効果で大きく優ると気づくことも多いでしょう。
■株価も業績と同様に大化け
さて、最後に株価について見てみましょう。結論から言えば、アベノミクスによって為替レートが円安に振れたことによってパイロットも三菱鉛筆も株価は大きく上昇しています。
ただ、注目すべきは株価そのものよりも、たとえば三菱鉛筆は30年前の1986年度から一度も当期純損失を計上したことがないということです。