近年、ネット銀行の独自サービスに注目が集まっています。
2022年8月22日から「auじぶん銀行株式会社」は、適用条件を満たすことで住宅ローン金利を年0.07%引き下げる「auモバイル優遇割」の適用条件を変更し、対象者を拡大することを発表しました。
今回の変更によって、借り入れ時までに条件達成に間に合わなかった方や、すでに住宅ローンを借り入れ中のお客さまも適用条件を満たすことで「auモバイル優遇割」の適用を受けることができるようになりました。
住宅購入時には「住宅ローン」を組むことが一般的ですが、既に住宅ローンを組んでいる人は「いつ繰り上げ返済すべきか」という点について考えることがあるかと思います。
繰上げ返済は総返済額を減らす効果が期待できるため、「なるべく返済を早く終えたい」と思う方も多いでしょう。
一方で、住宅ローンを繰り上げ返済するかどうかは、場合によっては慎重に検討する必要があります。
今回は、元銀行員である筆者が、住宅ローンを繰り上げ返済すべきでない人の理由や注意点についてご紹介します。
■住宅ローン減税とは
まずは住宅ローン減税について説明します。
住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んで一定の要件を満たすマイホームを取得した場合、住宅ローンの年末残高又は住宅取得対価のうち、いずれか少ない方の金額の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から一定期間※控除できる制度です。
※適用期間は新築の場合は原則13年、中古住宅の場合は10年
住宅ローン減税のメリットを受けたい人は、借り入れ後10年間(もしくは13年間)は繰り上げ返済しない方がよい場合もあるでしょう。
また、2022年からは、住居の省エネ性能に応じて所得税と住民税から差し引ける控除枠が拡充され、より制度が使いやすくなりました。
■住宅ローンの繰り上げ返済とは?向いている人も解説
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済分とは別に、元金の一部または全部を前倒しで返済することです。
繰り上げ返済には、「返済額軽減型」と「期間短縮型」の2種類あります。
それぞれの特徴があるため、ライフプランに合わせて選択すると良いでしょう。
■返済額軽減型
繰上げ後の残りの期間を変えずに、毎回の返済額を減額するタイプ。
毎月の返済にあまり余裕がない場合や、近い将来に教育費の負担増などが予想されるような場合には「返済額軽減型」を検討しましょう。
■期間短縮型
繰り上げ後の返済額を変えずに残りの返済期間を短くするタイプ。
利息の軽減効果は「返済額軽減型」よりも大きいため、毎月の返済に余裕があるなら「期間短縮型」を優先すべきでしょう。
※一部の住宅ローンでは、「期間短縮型」しか選べないものもあるので、借入先を決める前に必ず確認しましょう。
■繰り上げ返済を考える時の注意点
住宅ローンの繰り上げ返済のご相談は多く、「とにかく返済を早く終えたい」というお客様の声を聞いていました。
住宅ローンを組む家庭では、住宅資金に限らず、教育資金・老後資金の準備などの「人生の三大資金」によって、家計を圧迫しているというケースも少なくありません。
年齢が若いほどこれからお金が必要となる局面が多くなるため、繰り上げ返済をする場合には、ある程度まとまった貯蓄は残しておきましょう。
繰り上げ返済を優先しすぎた結果、手元に十分な資金が残らず、その後の生活での家計のリスクを増やしてしまう可能性があることを認識する必要があります。
無理に貯金を切り崩してまで繰り上げ返済を行うのは、住宅ローンの利息軽減以上に家計の負担が大きくなる恐れがあるため、家計の状況に合わせて慎重に検討しましょう。
■住宅ローンの団体信用保険とは
住宅ローンを組むときに、フラット35等以外の住宅ローンでは団体信用保険(団信)への加入が融資の必要条件になっています。
団体信用保険(団信)とは、住宅ローンの契約者が万が一亡くなったり、高度障害になったり場合、保険会社が残りのローンを返済してくれる保険です。
団信の中には、「三大疾病保障」などを選択できる特約プランもあり、金融機関によって取り扱いはさまざまです。住宅ローンの金利を上乗せすることで、さらに保障を手厚くすることができます。
各金融機関では、この団信の品揃えや上乗せ金利の引き下げなどの競争が激しくなっているので、住宅ローン申込時に確認しておきましょう。
そのため、繰り上げ返済をした場合は団信の保障額を減らすことにもなるので、必要保障の見直しなども忘れずに行いましょう。
■住宅ローンの金利は他に比べると非常に低い
現状、住宅ローンはさまざまなローンの中でも金利が相対的に低いローンとなっています。つまり、「借入するなら住宅ローンが1番お得」ということになります。
たとえば、住宅ローンを繰り上げ返済した後、教育資金やマイカー購入資金などが足りなくてお金を借りようと思った際、住宅ローン以上に高い金利で借りることになります。
特に、教育資金については必要になる時期も決まっており、子ども自身が多額の奨学金に頼らなくてもよいように計画的な準備を心掛けたいものです。少なくとも低金利の間は、住宅ローン減税を優先しつつ、将来的に必要になるお子様の教育資金や老後資金といったことを考慮しながら、住宅ローンの返済計画を考えていくことが重要です。
■まとめにかえて
今回は住宅ローンについて解説しました。
人生の3大資金の「住宅資金」「教育資金」「老後資金」ですが、住宅ローンや教育ローンがあるのに対して、老後資金については自分自身で貯蓄するのが一般的です。
ローンの早期返済を急ぐあまり、将来的に家計が苦しくなってしまうリスクも考えられます。
老後を迎えた頃に後悔しないためにも、ローンの返済と貯蓄のバランスに配慮することが肝心です。現役世代から、少額でもコツコツと長期的な資産形成を心掛けていましょう。
■参考資料
- 全国銀行協会「繰上返済とは」( https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/5218 )
- 国土交通省「すまい給付金 住宅ローン減税制度の概要」( https://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/ )