先週は米国債が売られ、金利が上昇。トリプル安が進みましたが、深刻な米国売りには発展しませんでした。

今週はエヌビディア(NVDA)が決算発表、半導体株などが相場の主役になりそうです。日本では40年国債の入札も予定され、国内金利の上昇が円高や株価の圧迫要因になりそうです。


今週29日はエヌビディア決算発表、AI関連株の見直し進むか?...の画像はこちら >>

世界的な金利上昇が株価を圧迫!今週はトランプ大統領からエヌビディアに主役交代!?

 先週の株式市場は世界的な格付け会社の米ムーディーズ・レーティングスによる米国の信用格付けの格下げや22日(木)、米国議会下院でトランプ大統領の目玉政策である大型減税を盛り込んだ税制・歳出法案が可決したことで米国政府の債務支払い能力に対する懸念が拡大しました。


 米国債、米国株、米国ドルが売られる小規模な「トリプル安」が進んだことで、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週末比2.61%安まで下落しました。


 22日には一時、米国の30年国債の利回りが2007年以来、18年ぶりに5%の大台を超え、10年国債の金利もここ数年の高値に迫る4.5%台まで上昇しています。


 金利の上昇は債券価格の下落を意味します。


 償還まで期間が長い米国の超長期国債が売られたことで世界中の金融機関が保有する米国債に巨額の含み損が発生中。


 世界的な金融不安が進む恐れもあるので要注意です。


 米国同様、7月に予定される参議院選挙で消費税減税などが争点になりそうな日本でも、財政赤字拡大に対する懸念が膨らみ、21日(水)には新発30年物の超長期国債の金利が3.185%と過去最高の水準まで上昇しました。


 為替市場では米国売りや日米金利縮小にともなう、かなり急ピッチな円高ドル安が進み、23日(金)の終値は1ドル=142円50銭台で取引を終了しています。


 日本の超長期国債の主要な買い手は日本銀行を除くと国内の生命保険会社や損害保険会社ですが、23日(金)には非上場の最大手・日本生命保険の保有国債の含み損が2025年3月時点で1年前の3.6倍になる3.6兆円まで拡大したことが判明しています。


 日本株市場では、先週決算発表を終えて好材料が出尽くしたこともあり、損害保険会社株が下落。


 2025年3月期の純利益が前期比45%減で市場予想を下回った SOMPOホールディングス(8630) が前週末比11.4%安となるなど、保険業セクターが週間の業種別下落率ワースト1位に沈みました。


 日経平均株価(225種)も前週末比593円(1.6%)安の3万7,160円と6週間ぶりの下落となりました。


 しかし、巨額の含み益がある政策保有株の売却加速を表明した みずほフィナンシャルグループ(8411) が5.5%高となるなど、金利上昇が収益源となる銀行株は上昇。


 その影響力の強い東証株価指数(TOPIX)の下落率は0.2%にとどまっています。


 トランプ大統領が23日(金)、原子力発電所の新設を進める大統領令に署名したこともあり、原発建設も行う 三菱重工業(7011) が13.4%高となり、上場来高値を更新しました。


 このように、米国売りトレンドで海外から投資資金が日本国内に流入していることもあり、急速な円高進行がこれ以上続かないようだと、TOPIXに対する影響度が高い銀行株など内需系の大型割安株をけん引役に、今後も日本株は底堅い展開が続くかもしれません。


 トランプ大統領の政策に振り回されている株式市場ですが、先週23日(金)、トランプ大統領は関税交渉が難航している欧州連合(EU)からの輸入品に6月1日(日)から50%の関税をかけることや、米国内で生産されていないアップルの外国製iPhoneに25%の関税を課す意向を表明。


 先週 アップル(AAPL) の株価が7.57%下落するなど、またしてもトランプ大統領の過激な関税政策が今週の市場にも波紋を投げかけそうです。


 ただ、最初は高額な関税で他国を激しく脅すものの、実際の交渉では譲歩や妥協に走るトランプ流交渉術に株式市場が慣れてきた面もあり、23日(金)の米国市場は比較的冷静な動きでした。


 また、23日(金)に3度目となる日米通商交渉を終えた赤沢亮正経済再生担当相は「前回以上に率直かつ突っ込んだやり取りを行うことができた」と強調。


 トランプ大統領がSNSで 日本製鉄(5401) による USスチール(X) 買収に一定のお墨付きを与える意向を配信したことは、日本製鉄だけでなく米国で収益を上げる自動車株などにとっても追い風になりそうです。


 今週の米国では人工知能(AI)関連の主力株 エヌビディア(NVDA) の2025年2-4月期決算が日本時間29日(木)早朝に発表されます。


 同社は中国向け半導体輸出規制の影響で前期業績が下押しされることを公表済みですが、5月に入って株価は米中貿易戦争に対する楽観論から前月末比20.5%高と復調の兆しが見えています。


 同社が強気の今期2025年5-7月期の業績見通しを打ち出せば、日本の半導体株やデータセンター関連株も勢いよく上昇するかもしれません。


 日経平均は26日(月)、3万7,209円と前週からの続伸でスタート。終値は前営業日371円高の3万7,531円となりました。


先週:トランプ過激発言に慣れた株式市場。日本ではAIデータセンター株や原発関連株が盛り上がる!

 先週は日米の超長期国債が売り込まれて金利が上昇するなど金融不安につながる動きもありましたが、トランプ減税の法案通過で米国経済が景気後退をまぬがれるという期待感もあり、それほど大きな下落にはなりませんでした。


 日本市場では、21日(水)にAIデータセンター向け光通信システム販売が今期2026年3月期も好調を持続する見通しを示した 古河電気工業(5801) が前週末比20.9%も急騰。


 同社など電線株の多くが属する非鉄金属セクターが週間の業種別上昇率1位でした。


 一方、21日(水)に今期2026年3月期の減益・減配見通しを示した 京成電鉄(9009) が20.3%安。


 米の価格高騰で株価が急騰していた米卸業も手掛ける物流サービス会社の ヤマタネ(9305) が材料出尽くしで11.1%安となりました。


 22日(木)、トランプ大統領が自身の創設した仮想通貨「$TRUMP」に投資した投資家を集めて夕食会を開いたことなども材料視され、仮想通貨ビットバンクを運営する セレス(3696) が22日に前日比10.0%も急騰するなど仮想通貨関連株も盛り上がりました。


 しかし、翌日23日(金)は軒並み急落しています。


 ちなみに主要仮想通貨のビットコインは、米国議会上院が仮想通貨の規制緩和法案の審議入りを可決したことを受け、22日(木)には1ビットコイン=11万ドル(約1,562万円)の史上最高値を更新。


 過激な関税政策で株価の下落を招いてきたトランプ大統領ですが、減税法案の可決や仮想通貨などの規制緩和策など、従来のビジネスフレンドリーな政策を次々と打ち出せば、米国株が本格的に底入れする可能性もありそうです。


 日本市場では、20日(火)からカナダで始まった主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で日米財務相が為替政策について議論するという報道で週始めに1ドル=145円40銭台だったドル/円の為替レートは21日(水)、一時143円20銭台まで円高が加速。


 その後、日本の超長期国債の下落で長期金利が上昇したことによる日米金利差縮小で23日(金)には1ドル=142円50銭台までさらに円高が進行しました。


 円高の進行は今週も日本株、特に外需株の足を引っ張りそうです。


今週:日米の国債入札でさらに金利上昇→株価下落!?エヌビディア好決算に期待!

 今週、米国では27日(火)に民間調査会社コンファレンス・ボードの5月消費者信頼感指数、28日(水)には3会合連続で利下げ見送りを決めた5月7日終了の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公開されます。


 29日(木)には、2025年1-3月期の米国の実質国内総生産(GDP)の改定値も発表に。


 4月30日に発表された速報値は前期比年率換算でマイナス0.3%と3年ぶりのマイナスに転じただけに、改定値がより悪化すると米国景気後退に対する懸念が再浮上するかもしれません。


 30日(金)には4月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。


 こちらもトランプ関税発動で米国の物価高再燃を示すデータが出ると株価にとってネガティブです。


 今週も米国で2年、5年、7年国債の入札(買い手を集めて新発国債を売り出すこと)や日本でも28日(水)に40年国債の入札が予定されています。


 日米の国債に買い手が現れず、入札が不調に終わって金利が上昇すると先週同様、米国トリプル安や円高の進行が起こるかもしれません。


 期待材料は、日本時間29日(木)早朝に発表されるエヌビディアの決算。


 AIデータセンターなどに対する巨額投資はいまだ衰えを知らず、エヌビディアが今期2025年5-7月期の強気な業績見通しを発表すれば、先週活況だった電線株以外にも半導体株などの反発に期待できるかもしれません。


 半導体株は主力の半導体検査装置メーカーの アドバンテスト(6857) が前年末比23.2%安、日経平均株価に大きな影響力のある ソフトバンクグループ(9984) が17.7%安と2025年に入って大きく下落しています。


 4月中旬以降は反発していますが、エヌビディアの強気決算でAI関連株の見直し買いトレンドがさらに続くことに期待したいところです。


(トウシル編集チーム)

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