日本時間の10日未明に、すばらしいビッグ・サプライズが飛び出しました。ベッセント財務長官が、相互関税の上乗せ分を、中国を除き、90日間停止すると発表。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【速報】4/10 日経平均3万4000円台回復。米株も大幅高。中国除き、相互関税上乗せ90日停止
日経平均、急反発へ
ベッセント米財務長官が、相互関税の上乗せ分を、中国を除き、90日間停止すると発表しました。トランプ大統領もSNSで、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表しています。
これを受けて、9日のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は急騰。10日の日経平均株価も急反発が見込まれます。懸念材料が完全に払しょくされたわけではありませんが、少なくとも、世界景気が不況に転落するリスクは低下したと判断できます。
以下が発表された内容です。
【1】相互関税の上乗せ分は、中国を除き90日間停止。
【2】報復関税を打ち出した中国に対しては、関税率を125%に引き上げ。中国は米国からの全輸入品に84%の関税をかけると表明している。
上乗せ関税は90日間停止なので、その間に米国と交渉することが必要となります。日本に対しては、以下の要求が出されています。全てを受け入れることはできませんが、米国が「十分な成果を得た」と納得できる、なんらかの方策が必要になると思われます。
【1】米国自動車の輸入にかかる非関税障壁の緩和
【2】米(こめ)など農産物にかける関税の引き下げ
【3】米国からLNGなどの輸入拡大
【4】アラスカLNG開発への投資
【5】防衛費の協力拡大
「日本は交渉で優先される」とベッセント米財務長官はすでに表明していることから、しっかり交渉すれば、相互関税が恒久的に10%にとどまる可能性も見えてきました。
余談ですが、トランプ大統領は、ドジャース選手による大統領表敬訪問の場で、大谷翔平選手に対して「MVP、ムービースターのようだ」と持ち上げており、日本に対して好意を示していたとも取れます。
今後、日本製鉄によるUSスチール買収(あるいは多額の投資)が認められる可能性も出てきており、実現すれば、日本製鉄および日本の自動車メーカーの米国生産比率がかなり上昇するので、ポジティブです。
ただし、残る問題として、米国と中国の関税エスカレートがあります。このままだと、米国と中国の貿易取引は途絶えてしまいます。
自動車関税など、品目別の関税についての問題も、まだ残っています。懸念材料が完全に払しょくされたわけではありませんが、少なくとも、世界景気が不況に転落するリスクは低下したと判断できます。
日経平均は、以下の通り、下値トライしていましたが、ここから急反発が見込まれます。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年4月9日

日本株投資でも、心に留めておいていただきたいバフェットの言葉
ウォーレン・バフェット氏の、若い頃の言葉を紹介する著作「Warren Buffett’s Ground Rules(ウォーレン・バフェットのグラウンド・ルール)」(Jeremy C. Miller著)を原書で読みました。私が、25年のファンドマネージャー時代にやってきたバリュー運用に通じる極意が、若きバフェットによって熱く語られており、感動しました。
私が強く共感した言葉を、二つ紹介します(日本語訳は窪田)。
【1】「企業の本源的価値がわかっていれば、それを生かして有利にトレードできる。株価が、本源的価値と比較して、ばかばかしい程、安い水準まで売られた時に買うことで、利益が得られる。」
【2】「最近、新時代の投資哲学を語る人が増えた。その哲学によると、木々が空まで伸びるように上昇し続ける株が出るという。そんな哲学に乗って割高株を高値づかみする位なら、過度に保守的といわれてペナルティを科せられた方がましだ。」
ファンドマネージャー時代に、バリューを重視して運用してきた私は、そうだそうだと納得です。ところで、今の日本株で、本源的価値を割り込んでいる株はあるでしょうか? たくさんあると思っています。
財務ピカピカ、収益力も安定しているのに、PBR(株価純資産倍率)1倍を割れていたり、大型優良株で配当利回りが4%を超えているものもあります。
積立投資家はどうする?
読者の方から「積み立て始めたばかりで(株が)急に下がって不安」とコメントをいただいています。今日は、積立投資家の方に、私の考え方をお伝えします。
積立投資は、短期的な相場変動に惑わされず、コツコツと積み立てを続けることが大切です。相場が下落した時に安いところで買い続けるからこそ、長期的な投資成果が高くなるからです。
コメントされた読者の方は、積み立てを始めたばかりということなので、これから安いところで購入していけることを喜んで良いと私は思います。
それを理解していただくために、一つクイズを出しますので解いてください。
積立投資の成果が大きくなるのは、どれ?
それでは、積立投資の特色を正しく理解するためのクイズを、出します。
以下の投信A・投信B・投信Cに、毎月1万円ずつ、3年間投資しました。3年後の資産価値は、どれが一番大きく、どれが一番小さいでしょう。どれもノーロード投信(売買手数料が無料の投信)として考えてください。

三つの投信は、年平均約6%上昇して、3年後にはいずれも1万1,900円となります。ただし、途中の値動きが異なります。
正解
一番もうけが大きいのは、投信Cです。
一番もうけが小さいのは、投信Aです。
投信A・投信B・投信Cとも、毎月1万円ずつ投資するので、3年間での投資額は合計36万円です。
3年後の評価額は、以下となります。
投信A:37万1,513円
投信B:39万3,894円
投信C:41万9,826円
従って、一番もうかるのが投信C、次が投信Bで、一番もうけが小さいのが投信Aです。
【解説】
ここで、改めて、三つの投信の価格推移をご覧ください。

今日のクイズから分かる「積立投資の教訓」
積立投資の成果は、積み立て初期に価格が上がるより、下がった方が大きくなる可能性が高いということが分かります。
積み立てを始めてすぐに株価が下がって含み損ができると、残念な気持ちになりますが、一喜一憂する必要はありません。長期でリターンが稼げるアセットに、淡々と積み立てを継続していくことが、良い成果につながると言えます。
ファンドマネージャーにとってもうれしかった「積立投資」
私は、25年間、年金・投資信託などの日本株を運用するファンドマネージャーでした。ファンドマネージャー時代に、とても残念に思ったことと、うれしかったことがあります。
まず、残念なこと。私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ運用ファンド)では、日経平均の高値圏で設定(買い付け)が増えるのに、日経平均の安値圏では、ほとんど設定がありませんでした。株は安い時に買って、高くなった時に売ると利益が得られるわけですが、公募投信では、残念ながら、その逆の動きが見られました。
次に、とてもうれしかったこと。
日経平均が大暴落して世の中が総悲観になっている時、往々にして、絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネージャーとしては、そんな時こそ、しっかりと投資を増やしてほしいと思います。ところが、公募投信では、そういう時に、設定が入ってきません。
私が運用していたDCファンドでは、定時定額の積立投資が入ってきますので、リーマンショックで日経平均が大暴落し、世の中が総悲観になっている時でも、淡々と積み立てが入ってきました。2020年2月のように、コロナショックで急落したところでも、積立投資では安くなったところで投資が続けられています。
誰でも、株は安い時に買って、高い時に売りたいと思うのでしょうが、言うのは簡単で、やるのはとても難しいことです。そうするためには、世の中総悲観になっている時に、株を買い、みんなが明るくなって強気になっている時に、株を売らなければなりません。
それは、少しひねくれた人にしかできないことです。普通の素直な人は、みんなが明るくなっている時に、株を買いたくなり、暗くなっている時に、株を売りたくなるでしょう。
普通の素直な人は、変に、いいタイミングで株を買い、いいタイミングで売ろうとしない方がいいと思います。それでは、どうするべきか? 私は、定時定額(例えば毎月1万円)の積立投資をしていくべきと思います。
(窪田 真之)