今、様々な業種や企業で直面しているのが労働力不足。有効求人倍率が1倍を超える状況が続くなど、もはや慢性的な人手不足と言えるでしょう。
■良い退職者(グットリーバー)と悪い退職者(バットリーバー)とは
外資系金融機関に勤務していたA氏は、企業から見た退職者には2種類あると言います。
「一つは円満に退職した社員。もう一つはもめ事を残したまま退職する社員」
A氏が勤務していた金融機関では前者をグッドリーバー(良い退職者)、後者をバッドリーバー(悪い退職者)と呼んでいたそうです。リーバーとは「去る者」という意味です。
では、それぞれどのような場合が該当するのでしょうか。
■もめ事を起こすとはどういうケースか
良い退職者というのは、よく「円満退職」と表現されますが、多くの説明は不要でしょう。退職者が次なる目標に向けて、これまでの会社をある意味で「卒業」して新たな職場に移ったり独立していく際、お互いにしこりを残さないで去るケースです。
会社側が退職した社員を指して「円満退職」という言葉を使うのはあまり見受けられませんが、退職者が自らのメールなどで「円満退職しました」と表現しているのを目にしたことはあるのではないでしょうか。
では、もめ事を起こすというのはどのようなケースでしょうか。ただし、ここでいうもめ事とは「会社から見た」もめ事です。
A氏が外資系金融機関で見た事例では、次のようなバッドリーバーがいたそうです。
「私が勤めていた金融機関で、若手で成績が悪い社員を退職に追いこもうとしました。その社員は自信過剰なところもありましたが、退職を迫られてプライドを大きく傷つけられたようで、すぐにはその状況を受け入れられなかったようです」
「彼は専門職でしたが、そのまま会社に残れば総務部に異動になると告げられたそうです。総務部での業務は、彼が担当していた仕事とは全く異なるものでした。その後、自分で弁護士を立てる立てないでもめたあげく、自分の居場所はもうないということで会社を去っていきました。しばらくして海外のビジネススクールに入学したそうです」。
A氏は続けます。
「彼は当時在籍していた会社からすればバッドリーバーです。別の金融機関に就職する際には、これから採用する人物がどのような経歴・経験を経てきたか調査が入ることがあります。もっとも、業界のうわさ話は広がるのが早く、裁判沙汰になった人物は多くの人が知るところになります。
■社外秘の情報を持ち出すケース
バッドリーバーには他にどのような場合があるのでしょうか。
「競合企業に転職するのは仕方がないとしても、社外秘の情報を持ち出してしまうケースです」
このコンプライアンスが厳しい時代に、果たしてそのようなことがあるのでしょうか。
A氏はこう言います。
「私が他の金融機関に転職したいと考え面接をしていると、採用責任者が社外秘であるはずの資料を提出せよというのです。私は当時在籍していた会社が嫌になって他の会社の面接を受けていたのですが、ルールはルールです。もちろんきっぱり断りました」
「しかし、驚くことに『お前の会社の他の応募者はみんなすぐに出すが、なぜおまえは出せないのか』と言われたのです。やましいことがあるのかと。勘弁してくれ、社内ルールを破れと言っているのはそっちの方だと言い返しました。そんな会社に入社してもいいことはないと思い、その話は取りやめにしました。世界的に有名な金融機関の話ですが」。
A氏は語気を強めて言います。
「社内ルールを守れないで去っていく人も、もちろんバッドリーバーです」
■採用担当者がさっと冷める瞬間
では、バッドリーバーではないにしても、採用担当者に良く思われないケースはあるのでしょうか。
大手電機メーカーで採用の現場にいるB氏は次のように言います。
「業界で苦しい企業も数多くある中、当社に入社したいという電機メーカー出身者の面接は日常茶飯事です。ただ、中には自分がいた企業の悪口を言う人がいます。そういう人物は、仮に当社に入社してもやめるときに同じ態度を取るのだろうと、どんなに優秀な人でも採用する気が一瞬で失せますね。なんでそんな基本的なことに気づかないのか不思議になります」
電機メーカーでは、業績悪化や粉飾決算などで会社都合による退職を余儀なくされた人も多かったことでしょう。そうした場合は、やめていった人から見ればとても円満退社と呼べる状況でないことは明らかですが、これから入社したい企業の面接で前職の悪口を言うのは厳禁のようです。
■まとめにかえて
いかがでしたでしょうか。「立つ鳥跡を濁さず」とはよく言ったもので、自分が新しい挑戦をしたい、またせざるを得なくなった時には、残された人に敬意を払いつつ、新しい職場では気持ちを切り替えたうえで過去の経験を最大限に活用するのが自分にとって最終的にはメリットが多そうです。あなたの退職時はどうだったでしょうか。