以前、「香港株市場が逆DeepSeek(ディープシーク)ショックで盛り上がっている」というレポートを執筆したのは、先月の2月21日でした。


当時に何を語っていたのかについては、 こちら を参照していただきたいのですが、あれから1カ月が経過しようとする中、「そろそろフォロー的なレポートでも書こうかな」と思っていたタイミングで、足元の日本株が反発基調を強める展開を見せています。


香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能...の画像はこちら >>

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~ 」


 今週の日経平均株価は、週初の17日(月)と翌18日(火)の両日ともに、いわゆる「窓空け」で上昇したほか、18日(火)の取引では、3万8,000円台を回復し、この日の高値が25日移動平均線にタッチする場面もありました。


<図1>日経平均(日足)の動き
香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 日経平均がさらに上を目指し、次の目標となる200日移動平均線や75日移動平均線などを超えて行くためには、今後も日本株に資金が流入し、買いが継続することがポイントになるわけですが、実は、今回のテーマに掲げる香港株市場の動向がそのカギの一つになるかもしれません。


好調さが続く香港株市場

 まずは、国内外の株価指数のパフォーマンス比較から、現在の香港株の状況を確認していきたいと思います。


<図2>国内外株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年3月18日時点)
※米国株と欧州株は3月17日時点
香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 上の図2を見ても分かるように、昨年末を100とした各株価指数のパフォーマンスは、香港株の強さが際立っています。18日(水)の取引でも高値を更新しています。


 それに続き、欧州株(ストックス600)と上海総合指数が堅調さを維持しているほか、日本株と米国株については、足元で戻してはいるものの、本格的な回復基調になるのかを見極めるのはこれからとなります。


 このように、香港株市場では、引き続き「中華テック株」が買われている様子がうかがえます。2月21日付のレポートでは、その注目銘柄として、「テリフィックテン(素晴らしい10銘柄)」を紹介しましたが、そこからさらに銘柄を絞り込んだ「セブンタイタンズ(7銘柄の巨人)」というキーワードも登場しています。


「テリフィックテン(素晴らしい10銘柄)」
 アリババ・グループ・ホールディング(阿里巴巴集団控股)、JDドットコム(京東集団)、BYD(比亜迪)、ジーリー・オートモービル(吉利汽車)、シャオミ(小米集団)、テンセント(騰訊控股)、バイドゥ(百度)、ネットイース(網易)、メイトゥアン(美団)、SMIC(中芯国際集成電路製造)


「セブンタイタンズ(7銘柄の巨人)」
 アリババ・グループ・ホールディング(阿里巴巴集団控股)、JDドットコム(京東集団)、BYD(比亜迪)、シャオミ(小米集団)、テンセント(騰訊控股)、ネットイース(網易)、SMIC(中芯国際集成電路製造)


 それぞれの具体的な銘柄は上記の通りにまとめましたが、主軸銘柄の構成自体はほとんど同じです。


 では、実際にセブンタイタンズのパフォーマンスはどうなのかについても見ていきます。


<図3>香港「セブンタイタンズ」銘柄のパフォーマンス(2024年末を100)(2025年3月17日時点)
香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~(土信田雅之)
出所:Bloombergデータを基に作成

 香港セブンタイタンズ銘柄は、1月27日のDeepSeek(ディープシーク)ショック以降、株価の上昇に弾みがついた格好ですが、3月17日(月)時点では、ネットイース(網易)を除いた全ての銘柄が昨年末からの上昇率が20%を上回っているほか、アリババ・グループ・ホールディング、シャオミ(小米集団)、SMICの上昇率に至っては50%を超えています。


 それに対し、米国のマグニフィセントセブン銘柄のパフォーマンスは、下の図4を見ても分かるように、さえないものとなっていて、3月17日時点では、メタ・プラットフォームズを除き、いずれの銘柄も昨年末比でマイナス圏に沈んでいます。


<図4>米「マグニフィセントセブン」銘柄のパフォーマンス(2024年末を100)(2025年3月17日時点)
香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

米中銘柄の比較では香港株の割高感も

 このように、米中テック株の動きに明暗が分かれている格好となっていますが、こうした香港株の上昇はどこまで続きそうなのかについても考えていきたいと思います。


<図5>米国と香港銘柄の株価指標比較(2025年3月17日時点)
香港株市場の好調はそろそろ一服?~日本株の上昇につながる可能性も~(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIおよび楽天証券WEB(REFINITIV)データを基に作成

 上の図5は、3月17日時点における、米マグニフィセントセブン銘柄と、香港セブンタイタンズ銘柄それぞれの予想PER(株価収益率)とROE(自己資本利益率)を並べたものです。


 PERを比較すると、米国株の下落と香港株の上昇によって、米中のあいだに目立った差がないところまで縮まってきているほか、ROEについては、全体的に米国の方が高くなっています。


 一般的に、高いPERを許容するには、企業業績の強さと期待が必要ですが、ROEから見た企業の「稼ぐチカラ」の効率性は米国株に優位性があるほか、香港株が以前の米国AI相場のような株価上昇を演じるには、市場の期待を上回る高い利益成長率が必要になってきます。


 もっとも、中国株は政治的な思惑や材料で相場を作ることが多く、もうしばらく香港株の上昇が続くかもしれませんが、株価指標面で見た香港株はそろそろ割高感が意識されるところまで来ており、近いうちに上昇の勢い鈍化する展開も視野に入れておく必要がありそうです。


 ちなみに、図5では米アップルのROEが非常に高くなっていますが、その理由としては、自社で工場や設備を持たずに、アウトソーシングで製品を製造していることや、積極的な自社株買いを行っていること、そして、十分なキャッシュを持ちながらも、あえて借り入れを行って財務レバレッジを高めることなどを通じて、自己資本に対する利益の割合が高いことが挙げられます。


香港・欧州株から日本株へ資金流入期待

 ここで話を日本株に戻すと、今週に入り、ウォーレンバフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが商社株を買い増ししていたことが報じられたのをきっかけに、日本株への資金流入の動きが再び活発になる兆しが出てきました。


 もちろん、トランプ政権の相互関税の中身が発表される来月(4月)あたまぐらいまでは、警戒感がくすぶることになりそうですが、これまで見てきたように、香港株の上昇が一服する展開になった場合には、日本株へ資金が流れてくることも考えられます。


 さらに、金融政策の利下げスタンスや、米国株と比べた割安感の修正、ドイツの新政権による財政拡大路線への変更などを受けて買われてきた欧州株も、図1を見ると、足元では伸び悩んでいることが確認できます。香港株だけでなく、欧州株からも日本株に資金がシフトする動きが出てきた場合には、日本株は思った以上に上昇する可能性があり、期待したいところです。


(土信田 雅之)

編集部おすすめ