高値が続いている金(ゴールド)。インフレ継続も相まって先高観もあります。
金(ゴールド)価格は引き続き高値圏に
金(ゴールド)は長期的に上昇を続け、足元でも金価格は高値圏にあります。金は「インフレに強い資産」と言われ、実際に1970年代の高インフレの際も価格が大きく上昇しました。
そしてデフレからインフレに転換した現在も上昇していますし、金価格は米ドル建てで動きますから円安の進行により、円ベースでみた金価格はさらに上昇することになります。
このように、インフレによる通貨価値目減りのヘッジ、そして円安による日本円の価値低下へのヘッジとして金投資が引き続き注目されています。
金投資の税金の扱いを知っていますか?
ただこの金投資、税金の扱いが上場株式とは大きく異なっている点には注意が必要です。
金を売却して生じた利益は「総合課税の譲渡所得」として扱われます。
総合課税とは「給与所得、不動産所得、事業所得など、同じ総合課税グループの他の所得と合算して所得を計算し、その合計所得に応じて税率が決まってくる」という課税方式です。
そして、合計所得が多ければ多いほど税率が高くなります。
金の保有期間により「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分類され、長期譲渡所得の方が税金面で優遇されています。
短期譲渡所得とは、買ってから5年以内に売却して利益が出た場合で、長期譲渡所得は買ってから5年超経過してから売却して利益が出た場合に適用されます。
短期譲渡所得、長期譲渡所得それぞれにつき、所得金額は次のように計算されます。
- 短期譲渡所得
利益-特別控除50万円=課税される所得 - 長期譲渡所得
(利益-特別控除50万円)÷2=課税される所得
この所得額が、給与所得など総合課税の他の所得と合算され、累進課税により税額が計算されます。
なお、特別控除50万円は短期譲渡所得と長期譲渡所得を合わせてのものです。
金のETFへの投資で生じた税金の扱いは?
金のETF(上場投資信託)の場合、税金の扱いは上場株式と同じになります。
すなわち分離課税の譲渡所得として、譲渡益(売却益)に対して所得税・住民税合わせて20.315%の税率で課税されます。
また、損失が生じた場合の扱いも上場株式と同じで、上場株式などの譲渡益や配当金と相殺することもできますし、相殺しきれずに残った損失は確定申告をすることで翌年以降3年間繰り越すことが可能です。
ちなみに、金そのものから配当金は生じませんので、配当所得については考慮する必要はありません。
従って、金売却による利益がそれほど多くなく、かつ総合課税の他の所得がなければ、金ETFの税率20.315%より低い税率で済むことになります。逆に金売却による利益が大きかったり、総合課税の他の所得が大きいような方であれば、税率が50%を超えることもあります。
どちらが有利かは人により異なる
このように同じ金投資であっても、金地金を買うのか、それとも金ETFを買うのかにより、全く税金の扱いが異なります。
税金というのは投資においては「コスト」です。このコストの扱いが、どのように金投資をするかによって異なってくるということは、言い換えれば投資方法によって税引き後のリターン(利益)も大きく異なるということです。
そしてどちらの投資方法が良いのかは、実は万人共通ではなく、人それぞれ違います。
次回は金地金への投資と金ETFへの投資について、税金面を考慮した場合にどちらが有利なのかを、いくつかのパターン別に解説したいと思います。
実は税金面以外にも隠れたコストとして大きな影響を及ぼす事象があるのですが、この点についても合わせて説明いたします。
(足立 武志)