※この記事は2021年8月18日に掲載されたものです。
計画を前倒しし、資産5,000万円で早期リタイア。フィリピンに移住してFIRE生活を送る
CASE05:アキラさん
▼Profile
大学卒業後、国内企業に就職。28歳のとき米国に赴任したのを機に株式投資を始め、およそ15年で5,000万円の資産を形成する。2019年5月に会社を早期退職し、フィリピンの地方都市に移住。投資ブログ『 アキラ海外ブログ セミリタイア/FIRE/海外移住のホンネ 』、およびYouTubeチャンネル『 アキラ海外チャンネル』 『アキラFIREセミリタイア準備チャンネル 』を運営する。
近著に『 忙しい普通のサラリーマンがセミリタイアできる本: 再現性重視で目指せFIRE! 』『 それでもFIREする?普通の人がセミリタイアして聞かれた質問と答え完全版: 失敗や後悔しないためのリアルな体験談 』『 金持ちFIRE貧乏FIRE 』『 普通のサラリーマンが海外移住を検討する前に読む本:セミリタイア4年目サイドFIRE中 』がある。
※アキラさんのチャンネル内で、今回のトウシル記事についての補足動画をアップしていただいています。よりリアルなフィリピン生活が公開されていますので、こちらもぜひご覧ください。「 楽天証券トウシルさんのサイドFIREセミリタイア取材に追記 」※YouTubeが開きます。
[アキラさんのFIREデータ]
■FIREを実現した年齢:44歳
■FIREを実現したときの資産額:約5,000万円
■資金作り方法:インデックス投資
■現在の収入:ブログ、YouTube、および妻の給与
Q FIREを目指そうと思ったきっかけは?
若い頃から会社員に向いていないと思っていた
社会人になって間もない頃から「自分は会社員には向いていないかも」と思っていました。
サラリーマン社会って、理不尽なことだらけだと感じます。上司に90点取れといわれ、だったらもっと取ってやろうじゃないかと奮起して95点取ったら、なぜ100点取れなかったのかと叱られた……というようなこともありました(笑)。
もちろん、そんな状況の中でも多くの人は腐らず頑張っているわけですが、私には耐えがたく、サラリーマンとは違う生き方ができないかと常に思っていました。
ただし、それがどんな生き方なのかはわかりませんでした。当時はFIREなんて言葉はありませんし、周りにも、早期退職してのんびり暮らしたいと話している人はいませんでした。
そんな中、アーリーリタイアを意識するようになったのは30代半ばになってからです。米国に赴任になってすぐ、投資を始めました。海外勤務になって少し給与が増えたこともあり、資産形成の一助になればくらいの思いで、株式投資に挑戦してみたんです。
そうしたら思っていた以上の結果が出ました。最初、個別株投資を行ったところ、大損したのですが、途中からインデックス投資に切り替えたら、じわじわと資産が増えていきました。
具体的には、米国の株式指数であるS&P500に連動するインデックスファンドに7割、新興国を対象とするインデックスファンドに3割の割合で投資していました。
そこで1つ目標を掲げました。これからも投資を続けて1億円の資産をつくろう、そして1億円に届いたら会社を辞めてのんびり暮らそう、というものです。
ずっと米国勤務を続けるのか、日本に戻るのかなどにも左右されるので、いつ頃になるかはわかりませんでしたが、できるだけ早く実現したいと思っていました。
Q 最終的に退職を決断した理由は?
目標の1億円には届いていないが、老後までしのげると確信した
実は資産が1億円に届いたから、ではありません。私は2年前、44歳のときに会社を辞めてFIREに踏み切ったのですが、そのときの資産は5,000万円ほどでした。
それでも決断したのは、1つには1億円に届くのを待っていたら、年を取り過ぎてしまうと思ったからです。
そしてもう1つは、今の資産でもFIREできそうとわかったからです。私はインデックス投資を行うとともに、生命保険と個人年金にも加入していました。どちらも日本ではなく、海外の商品で、資産5,000万円のおよそ半分は、それらに充てていました。
私に万が一のことがあったとき、妻と子供2人にお金を残せるよう生命保険に入り、私たち夫婦の老後資金として個人年金に入っていたんです。
ですから、個人年金が支払われる60歳までしのげば、その後はなんとかなるという思いがありました。今は海外暮らしなので加入していませんが、会社員時代は厚生年金に入っていたので、公的年金も多少は入ると思います。
となると、残すは15年。15年なら、資産の残り半分をこれまで通りインデックス投資で運用していけば、十分に乗り切れると考えました。
ただし、1つ懸案がありました。近い将来、早期退職するつもりだと妻には話していたのですが、あまり反応がよくありませんでした。だから、会社を辞めると伝えたら、反対されるだろうと思いました。
そこで、今いくら資産があるのか、今後どんな出費が予想されるのか、その結果いくら残るのかなどをまとめた計画書を作成し、それを妻に見せて説得しました。それで何とか合意を得ることができました。
Q フィリピンに移住した理由は?
家族4人、月20万円で暮らすことができる
最大の理由は生活費が安いからです。今の資産でも個人年金が出るまで乗り切れるとはいえ、決して余裕があるわけではありません。移住したら、多少でも収入を得るため、ブログやYouTubeを始めるつもりでしたが、そんなに簡単に稼げるとは思っていませんでした。
そのため、生活費を切り詰める必要がありました。具体的にいうと月20万円程度で暮らせたら理想かなと思っていました。
となると日本や米国だと、ちょっときつい……。過去の経験では日本だと最低30万円、米国だと35万円ほどかかりました。
私は米国勤務が長いこともあって、住む場所にこだわりはありませんでした。米国には家族で赴任していたため、妻や子供たちも同じでした。それで日本と米国にこだわらず、月20万円で暮らせそうなところを探し、最終的にフィリピンに決めました。
子供達が英語力を身に付けられる点も大きな魅力でした。
まずは東南アジアに絞り、シンガポールやマレーシア、タイ、フィリピンなどについて調べてみました。それらの国なら家族が安心して暮らせると思ったからです。
その結果、シンガポールとマレーシアは物価が高いうえ、永住ビザが取りにくいことがわかりました。取得料が高いだけでなく、収入、あるいは資産の制限がありました。また、タイは物価が安く、永住ビザも取りやすいのですが、英語が通じないのが難点でした。
一方フィリピンは、物価が安い、永住ビザが取りやすい、英語が通じるなどすべての条件を満たしていました。それに加えて、私が現在住んでいるフィリピンの地方都市は比較的治安がよく、教育環境も十分です。ただし、同じフィリピンでもマニラやセブなどの大都市だと住居費などが高くなるので、フィリピンの地方都市への移住を決めました。
将来、海外移住を考えている方のために、永住ビザについて付け加えておきます。フィリピンはシンガポールなどに比べて取りやすいといいましたが、それでも家族4人だと420万円ほどかかります。そのうち350万円は預託金なので、ビザを返還すると戻ってきますが、取得時にはそれだけのお金が必要です。
お金を準備するのが難しい場合、国によっては観光ビザで入国し、延長しながら長期間暮らすことが可能なので、その方法を選ぶのも手かもしれません。
いずれにしても、永住ビザを取るだけでもかなりお金がかかるということは知っておく必要があると思います。
Q FIRE後の生活は?
ブログ、YouTube、17LIVE、買い物、食事の準備……
フィリピンに移住して2年ほどたちますが、今のところ生活は快適そのものです。ここは地方都市といってもそこそこ大きい町なので、欲しいものは何でも手に入ります。スーパーに行けば、日本の調味料なども売られていますし、食生活もまったく問題ありません。
東南アジアというと暑いイメージがあるかもしれませんが、ここは海沿いの町ということもあって、それほどではありません。東京と比べたら空気がきれいだし、景観もいいので、とても暮らしやすいです。
最高気温も32度くらいまでしか上がりませんし、地震や台風の被害がほぼないのも魅力です。
子供たちは地元の学校に通っていますが、言葉が英語なのでコミュニケーションの問題もなく、学校生活を楽しんでいるようです。
一方、私が働いていたときはいつも家にいた妻は、こっちに来て働き始めました。在宅勤務で、週に何日か自宅でパソコンを使い、日本の企業さんとやり取りをしています。
私自身は、こっちに来てすぐFIREや海外移住をテーマとするブログを始め、今年春にはYouTubeチャンネルも開設しました。さらに最近、ライブ配信の17LIVE(イチナナ)も始めて、けっこう忙しくしています。
とくに最初のうちは、1本記事を書くのに何時間もかかっていたため、朝から晩までパソコンに向かっていることもありました。そうしたら妻に「何のためにFIREしたの?」といわれまして……。それはそうだなと思い、今は1日5~6時間にとどめています。
私がセミリタイアする条件として、家事の手伝いをすることを決めていました。買い物と食事の用意を私が担当し、その他、掃除や洗濯などは妻にお願いするという分担です。担当の家事は、1日中パソコンに向かっていた時期も含め毎日行っています。
実は、この生活になってから、妻との仲が険悪になりかけたことがありました。毎日家にいて家事も行うので、家のことでいろいろ気になることがあったんです。妻がトイレットペーパーを一度に買いすぎるとか(笑)。
それで、会社にいたとき部下に命じていたような調子で「非効率なことはやめるべきだ」と妻にいいました。妻は私のこういった行動がとても不満で不快だったようです。
それでいい合いになったのですが、よくよく考えてみると、私が悪かったと思い直しました。いくら私が家事をやるようになったとはいえ、これまでは妻の聖域だったのだから、一方的に習慣や決まり事を変えるのはよくなかったかな、と。
それに、妻を部下のように扱ったのも間違いでした。ですから今は、妻が長年の間に築き上げた習慣やルールに従うようにしています。
とはいえ、非効率だなあと感じることもあります。それらに関しては妻の顔色をうかがいながら、少しずつ変えていこうかなと思っています(笑)。
Q FIRE後のマネー収支は?
支出は予定通り。もう少し収入を増やしたい
支出は予定通りで、だいたい月20万円程度です。ざっくり内訳をいうと、家賃が約6万円、水道光熱費が8,000円、食費が3万2,000円くらい、子供2人の学費と習い事にかかる費用が2~3万円、携帯電話代は日本よりはるかに安くて家族で1,000円ちょっと、その他レジャー費などが数万円といったところです。
ちなみに家は2LDKのアパートなのですが、1部屋1部屋が広く、リビングダイニングキッチンは30畳くらいあります。おそらく東京だったら、家賃20~30万円はかかると思います。
一方、収入はブログとYouTubeで得ていますが、まだ視聴者が少ないため、両方合わせても月2万円程度です。それに妻の給与を加えると、ひと月の平均収入は7万円から10万円といったところでしょうか。
今は現金の一部を少しずつ切り崩しています。それは予定していたことなので、焦りのようなものはありません。また、妻が働いてくれるおかげで、切り崩す額は抑えられています。
とはいえ、切り崩さないで済むのなら、それに越したことはないので、ブログやYouTubeの収入をもうちょっと増やせたらと思っています。
Q FIREしてよかったと思うことは?
人間関係のストレスが一切ない
1日24時間自由に使える、誰にも指図されない、家族と過ごす時間が増えた、などいいことずくめですが、1つ挙げるとしたら、人間関係のストレスがなくなったことです。
会社員時代を振り返ると、仕事そのものよりも、同僚や上司とどう付き合うかが、一番の悩みのタネでした。今はそういう人間関係の悩みが皆無で、それだけでもFIREしてよかったと思います。
Q FIRE志願者にアドバイスを!
今すぐ決心できないのなら、やめたほうがいい
「将来、FIREしたいのですが、何から始めたらいいでしょうか」。ブログをやっていると、こういう質問をいただくことがあります。そのとき、私は「本気でFIREを目指すのかどうか、今すぐ決めましょう」と答えています。今すぐでなく、今日中でもかまいません。今日、寝るまでに決めましょう。
こういうと「今すぐ決めるなんて無理。もっとよく考えてからでないと」と思う人が多いかもしれません。しかし、そう思った人は、いったんFIREのことは忘れたほうがいいと思います。なぜかというと、今、この瞬間決められない人は、いつまでたっても決められないからです。
FIREすると決めたら、次にすべきことは、ご自分の大切な人にそのことを伝えることです。家庭のある人なら妻や子供、独身の人なら両親や兄弟、彼や彼女です。そうすると、おそらく反対されると思います。「特別に給料が多いわけでもないのに無理でしょ」と。でも、説得する必要はありません。とにかく自分の決意を告げる、それによってより決心が固まるはずです。
誰かに話したら、鉄は熱いうちに打つことが大事なので、すぐに計画を立てましょう。現在持っている資産、さらに将来受け取るであろう資産(給与やボーナス、配当金など)を算出し、その資金をどのように運用するかを考えます。
それとともにこれからの人生で必要なお金をはじき出し、いくらあればFIREできるかシミュレーションしてみましょう。具体的なやり方については、私のブログやYouTubeで説明しています。
あまり投資の知識がない人は、詳細なプランを組むのは難しいかもしれませんが、その場合、今の段階ではおおざっぱなものでもかまいません。決意するだけでなく、何か行動を起こすことが大事なのです。
資産運用で大事なのは「時間」です。5年より10年、10年より20年運用を続けたほうが、大きな成果を残すことができます。だから、本気でFIREしたいなら、できるだけ早く決断し、できるだけ早く行動に移すべきだと思います。
ためらっていると、実現できる可能性はどんどん薄れてしまいます。そういう意味でも、今日寝るまでに決断すべきだと私は思います。
どう変わった?FIREのBEFORE→AFTER
FIRE前 FIRE後 起床時間 6時過ぎ 6時前後 通勤時間 約10分 0分 労働時間 約12時間 約6時間 毎月の生活費 約35万円(米国駐在時。国内勤務のときは約30万円) 20万円弱 収入 年収約700万円(米国駐在時。国内勤務のときは約450万円) 月7万円前後 収入源 会社の給与・ボーナス ブログ、YouTubeの収入。妻の給与 肉体的疲労度 毎日くたくたになるまで働いていた。帰宅後はすぐに就寝 ゼロ 精神的疲労度 職場の人間関係からくるストレスに悩まされていた 自分自身の力で必要額を稼ぐプレッシャーがある 毎日の充実度 0% 100%アキラさんのFIRE LIFE
6時 起床。家族の朝食を作る 7時 朝食 8時 「17LIVE」の生配信。何時に行うかは日によってまちまち。今はまだ視聴者が少なく、収入源になっていないが、将来のために続けている 11時 ブログやメールのチェック。必要に応じて返信。その後、昼食の準備 13時 ブログの記事執筆、YouTubeの撮影・編集など 15時 日によって昼寝 16時 買い物に出る。帰ってから夕食を作る 18時 家族全員で夕食 20時 入浴 22時 就寝※この取材に関する補足がアキラさまのブログ「 アキラ海外ブログ セミリタイア/FIRE/海外移住のホンネ 」内にアップされています。ご参考ください。
2021/8/19 楽天証券トウシルさんのFIREインタビュー!内容の追記説明と補足
(トウシル編集チーム)