■完全撤退ではないがゴルフ人口減で環境は厳しい
■ナイキに続き、アディダスがゴルフ用品から撤退
最近、ゴルフに関して残念なニュースが続いています。
2017年5月、スポーツ用品大手の独アディダスが、「テーラーメイド」などのゴルフ用品事業を米投資ファンドのKPSキャピタル・パートナーズに売却すると発表しています。
ちなみに、米ナイキも昨年8月にゴルフ用品事業からの撤退を発表していますので、世界のスポーツ用品大手2社が相次いでゴルフ用品(クラブなどのゴルフの道具、ギアとも呼びます)に見切りをつけたことになります。
残念なニュースといえば、男子ゴルフの元世界ランキング1位選手であったタイガー・ウッズ氏が、5月末に米フロリダ州でアルコール等の影響下で車を運転した容疑により逮捕されたというのもありました。
その後、ウッズ氏は釈放され、逮捕時は飲酒ではなく腰や背中の痛みを緩和するため薬を服用していたことが報じられてはいるものの、かつての名選手の疲弊した姿とゴルフ界の低迷が重なって見えてしまったという方も少なくなかったのではないでしょうか。
■背景にある先進国でのゴルフ人口減少
周知の通り、ナイキ、アディダスのゴルフ用品からの撤退の背景には、世界的なゴルフ市場の停滞があります。世界最大のゴルフ大国である米国では、2005年に3,000万人を超えていたゴルフ人口が2015年には2,410万人まで落ち込んでいます(米国ゴルフ財団調べ)。
また、世界第3位の日本でも、2005年の1,080万人から2015年には760万人に低下しています(公益財団法人日本生産性本部調べ)。
この理由としてしばしば指摘されるのは、日本では少子高齢化による人口減少や、かつてのゴルフ市場を支えていた接待需要の減少、団塊世代のゴルフからの引退などです。
また米国では、プレー時間が長すぎる、ルールやマナーが厳しすぎる、お金がかかるなどを理由に、若年層、とりわけ1980年代以降に生まれた「ミレニアル世代」のゴルフ離れが進んでいるのが一因であるとされています。
■両社とも完全撤退ではない
とはいえ、ナイキ、アディダスともにゴルフの用品市場からは撤退しますが、ウエアやシューズなどは継続しています。また、「撤退」と大きく報じられたものの、両社ともにゴルフ用品事業は全社売上の1~2%に過ぎない小規模な事業であることから、撤退に伴う「痛み」はそれほど大きなものではなかったことにも留意すべきでしょう。
つまり、両社とも完全にゴルフを見切ったということではなく、「切りやすい」ゴルフ用品から撤退し、事業ポートフォリオの選択と集中を進めたことが実態であるということになります。
■今後に希望を持ちたい
ゴルフ関連事業から完全撤退しなかった背景としては、まず、日米ともゴルフ市場は長期凋落傾向にあることは間違いないものの、スポーツ関連市場規模としては依然として無視できないほど大きいことがあるでしょう。
また、日米ともに低料金でもゴルフができるプランを拡充するなど、ゴルフ人口を増やす取り組みが行われ復活の可能性が残っていること、さらに、中長期的には新興国の経済発展に伴い新たな市場の拡大が期待されることなどが考えられます。
実際、日本の場合、2015年のゴルフ人口は2014年の720万人から約40万人の増加に転じています。今年限りで引退を表明した宮里藍さんの最後のプレーを見届けようと注目が集まっているように、ゴルフ離れが進んでいる日本とはいえ、潜在的なファン層は、まだまだ多くいることが伺えます。
また、米国の女子メジャーでは、タイ出身のアリヤ・ジュタヌガーン選手の活躍が話題になっており、こうした動きが新興市場でのゴルフブームにつながる可能性もあります。
「暗いニュース」に惑わされず過ぎずに、一度は離れてしまったかつてのゴルフファンや、これからゴルフをやろうとする若者世代をゴルフ場に呼び込む取り組みが世界的に進められることを期待したいと思います。