金価格の上昇局面で個別企業が明暗、業界再編が持続へ

 小売売上高を含む中国の直近の指標によれば、金宝飾品の売上高は4-6月期に回復傾向を示している。ただ、BOCIは富裕層にとって魅力的な高級ブランドと、同質的なマスブランドが明暗を分けるとみて、業界再編が続くと予想。

消費の低迷を理由に、業界全体に対する慎重姿勢を維持しつつも、一部銘柄に関してはより楽観的な見方に転じた。突然の転換社債の発行に動いた周大福珠宝(01929)をトップピック銘柄としている。


 中国国家統計局によると、4月、5月の金銀宝飾品の小売売上高は前年同月比25.3%増、21.8%増と好調。前年実績の低さと季節要因が一因だが、金価格が記録的水準で推移する中、金装飾品の購買意欲が改善していることを示唆した。


 個別の宝飾品企業が製品構成の最適化に向けた動きを見せたことも、4-5月の好調を支えた要因。◇固定価格での金装飾品の販売、◇中国の伝統的デザインを取り入れた金製品の好調、◇人気知的財産権(IP)と提携したキャラクター製品の投入、◇富裕層向けサブブランドの展開に代表される明確なセグメンテーション――などが寄与した。


 実店舗の客足がさえない中、BOCIはこの先、金以外の宝飾品に依存する小売事業者や、店舗生産性の低いフランチャイズ事業者が苦戦するとみている。


 また、最近の異業種からの参入も既存企業にとっての脅威。例えば、アートトイで大人気のポップマート(09992)が最近立ち上げたジュエリーブランド「Popop」は、中価格帯で強力な存在となる見込み。また、香港の英皇鐘表珠宝(00887)は本土での事業拡大計画を発表したが、この計画を主導するのは周大福珠宝の元幹部。同社も中価格帯における強力な競合となる可能性がある。


 BOCIによれば、現在の業況の下、競争力を維持する可能性が高いセグメントは二つ。

うち一つは周大福珠宝の新シリーズや老鋪黄金(06181)に代表されるハイエンド-ウルトラハイエンド。低金利環境下で、富裕層による購入が期待できる。もう一つは手頃な価格帯のマス市場向け。ECやライブコマースがけん引する可能性がある。


 金装飾品銘柄の株価の騰落率はセクター別で上位にあるが、これは小売売上高などの経済指標の改善や金価格上昇による粗利益率の改善期待、個別のファンダメンタルズの改善などが背景。金価格が下落に転じた場合、下落リスクに直面する可能性があるという。


 BOCIは個別では、周大福珠宝を選好する。同社は6月16日、金装飾品事業の拡大に向けた転換社債の発行計画を発表(正味調達額は8億7,000万HKドル)。全て株式に転換された場合、1株当たり利益の6.9%の希薄化につながるという計画だが、同社はより多くの金ヘッジが可能になるとしている。BOCIはこの計画をややマイナスと捉えながらも、同社の強力なブランド力や既存店売上高などの業務指標の改善、金ビジネスの拡大に向けた長期的なアプローチを評価。株価の先行きに対して強気見通しを継続している。


(Bank of China int.)

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