誰もが知っている優良企業の株、きらりと光る新興企業の株、これからの勢いに期待の成長株…。さまざまな種類がある中で、自分に合った投資とは?これから投資を始める人や、現在の投資スタイルを見直したい人に役立つ考え方を紹介します。
自己分析で見つける、自分に合った投資との向き合い方
今回は、個別株投資を始める前に考えておくことについてお話しします。現在の投資について整理整頓をするのにも役立つでしょう。
職業アナリストや職業投資家(ファンドマネジャー)は、ある意味で個人投資家よりも簡単ではないかと思う面があります。それは、所属会社から要求される業務の範囲がかなりの程度決まっているからです。
アナリストであったらどの業種を担当するのか、ファンドマネジャーであれば大型株なのか、中小型株なのか、成長株(グロース)投資なのか、割安株(バリュー)投資なのか。与えられた業務に専門特化して、どのようにパフォーマンスを出すのかが求められるわけです。
一方、個人投資家が何を選択するかは全くの自由です。自由であるがために何を選択すべきか分からないという方も少なくはないと思います。とりあえずいろいろやってみるというのも大切ですが、どこかで立ち止まって整理して考えてみることも大切だと考えます。
具体的に考えるべきことの最初の一歩は、自己分析(自身の状況、環境と意志、内面)です。次のようなものが挙げられます。
- 金融資産・収入(そのうち余裕資金)
- 投資経験(ギャンブルも含めて)、金融知識
- 時間:例えば一週間のうちに投資(情報収集や分析)に使える時間がどのくらいあるか
- 興味:政治、経済、社会、経営、技術、流行、生活周辺…など
- 性格:慎重、堅実、冷静、きちょうめん、大胆、情熱的、飽きっぽい…など
これらは個々の方によってそれぞれ違いますし、何を優先すべきであるかも異なると思います。そんなことを言われてもなんだか分からないという声も出てきそうですが、経験を重ねながら時間を置いて何度も繰り返し考えてみることで、自分に適した投資との向き合い方や投資スタンスが見えてくるように思います。
使える時間で、投資戦略は変わる
例として利用できる時間について少し取り上げてみたいと思います。
誰もが1日は24時間です。お勤めの方の場合は仮に、睡眠8時間、仕事8時間、通勤など2時間、生活(食事・風呂など)4時間とすると平日は残り2時間程度しかありません。
2時間という時間は、その日の株価と保有銘柄のIRをチェックしてマーケット解説記事を読むくらいが精いっぱいでしょう。急な変化が生じても週末に熟慮するまでアクションを起こせないこともあり得ます。そのため、投資経験によっても異なりますが、変動が激しくリスクの高い選択には向かない可能性もあります。
一方で、専業個人投資家の方はその気になれば12時間くらいは投資に関連する時間を持つことができるかもしれません。人によっては職業アナリストやファンドマネジャーよりも活用できる時間が多いこともあります。
使える時間の多寡が必ずしも投資成果に結び付くとは限りませんが、いろいろな投資戦略上のトライを行うことができますし、場合によってはリスクを高めに取る余裕があるかもしれません。
繰り返しになりますが、それぞれの投資家によって使える時間も、資金量も、経験・知識も、興味や性格も違います。そのため、第三者が最適解をお伝えすることはできません。
もし、最大公約数的な回答を求められれば、指数に連動した運用成績を目指す「インデックス型投資信託への投資」ということになるのかもしれません。最適解はそれぞれの投資家ご自身で模索し、見いだすしかありません。
飽きっぽい著者は、安定企業よりも新興企業にトキメク
私自身は、基本的に飽きっぽい性格なので低成長の安定企業にはあまり興味を持てません。毎回あまり変化のない四半期決算を眺めていてもトキメキません。
また、単純な業績動向ではなく、社会の変化や経営戦略などから仮説を考えるのが好きなので、新興企業の今まで存在しなかったようなビジネスを好む傾向があります。必ずしも高い投資成果を生むとは限りませんが、模範解答のようなものがない未知の分野に仮説を立て、それが当たっても外れても知識が得られることによる満足感を覚えます。
零細企業を運営していることもあり、ベンチャー企業経営者の行動様式や制度設計などに高い関心があります。その結果として、中小型成長企業をメイン分野としている面があります。「会社経営をやったこともないアナリストやファンドマネジャーには負けないぞ」という自負もあります。
著者自己紹介
私は、証券会社で化学業界、総合商社、小型株、ソフトウエアなどのアナリストを経て、2000年に株式投資調査を行う目的でティー・アイ・ダヴリュを設立しました。
会社設立の動機は、その当時の証券会社は顧客としている投資家と発行企業との間にある利益相反問題に関して必ずしも真摯(しんし)に対応していなかったことから投資家サイドにのみビジネスを行う情報提供者が社会的に必要と考えたこと、また個人投資家に対して十分な情報提供環境がなされていなかったことを解消する必要があると考えたこと、にありました。
その後、段階的ではありますが、法整備・業界ルールの強化や、企業の情報開示の進化、各種金融情報・教育コンテンツの充実などこの20年余りで環境は大きく変化しました。
結果、専業個人投資家として大きく投資で成功する方も多数出てきました。
つまり、努力と才覚次第では、かつてプロと呼ばれた職業アナリスト・職業投資家(機関投資家)を個人でも凌駕(りょうが)できる余地が膨らんでいるといえます。
提供される情報に差異がほとんどなくなることから、単純なレポーター(報告)型のアナリストは価値を失いました。
しかし、単純な分析パターンではなく、社会、経済、金融、技術に関する包含的な知識と深い洞察力を身に付けていれば差別化はまだ可能と思います。この連載では、個別株式への投資、特に私の得意とする中小型銘柄への投資や市場に関して、皆さんへヒントを提供していきます。
(藤根 靖晃)