米国の対中EDA禁輸措置の解除と対ベトナム関税合意が追い風、株価回復持続へ
米国は7月2日、中国に対する電子設計自動化(EDA)ツールの禁輸措置を解除すると同時に、ベトナムとの関税交渉に合意。同じ日に二つの朗報が伝わったことで、香港株式市場ではこれまで低迷していた消費者用電子機器セクターに対する投資心理が好転した。
独シーメンスや米シノプシスなどEDAツールの開発大手は7月3日、米商務省産業安全保障局から中国への輸出制限を解除するとの通達を受けた。5月23日付で適用されたEDAソフトウエアの対中輸出制限を解除する内容。シーメンスなど各社は中国の顧客向けのEDAのフルアクセス、販売、技術サポートサービスを即時に再開したという。
米国はまた、その前日にベトナムとの貿易協定に合意。ベトナムからの輸入品に20%、ベトナム経由の第三国による「迂回(うかい)輸出」に40%の関税をかける一方、ベトナム側は米国製品を無関税で受け入れるとの合意内容となった。
米中関税戦争については90日間の休戦(関税24%分の猶予)が7月9日に期限切れとなるが、米国が今回、EDA禁輸措置を解除したことで、関税戦争の再度の激化に対する市場の懸念が後退した。こうした状況は電子部品サプライチェーンにとってはプラス。半面、国内代替株(国産品への切り替えによる恩恵銘柄)にとってはマイナスとなる。
BOCIは「今回のEDA禁輸措置の解除は最新のプロセスデザインキット(PDK)へのアクセスを保障するものではない」としつつも、小米集団(01810)がTSMC「N3P」プロセスをベースに開発する次世代チップ「XRING O2」に注目。アップル「A19 Pro」やクアルコム「Snapdragon 8E Gen2」、メディアテック「Dimensity 9500」を比較対象とするレベルになる可能性が高いとみている。
多くの消費者用電子機器銘柄の株価は今も4月2日以前を下回るが、BOCIは業界で一般的なマークアップ価格設定(製造価格に一定額の利益を上乗せして価格を設定する方法)モデルに対する短期的な関税の影響は限定的である上に、関税導入をにらんだ米国の顧客による事前の在庫積み増しで、サプライチェーン企業の4-6月期の利益は大幅な予想上振れが期待できると指摘。さらに、EDA禁輸措置の解除と米越関税合意によるセンチメントの改善を踏まえ、関連銘柄のバリュエーションの回復傾向が続く見通しを示した。中期的には関税の動向、需要の持続可能性、拡張現実(AR)グラス需要がカギになるとの見方。個別ではスマホなど電子機器向け部品サプライヤーの舜宇光学科技(02382)とBYDエレクトロニック(00285)を選好している。
(Bank of China int.)