■児童手当を振り返る
2022年10月より、年収1200万円以上の世帯では児童手当の特例給付が廃止となります。
所得により児童手当の給付金額や給付自体がなくなることに違和感を感じる方もいるでしょう。
一方で、子育て世帯の世帯数の傾向をみると、約30年間で半減していることがわかります。
子育て世帯の推移を見ながら、10月よりはじまる児童手当の改正についてもみていきましょう。
■子育て世帯は約30年で半分以下に減少へ
少し前の調査になりますが、厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より、1986~2019年までの子育て世帯の割合の推移を確認しましょう(2020年の調査は中止)。

出所:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」
■子育て世帯の割合の推移
- 1986年:46.3%
- 1989年:41.6%
- 1992年:36.5%
- 1995年:33.4%
- 1998年:30.3%
- 2001年:28.7%
- 2004年:28.4%
- 2007年:26.0%
- 2010年:25.3%
- 2013年:24.2%
- 2016年:23.4%
- 2017年:23.3%
- 2018年:22.0%
- 2019年:21.6%
子育て世帯数は1986年から2019年をみると24.7ポイントの減少と、半分以下になっています。
1986年には子育て世帯が全体の半数近くいましたが、2001年には20%台となり、2010年には4世帯に1世帯へ、2019年には約5世帯に1世帯へと減少しています。
2016~2019年まで1年ごとに見ても連続で減少しており、今後さらなる減少は予想されるでしょう。
子どもの人数別に見ると1986年と2019年では子ども1人で6.2ポイント、2人で13.6ポイント、3人以上で4.9ポイント減少しています。
現代では子育て世帯は一般的とは言えなくなりました。
■2022年10月児童手当が年収1200万円以上世帯で廃止へ
財務省の「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」によれば、「子ども手当(平成24年から児童手当へ変更)」の創設とともに、0~15歳の年少扶養親族への扶養控除が廃止されています。

出典:財務省の「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」
現在、16歳未満の子どもは扶養控除の対象になりません。
年少扶養親族への扶養控除の代わりにできた児童手当は、以下のように支給されています。
■児童手当の月額
- 3歳未満:一律1万5000円
- 3歳以上小学校終了前:1万円(第3子以降は1万5000円)
- 中学生:一律1万円
児童手当には所得制限が有り、夫婦どちらかがモデル世帯で年収960万円以上※となる場合、特例給付で「児童1人当たり月額一律5000円」となります。
※児童2人+年収103万円以下の配偶者の場合等
2022年10月からはこの特例給付が目安年収で1200万円以上となる場合、廃止されます。
つまり目安年収で年収1200万円以上となる16歳未満の子がいる家庭は、児童手当も扶養控除もない状態となります。
■まとめにかえて
年収1200万円以上あればゆとりがある印象ですが、日本は累進課税で年収が高いほど税負担も重く、また家庭により事情はさまざまです。
16歳未満のお子さんがいるご家庭では住宅ローンを抱えながら、養育、そして教育費も大きくかかるため、決して余裕があるとは言えないご家庭も多いでしょう。
約30年で日本の子育て世帯は半減し、長年、少子化対策の必要性もさけばれています。待機児童の解消など対策がなされる部分がある一方で、現状を見るとまだ少子化対策には不足する部分があるといえるでしょう
■参考資料
- 厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」世帯数と世帯人員の状況( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/02.pdf )
- 内閣府「児童手当制度のご案内」( https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html )
- 内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律等の施行について」( https://www.cao.go.jp/houan/pdf/204/204_2gaiyou.pdf )
- 財務省「扶養控除の見直しについて(22年度改正)」( https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/047a.htm )
- 国税庁「No.1180 扶養控除」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm )