日経平均株価は当面の上値抵抗線とみられる3万8,000円を一時回復、一段の上値追いには自動車関税緩和の実現や円高リスクの後退などが必要になると考えます。輸出関連を中心としたリバウンドの動きはいったん小休止。

相対的には、新年度配当計画公表で当面の減配リスクが後退している高配当利回り銘柄に関心が向かっていきそうです。


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アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

コード 銘柄名 現在値 配当
利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 3658.0 6.86 3.7 1.22 7.97 1890 東洋建設 1356.0 6.05 4.0 1.82 3.99 4503 アステラス製薬 1366.0 5.76 3.6 ▲3.64 7.60 5021 コスモエネルギーホールディングス 6036.0 5.72 3.9 ▲2.95 9.65 5401 日本製鉄 2892.0 5.60 4.0 ▲8.45 ▲1.87 7283 愛三工業 1842.0 5.56 4.0 ▲5.90 ▲0.54 7148 FPG 2346.0 5.56 4.0 1.52 11.40 8130 サンゲツ 2890.0 5.54 4.0 ▲0.10 2.52 5076 インフロニア・ホールディングス 1150.0 5.38 3.8 ▲3.51 ▲1.03 7267 ホンダ(本田技研工業) 1406.0 5.23 3.9 ▲0.22 6.92 4626 太陽ホールディングス 5190.0 5.20 3.5 14.89 15.33 4208 UBE 2153.5 5.14 3.5 ▲0.62 10.52 4183 三井化学 3137.0 5.10 3.6 ▲3.95 3.63 5192 三ツ星ベルト 3530.0 5.10 4.0 ▲4.15 3.22 4205 日本ゼオン 1437.5 5.09 3.5 ▲1.02 6.17 ※データは2025年5月16日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。
配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。


※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。


 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。


 5月16日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。


 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。


トランプ政権の関税策に対する懸念が和らぎ日経平均は大幅な上昇に

 4月11日終値~5月16日終値までの日経平均株価(225種)は12.4%の上昇となりました。


 相互関税の上乗せ部分の一時停止発表、中国と相互に関税率の一時的大幅引き下げで合意などから、トランプ政権の関税政策に対する過度な警戒感が和らぐ展開となりました。

一時1ドル=140円割れ水準まで低下したドル/円相場がその後に反転したことも、東京市場にとっては買い安心材料とされました。


 この期間は、2025年3月期の決算発表が集中しました。米国の関税政策に伴う新年度の業績見通しに対する警戒感が先行していましたが、自社株買いや増配など株主還元策の強化を発表する企業も多く、下支えにつながる形となりました。


 こうした中、ランキングTOP15銘柄も全般買いが優勢となり、12銘柄が上昇しています。ただ、関税懸念の後退や為替の円安方向への反転を背景に、輸出関連株などグロース株主導の上昇となったためか、日経平均株価の上昇率を上回る銘柄は限定的でした。


 上昇銘柄では、 太陽ホールディングス(4626) は株主還元方針の変更に伴う新年度の大幅増配計画が好感されました。 UBE(4208) も業績予想の上方修正が材料視され、10%以上の株価上昇となっています。


 半面、 日本製鉄(5401) は想定以上の大幅減益・減配ガイダンスがネガティブ視され、 インフロニア・ホールディングス(5076) は三井住友建設の買収による負担増が懸念されて、それぞれマイナスサイドとなっています。


会社側の配当計画とコンセンサスの乖離が大きく注意が必要

 今回、新規にランクインしたのは、 愛三工業(7283) 、インフロニア・HD(5076)、太陽HD(4626)、 三井化学(4183) 、 日本ゼオン(4205) の5銘柄。除外となったのは、 商船三井(9104) 、 東亜建設工業(1885) 、 TOYO TIRE(5105) 、 マネックスグループ(8698) 、 ジェイテクト(6473) の5銘柄となっています。


 愛三工業は2026年3月期の増配(68円→75円)を発表し、配当金のコンセンサス予想が切り上がりました。太陽HDも新年度の増配(190円→290円)を発表しており、同様の状況となっています。その他3銘柄は相対的に株価上昇率が限定的だったため、ランキング圏内に入ってきています。

なお、日本ゼオンは2026年3月期の小幅増配も発表しています。


 一方、商船三井は2026年3月期の大幅減配見通し(360円→150円)を発表したことで、配当コンセンサスが切り下がりました。マネックスグループも特別配当減少による減配見通し(40.3円→30.4円)を発表しています。東亜建設工業、TOYO TIRE、ジェイテクトは株価が大きく上昇したことで利回り水準が低下しています。


 2025年3月期の決算発表が行われたばかりのタイミングでもあり、アナリストコンセンサスと会社側の配当予想の乖離が今回は比較的大きくなっています。アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を大きく下回っている銘柄としては、 東洋建設(1890) 、太陽HD(4626)、 三ツ星ベルト(5192) が挙げられます。


 会社計画ベースでの配当利回りはそれぞれ、東洋建設6.64%、太陽HD5.59%、三ツ星ベルト5.27%の水準となっています。総じて会社計画ベースでの利回り水準が妥当な印象です。


 一方で、コンセンサスの配当予想が会社計画に対して過剰となっているものには、 コスモエネルギーホールディングス(5021) 、日本製鉄(5401)、愛三工業(7283)、 サンゲツ(8130) 、インフロニア・HD(5076)、 ホンダ(本田技研工業:7267) 、三井化学(4183)などが挙げられます。


 会社計画ベースの配当利回りはそれぞれ、コスモエネルギーHD5.47%、日本製鉄4.15%、愛三工業4.07%、サンゲツ5.36%、インフロニア・HD5.22%、ホンダ4.98%、三井化学4.78%となっています。


 それぞれ、会社計画水準の方に配当コンセンサスもサヤ寄せしていくとみられます。とりわけ、日本製鉄は今後会社計画引き上げ余地もありますが、それでもコンセンサス水準は高過ぎる印象です。

愛三工業に関しても同様です。


輸出関連中心のリバウンド小休止で、バリュー株に物色シフトを想定

 日経平均株価は5月13日に一時3万8,000円を回復しました。この水準は、2024年10月から2025年2月まで続いていたボックスレンジの下限で重要な上値抵抗線となるほか、米国の関税政策に対する警戒感が本格化する前の水準でもあります。


 米国の関税策に対する過度な警戒感は後退しているとはいえ、日本にとっては、注目度の高い自動車関税の緩和に不透明感が強いほか、円高圧力への懸念も完全には拭い切れていません。リバウンドの動きもいったんは小休止を考慮する必要がありそうです。


 輸出関連株を中心とする全体相場のリバウンド一巡を想定すれば、目先は高配当利回りなどのバリュー株に関心が向かう余地は大きくなりそうです。とりわけ、決算発表を通過して2026年3月期の配当計画も公表されていることで、高配当利回り銘柄の減配リスクなどは当面低下していく公算です。


(佐藤 勝己)

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