ソニーグループの2025年3月期4Qは、24.4%減収、11.2%営業減益。前3Q決算発表時の会社予想を上回った。

2026年3月期は円高の影響が予想されるものの、ゲームソフトの伸び、映画の回復が期待できる。今年9月には金融事業のパーシャルスピンオフを実施する予定。楽天証券の目標株価を引き上げる。引き続き中長期で投資妙味を感じる。


決算レポート:ソニーグループ(金融事業のスピンオフと上場の概...の画像はこちら >>

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:ソニーグループ(金融事業パーシャルスピンオフの日程を公表) 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 ソニーグループ(6758、東証プライム)


1.ソニーグループの2025年3月期4Qは、24.4%減収、11.2%営業減益。

 ソニーグループ(以下ソニー)の2025年3月期4Q(2025年1-3月期、以下前4Q)は、売上高2兆6,302.44億円(前年比24.4%減)、営業利益2,036.49億円(同11.2%減)となりました。前3Q決算発表時の会社予想は、売上高2兆8,731.80億円、営業利益1,314.86億円でしたが、営業利益が会社予想を大きく上回りました。ゲーム&ネットワークサービスで、アドオンソフトと他社製ソフトが順調に伸びたこと、音楽ではストリーミングサービス向けが順調に伸びたことが寄与しました。


 この結果、2025年3月期通期は、売上高12兆9,570.64億円(前年比0.5%減)、営業利益1兆4,071.63億円(同16.4%増)となりました。

順調な業績でした。


表1 ソニーグループの業績
決算レポート:ソニーグループ(金融事業のスピンオフと上場の概要を公表)
株価 3,603円(2025/5/16)発行済み株数 6,025,004千株時価総額 21,708,089百万円(2025/5/16)単位:百万円、円出所:会社資料より楽天証券作成注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

2.セグメント別動向-今期は円高の影響が予想されるが、ゲームは順調、映画は回復へ-

1)ゲーム&ネットワークサービス

 前4Qは売上高1兆512.73億円(前年比4.2%減)、営業利益926.98億円(同12.5%減)となりました。前3Q決算発表時の会社予想、売上高9,912.29億円、営業利益578.79億円を上回りました。プレイステーション5ハードウェア販売台数は前4Q280万台となり、1年前の2024年5月期4Q450万台から大幅に減少しました。そのため、ハードウェア売上高は1,833.08億円(同30.2%減)と大幅減となりましたが、一方で、ゲームソフトウェア売上高6,251.25億円(同3.9%増)は一桁増に止まったものの、このうち採算の良いアドオンソフトが3,538.22億円(同18.0%増)と順調に伸びました。また、他社製ソフトが好調で、中でも2月28日発売の「モンスターハンターワイルズ」が大ヒットしました(カプコン。PS5、Xbox、パソコン向けを合わせた出荷本数は2025年1-3月期1,010.8万本)。


 この結果、2025年3月期通期は、売上高4兆6,700.44億円(同9.4%増)、営業利益4,148.19億円(同43.0%増)と好調な業績でした。


 会社側は2026年3月期通期を売上高4兆3,000億円(同7.9%減)、営業利益4,800億円(同15.7%増)と予想しています。PS5ハードウェア販売台数は引き続き減少すると思われますが、複数の優良ソフトの発売が予定されており、ゲームソフトが業績を牽引すると予想されます。自社製ソフトでは「Ghost of Yotei」(2025年10月発売予定)、「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」(2025年6月予定)、サードパティ製ソフトでは、「ELDEN RING NIGHTREIGN」(フロム・ソフトウェア。2025年5月発売予定)、「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」(コナミ。2025年8月発売予定)などです。


 また、当初2025年秋に予定されていた「グランド・セフト・オートVI(GTA6)」(ロックスターゲームズ)は2026年5月に延期となりました。このため、2027年3月期も大型優良ソフトの発売が続くことになります。


 会社側は次世代機(PS5の「次」)についてコメントしていません。ただし、PS4発売が2013年11月、PS5発売が2020年11月であり7年間隔だったことを考えると、次世代機(「PS6」?)発売は2027年になる可能性があります。これは直接競合するマイクロソフトの「Xbox Series X/S」の次世代機がいつになるかにもよりますが、一部の海外メディアはXboxの次世代機発売は2027年になるという予測をしています。


 もしPS5の次世代機発売が2027年になるならば、2026年3月期、2027年3月期は世代交代による端境期を考慮しなくともよいと思われます。また、ソニーもマイクロソフトほどではありませんが、パソコン向けに一部の新作ゲームソフトの移植を進めており、家庭用、パソコン用ともゲーム人口が多くなっているため、以前ほど端境期による谷間が深くならない可能性もあります。


 そのため、今回の楽天証券予想では、2026年3月期、2027年3月期とゲーム&ネットワークサービスの業績は順調に伸びると予想します。


表2 ソニー:セグメント別業績(四半期)
決算レポート:ソニーグループ(金融事業のスピンオフと上場の概要を公表)
単位:100万円出所:会社資料より楽天証券作成注:売上高は内部取引を含む。

表3 ソニー:セグメント別業績(通期)
決算レポート:ソニーグループ(金融事業のスピンオフと上場の概要を公表)
単位:100万円出所:会社資料より楽天証券作成

2)音楽事業

 前4Qは売上高4,706.91億円(前年比9.5%増)、営業利益835.78億円(同17.4%増)となりました。音楽制作が2,911.78億円(同1.1%増)とほぼ横ばいでしたが、このうちストリーミング向けは1,930.40億円(同4.8%増)と堅調でした。音楽出版は962.80億円(同16.3%増)と順調でしたが、このうちストリーミング向けは554.56億円(同25.6%増)と好調でした。


 また、映像メディア・プラットフォームは761.11億円(同48.2%増)と好調でしたが、これはチケット販売とイベント事業を手掛けるイープラスを2024年7月に連結子会社化したためです。「Fate/Grand Order」を中心とするゲーム事業は231.86億円(同11.2%増)と堅調でした。


 この結果、音楽事業の2025年3月期通期は、売上高1兆8,426.04億円(同13.8%増)、営業利益3,572.55億円(同18.4%増)と順調でした。


 会社側は2026年3月期を売上高1兆8,500億円(同0.4%増)、営業利益3,550億円(同0.6%減)と予想しています。今期業績がほぼ横ばいと会社側が予想している主な理由は、まず円高です。今期の会社側為替前提は、1ドル=143円前後(前期は152.5円)、1ユーロ=153円前後(同163.6円)です。営業利益については円高に加えて、映像メディア・プラットフォームと音楽制作で広告宣伝費を増やす計画です。


 楽天証券では、会社予想に対して多少の上乗せ余地があると考え、2026年3月期を売上高1兆9,000億円(同3.1%増)、営業利益3,650億円(同2.2%増)と予想します。また2027年3月期は堅調な伸びを予想します。


3)映画事業

 前4Qは売上高4,145.78億円(前年比1.9%増)、営業利益534.76億円(同74.4%増)となりました。2023年5~9月の全米脚本家組合のストライキ、2023年7~11月の米映画俳優組合のストライキの影響が前4Qまで残りましたが、劇場公開のための広告宣伝費が減少したこと、アニメ配信のクランチロールの有料会員が増加したことが寄与し、売上高は横ばいながら大幅増益となりました。


 このため、2025年3月期は売上高1兆5,059.44億円(同0.9%増)、営業利益1,172.84億円(同0.4%減)とほぼ横ばいとなりました。


 会社側では2026年3月期を売上高1兆5,000億円(同0.4%減)、営業利益1,250億円(同6.6%増)と予想しています。映画の劇場公開はストライキの影響がまだ続きそうですが、テレビ番組制作と放送開始は正常化する見込みです。ソニーの映画事業はハリウッドメジャーの中では下位なので、今後の映画事業は伸びる余地が大きいと思われます。

そのため、映画の劇場公開が正常化するであろう2027年3月期は二桁増収増益が予想されます。


 トランプ関税により、米国では映画の輸入に100%の関税がかかる可能性がありますが、ソニーの映画事業は米国内で完結している部分も多いと思われます。また、米国以外の国、地域への進出に対するインセンティブが強くなると思われます。実際に、インドではテレビドラマ制作、放送を強化しており、成果が出ています。


4)エンタテインメント・テクノロジー&サービス

 前4Qは売上高4,840.82億円(前年比9.1%減)、営業損失204.17億円(前年同期は64.44億円の赤字)、2025年3月期は売上高2兆4,092.75億円(同1.8%減)、営業利益1,909.26億円(同1.9%増)となりました。前4Qはリストラ費用の増加で赤字が拡大しました。オーディオ、テレビ、スマートフォン、一眼カメラなどからなる事業ですが、伸びる余地が小さいため、黒字確保を目指しています。会社側では、今期も一桁減収減益を予想しています。


5)イメージング&センシング・ソリューション

 スマートフォンのカメラに使うイメージセンサーの事業部門です。前4Qは売上高4,090.40億円(前年比2.6%増)、営業利益345.43億円(同0.5%減)、2025年3月期は売上高1兆7,990.05億円(同12.2%増)、営業利益2,611.47億円(同34.9%増)となりました。前4Q業績は横ばいでしたが、通期ではスマートフォン向けイメージセンサーの大判化が進んだこと、通期ベースでは円安だったことで業績好調でした。


 2026年3月期はスマートフォン向けが鈍化すると予想されますが、2027年3月期は2026年9~10月に最新の2ナノチップセットを搭載した新型iPhoneが発売されると思われます。イメージセンサーにも大判化、高級化が進むことでいい影響があると思われます。2027年3月期は二桁増収増益が予想されます。


6)金融

 前4Qは売上高マイナス1,723.70億円(前年同期は6,728.85億円)、営業損失115.55億円(前年同期は261.07億円の黒字)となりました。2025年3月期通期では、売上高9,314.00億円(同47.4%減)、営業利益1,305.28億円(同24.8%減)となりました。ソニー生命の特別勘定における資産運用益が市況変動で減少したことが影響しました。


 会社側は金融事業のパーシャルスピンアウトの大まかな流れと日程を発表しました。それによれば、2025年9月29日にソニーグループの金融部門である「ソニーフィナンシャルグループ」が東京証券取引所に上場する予定です。その際、公募増資、売り出しは実施しません。


 また、9月26日時点でのソニーグループ株主は、ソニーグループ株1株に対してソニーフィナンシャルグループ株1株を現物配当として受け取ります(現物配当基準日は9月30日)。ソニーグループは80%以上のソニーフィナンシャルグループ株をソニーグループ株主に交付し、20%未満を保有し続けます。ソニーフィナンシャルグループはソニーグループの完全連結子会社から持分法適用関連会社になります。


 金融事業のパーシャルスピンオフの流れと日程が決まったことにより、ソニーは今後の業績見通しの開示を金融事業を除く継続事業ベースで行います。楽天証券でも会社予想に倣って、今後は、金融事業が短期的に急激な業績悪化に見舞われた場合は別ですが、金融事業を除くベースでソニーグループの投資評価を行うことにします。


3.2026年3月期は円高の悪影響が懸念されるが、2027年3月期は再び安定成長が予想される。

 会社側は2026年3月期を売上高11兆7,000億円(前年比2.9%減)、営業利益1兆2,800億円(同0.3%増)と予想しています。

この前年比は金融事業を含まない継続事業ベースです。2025年3月期に金融事業を含み、2026年3月期予想には含まない単純比較では、売上高11兆7,000億円(前年比9.7%減)、営業利益1兆2,800億円(同9.0%減)となります。


 また会社側は、2026年3月期のトランプ関税によるマイナス影響を営業利益に対して約1,000億円と想定し、会社予想業績に織り込んでいます。


 楽天証券では、2026年3月期は音楽事業に多少ながら上乗せの余地があるため、2026年3月期は売上高11兆7,500億円(同9.3%減)、営業利益1兆2,900億円(同8.3%減)と予想します(前年比は2025年3月期業績に金融事業を含み、2026年3月期には含まない場合との比較)。また2027年3月期はゲーム事業でのソフトウェアの伸び、音楽と映画の伸びが期待できるため、売上高11兆9,800億円(同2.0%増)、営業利益1兆4,800億円(同14.7%増)と予想します。


 2026年3月期は金融事業のパーシャルスピンオフと円高によって業績のトレンドが読みにくくなっていますが、中長期ではゲーム、音楽、映画のエンタテインメント3事業を中心とした安定成長が期待できると思われます。


4.ソニーグループの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の4,100円から4,300円に引き上げる。

 ソニーグループの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の4,100円から4,300円へ引き上げます。


 2027年3月期の楽天証券予想1株当たり利益(EPS)178.5円に中長期の成長性を考慮して想定株価収益率(PER)20~25倍を当てはめました。


 今回の金融事業パーシャルスピンアウトは完全分離ではありませんが、ソニーフィナンシャルグループを持分法適用関連会社にすることで、ソニーグループの経営者、経営陣が中核事業であるゲーム、音楽、映画により一層集中することができるようになるであろうことを評価したいと思います。


 引き続き中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄 ソニーグループ(6758、東証プライム)


(今中 能夫)

編集部おすすめ