インフレと金利上昇が続く今、私たちがやるべきことと、やってはいけないこととは。「預金だけで大丈夫?」「家計を守る方法は?」「住宅ローンを組んでいい?」「投資はいつ始めるべき?」といった身近なギモンに、正直FPヒッシ―先生こと、菱田雅生さんが答えます。
▼著者:菱田雅生(ひしだ・まさお)

1993年早稲田大学法学部卒、同年山一證券入社。98年同社の自主廃業を機に独立系FPに。2008年ライフアセットコンサルティング設立、代表取締役就任。「正直FPヒッシー先生」の愛称で、金融商品や保険商品を一切売らないFPとして活動。金融機関や企業向けセミナーなどで、正しいお金の知識を普及促進している。
Q1.金利が上がるなら、預金に預けておけばOK?
A.預金金利が物価上昇率を超えない限り、インフレに負けてしまう!
確かに、今後も金利が上がるなら、預貯金金利も上がっていくはずです。
しかし、2025年に入ってから、物価は前年比で3%以上の上昇が続いています。預貯金金利が3%を超えてこない限り、インフレに負けてしまいます。つまり、預貯金にただ置いておくだけでは、お金の価値がどんどん目減りしてしまうということです。
今後さらなるインフレに備えようと思うなら、資産の一部で株式や不動産など、インフレに強い資産にも分散しておくのが無難でしょう。株式や不動産で運用している投資信託でコストの低いものを持つのも有効です。なお、投資をするなら、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などの非課税制度も有効活用しましょう。
Q2.値上がりで生活が苦しい。生活防衛のためにやるべきことは?
A.保険やローンの見直しで対策を
そんな時は、本当に必要な支出と、そうでもない支出を見極めて、不要な支出を減らしましょう。
一般的に、家計の見直しとして効果が大きいのは、保険の見直しとローンの見直しです。
加入している保険を全て確認し、本当に必要なものなのかどうか、冷静に検討しましょう。必要な保障(補償)だったとしても、貯蓄性のあるタイプから掛け捨てタイプに切り替えるだけで、保険料負担を大幅に軽減できる可能性があります。
ローンについては、現在返済中のローンよりも低金利のローンがないかどうかを確認し、少しでも金利を下げられるなら、借り換えを検討しましょう。諸経費込みで有利になるなら即実行すべきです。
その他、毎月必ず支払っている固定費から、削減余地がないかどうかを探しましょう。公共料金や通信費、その他サービスのサブスクなど、月500円とか1,000円の違いでも、10年20年といった長期で見ると、かなりの金額の違いになります。定期的に見直しましょう。
物価上昇で生活が苦しい状況だと思いますが、お金の価値が下がっているタイミングで、「もしもの時のために」と、現金を多めに持つのはオススメできません。
Q3.今、住宅ローンを組んで家を買うのはあり?
A.金利水準を「買う理由」にしない。ライフプランを基に検討を
自分や家族のライフプランをきちんと立てた上で、今がちょうどよいタイミングなら、ありでしょう。
重要なのは、不動産市況、住宅ローン金利の水準、住宅ローン減税などといった外部環境を「買う理由」にしないことです。外部環境を理由にすると、将来、後悔をする可能性が高いからです。
それから、もっと重要なのは、安心して返済していける住宅ローンを組むことです。「借りられる金額」と「返せる金額」は大きく異なります。住宅ローンは、「いくら組めるか」ではなく「いくらなら返せるか」が重要で、返せる範囲内で借りるのが鉄則です。現在の家計から安心して返せる金額を見積もりましょう。
また、住宅ローンを組む際には、金利タイプの違い(変動金利、固定金利、固定金利期間選択型)を理解してから、慎重に選ぶようにしてください。変動金利型は、今後の金利上昇によって返済総額が増える可能性があります。目先的には低金利ですが、金利上昇のリスクを十分に理解しておく必要があります。安全性を重視するなら固定金利のほうがよいでしょう。
Q4.投資を始めるのに、今は良いタイミング?
A.投資を始めるタイミングは「待ったなし」
家を買うタイミングと同様ですが、誰もがうらやむ絶妙なタイミングで投資をするのはほぼ不可能です。しかし、まだ投資を始めていないのなら、一刻も早く始めるべきでしょう。
というのも、預貯金だけではインフレや円安による実質的または相対的なお金の価値の減少に備えることが困難だからです。今後も続くかもしれないインフレや円安に備えるための投資、つまり、資産を守るための投資は、株価の高値・安値などのタイミングに関係なく、一刻も早く始めておくべきです。
Q1でも回答したとおり、インフレに備えるなら株式や不動産で運用している投資信託でコストの低いものを選びましょう。そして、円安に備えるなら外国の債券や株式や不動産で運用している投資信託でコストの低いものを選びましょう。もちろん、NISAやiDeCoなどを有効活用することも忘れずに。
なお、これから資産形成をしていこうと思うなら、とにかく「長期・分散・積立投資」を意識しましょう。国内外の債券、株式、不動産など、さまざまな資産に分散投資をする積み立て設定をしたら、20年30年、できればそれ以上、とにかく続けてください。
毎月1、2万円の積立投資でも、40年も続けられたら簡単に2,000万円や3,000万円といった金額になると思います。特に、20代・30代などの若者なら、株式の割合を多めにすることで可能性は十分にあるでしょう。
短期的な結果を求めず、長期の「ほったらかし投資」の実践が無難です。
くれぐれも、高利回りをウリにしている一見よさそうに見える商品など、詐欺的な金融商品が世の中にはたくさんありますので、飛びつかないように注意しましょう。
(トウシル編集チーム)