ついに多くの個人投資家が待ち望んだ新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まりました。ネット証券大手5社によると、2023年12月20日時点での新NISA経由の投信積み立ては月2,300億円ということで、旧つみたてNISAにおける月間の買い付け金額が約1,000億円ということを考えると、新NISAを契機に投資を始めた人が多いことが推察できます。


 そこで、まだ新NISAをどのように使いこなせばいいか分からないという人に向けて、いくつかの観点から活用方法を紹介したいと思います。


新NISAの拡充ポイントを再確認しよう

 まず、そもそもNISAがどのような制度であるかを理解することから始めましょう。一般的に株式や投資信託に投資をした際に、売却益や配当、分配金が生じると、その金額の20.315%を税金として支払う必要があります。


 つまり、投資で100万円利益が出たとしても、100万円がそのまま手元に残るのではなく、手元には80万円弱しか残らないということです。しかし、NISA口座で投資をした場合、売却益や配当、分配金が生じても税金が掛からないため、先の例で言えば100万円がまるまる手元に残るのです。


 ただし、これまでのNISAには使い勝手の悪さがありました。「つみたてNISA」と「一般NISA」の併用ができないため、どちらかを選択しなくてはならず、「つみたてNISA」については年間の投資枠も40万円だったため、最大でも毎月3.3万円までしか投資できない状態でした。


 また、非課税保有期間も限定的であり、何かしらの事情で投資資産を現金化すると、一度使った投資枠が復活することもありませんでした。


 しかし、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠が新設され、これらは併用が可能となります。それぞれの投資枠が従来のNISAよりも大幅に増額されます。非課税保有期間は無期限となり、一度利用した投資枠も売却後に翌年以降、再利用ができるようになっています。


 2023年は新NISAを特集するメディアが多く、よく「新NISAは何点と評価しますか?」と聞かれましたが、私はよく「90点」と答えていました。


 本当は100点をつけたかったのですが、あまりに褒めすぎても胡散臭く思われるので、「ジュニアNISA」がなくなってしまったことを10点の減点としました。

ただ、ホンネは素晴らしい拡充だと思っています。


「つみたて投資枠」と「成長投資枠」、別の運用をした方がいい?

 さて、新NISAの魅力を再確認したところで、早速「新NISA」の活用方法を学びたいと思うかもしれませんが、基本的には特に新しいことをする必要はないと思います。


 肩透かしを食らった感じになるかもしれませんが、多くの個人投資家にとっては新NISAだから従来とは異なる投資法を採用しなくてはいけない、という考えは不要でしょう。


 つみたてNISAを利用して資産運用をしていた方は、これまで通りの運用方法でいいと思います。既に毎月の投資金額も投資先の投資信託も決まっているわけですから、それをそのまま引き継げばいいのです。


 仮につみたてNISAで投資ができる毎月3.3万円という上限金額が自分のライフプランにとっては少ないと感じていた方は、新NISAでは毎月の投資金額を引き上げるぐらいでちょうどいいかと思います。


 また、今回はつみたて投資枠と成長投資枠の2つの投資枠が併用できることから、投資枠ごとに違う運用をしなくてはいけないような印象を持つかもしれませんが、それは誤った考え方だと思います。


 成長投資枠に比べてつみたて投資枠は投資対象が限られており、これは従来の一般NISA、つみたてNISAと同様なのですが、そもそもつみたてNISAで資産運用をしてきた個人投資家にとっては、つみたて投資枠で従来通りの運用方法を引き継ぎつつ、成長投資枠でも同様の運用方法を行うことが可能です。


新NISA非課税限度額「1,800万円」は最短で使い切るべき?

 昨今は投資情報をネットで収集するという人も多いでしょう。やはり新NISA関連の動画やツイートは昨年から多く目にします。どれもクオリティが高く、私自身もそれらの情報に目を通していますが、少し気になる主張もありました。


 それは何かというと、新NISAの非課税限度保有限度額である1,800万円を最短で使い切った方がいい、という主張です。


 つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は240万円がそれぞれ年間の投資可能上限額となっていますから、合計で年間360万円の投資が可能です。よって、1,800万円の枠を最短で使い切るには、5年間かかるといえます。


 ではなぜ、最短で投資枠を使い切るべき、という主張なのかというと、そうすることで元本に対する複利の効果を最大限享受できるから、というのです。


 たしかに、複利の効果は投資期間が長くなれば長くなるほど、雪だるま式に効いてきます。しかし、それは投資を開始してからプラスのリターンがずっと続けば、というのが大前提であって、当然ながらそんなに都合よく株式市場は動きません。


 よく投資には分散が重要だといわれますが、これは投資対象を分散することでリスクを低減させましょう、というだけではありません。時間を分散することでもリスクを低減させましょう、という意味も含んでいます。


 5年間で投資枠を使い切るということは、30年、40年という投資期間において、最初の5年間だけの株価水準に賭けることを意味します。

私は、投資枠はしっかりと長期にわたって延々とつみたて投資をするべきだと考えます。


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(森永康平)