日経平均、急落ピッチは一段落も、日々の浮き沈みが激しい
連休のため4営業日だった先週の国内株市場ですが、週末3月19日(木)の日経平均は1万6,552円で取引を終えました。前週末終値(1万7,431円)比では879円安で、1万7,000円台割れとなった他、週足ベースでも6週連続の下落です。
今週あたまの23日(月)はいわゆる彼岸明けになります。
まずはいつもの通り、足元の状況から確認します。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年3月19日取引終了時点)

先週4日間の日経平均の動きを振り返ってみますと、全体的に下落基調の中、1万7,000円台後半から1万6,000円台前半の値幅内での推移となっており、次々と節目を下抜けるような急落ピッチは一段落しつつあるように見えます。
次に、ローソク足の並びをチェックすると、陰線・陽線・陰線・陰線という順でしたが、ここで注目するのは最初の2本、16日(月)の陰線と17日(火)の陽線です。16日(月)の終値が1万7,002円、17日(火)の終値が1万7,011円とほぼ同じのため、この2本のローソク足は「出会い線」と呼ばれる組み合わせとなっています。
出会い線はトレンド転換のサインとなることが多いのですが、その後の展開を見ても分かるように、今回は株価反発のサインとして機能しませんでした。肝心の17日(火)のローソク足が、下ヒゲよりも上ヒゲが長くなっていたため、「下押し圧力を跳ね返す戻り」というよりも「上値トライが大きく失速しての下げ渋り」の印象の方が強くなってしまったためと思われます。
下げの勢いは落ち着きを見せつつあるものの、日々の株価の浮き沈みが激しく、取引時間中の株価が1万7,000円台から1万6,000円へと動くような展開が目立ち、上値を試すような場面も見られませんでした。
中長期的なメドは先週と変わらず
その結果として、「値動きは荒いが方向感に欠ける」ことになったため、中長期的な視点で相場を捉えると、前回とあまり状況は変わっていません。
■(図2)日経平均の週足チャート(2020年3月19日取引終了時点)

上の図2は日経平均の週足チャートですが、先週のローソク足の株価位置は前回も紹介したトリプル・トップの「ネックライン」および、ギャン・アングルの「8×1ライン」のところで踏みとどまっており、引き続き意識されることになりそうです。
同様に、株価が戻りを試す展開となった場合は、前回と同様にTOPIX(東証株価指数)のギャン・アングルとNT倍率(日経平均÷TOPIX)で計算したものがメドになります。
■(図3)TOPIXの週足チャート(2020年3月19日取引終了時点)

先週末時点での2×1ラインが1,330p、3×1ラインは1,475p、4×1ラインは1,620pあたりです。それぞれに、先週末時点のNT倍率(12.89倍)を掛けて日経平均を単純に計算すると、2×1ラインは1万7,143円、3×1ラインは1万9,012円、4×1ラインは2万881円となります。
なお、NT倍率自体は、日経平均の指数寄与度の大きいソフトバンクの株価が下落していたこともあって、前週の13.81倍から低下しています。
NYダウが早い段階で2万ドルを回復するかに注目
確かに、これまでの株価の下げ幅やスピード、ファンダメンタルズ分析などのあらゆる面で「下げ過ぎ感」が出てきている他、テクニカル的にも下げ渋りの雰囲気は感じ取れ、株価が反発する場面もありそうですが、そこから先の株価の上値追いへと乗り切れないのが、足元の相場の難しさと言えます。
その背景のひとつが、米国株市場の下落基調が落ち着いていないことです。
先週末20日(金)のNYダウ平均株価は1万9,173ドルとなり、節目の2万ドル割れだけでなく、トランプ米大統領が就任した時の株価(2017年1月20日終値の1万9,827ドル)をも下回ってしまい、「トランプラリー」が終息したことになります。今週のNYダウが早い段階で2万ドルを回復できるかも今週の注目点です。
ちなみに、「トランプラリー」が終息したということで、国内の「アベノミクス相場」の始まった2012年11月下旬を起点としたギャン・アングルについても確認しておきます。
■(図4)日経平均の週足チャート(2020年3月19日取引終了時点)

先週末時点で見ると、3×1ラインが1万6,000円、4×1ラインが1万3,600円、8×1ラインが1万1,100円あたりになります。節目の1万5,000円も含め、相場が崩れてしまった際には意識されるかもしれません。
「事象」「不安」「対応」の視点で捉えることが必要
最後に、 前回 も紹介しましたが、足元の相場は「事象」「不安」「対応」の視点で捉える必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大や原油安などの現在発生している「事象」に対して、景気減速や企業業績の悪化、信用リスクといった「不安」が高まり、金融・財政政策などの「対応」がどこまで事象や不安にあらがえるかといった構図です。
先週も国内外で様々な「対応」策が出てきましたが、株式市場の反応はイマイチで、不安を拭い去ることができませんでした。対応策はふたつに分けられ、一方は新型コロナウイルス対策、そしてもう一方は経済対策となりますが、新型コロナウイルス対策の強化はヒト・モノの動きを制限し、経済活動を抑制するものとなるため、金融・財政政策の効果と打ち消し合ってしまうからです。
目先で株価が反発したとしても、「事象」「不安」「対応」の掛け合わせが好転したものでなければ、株式市場は簡単に下げてしまう状況がくすぶることになるため、注意が必要です。
(土信田 雅之)