先週はAI関連株を中心に日米ともに株価が小幅上昇。参院選で自公与党が過半数割れして悪材料が出尽くしたことから、今週は減税や財政出動への期待感で日本株上昇の可能性も。

8月1日に迫った相互関税発動前の通商交渉や米国企業決算も注目です。


参院選で与党大敗!悪材料出尽くしで日本株は上昇へ?米国株はト...の画像はこちら >>

米国株はAIバブルが関税不安を一掃!日本株は決算発表前の業績下方修正に注意!

 今週の日本株市場は、7月20日(日)に投開票された参議院選挙で自民・公明与党が過半数割れとなったため、新たな連立政権の枠組みの行方に一喜一憂する展開になるでしょう。


 所得税の基礎控除を178万円まで引き上げる減税や、現役世代の社会保険料負担軽減など、手取り収入増加を掲げた国民民主党が17議席、日本人ファーストや消費税の段階的廃止を訴えた参政党が14議席獲得と躍進しました。


 減税を唱える政党が連立政権入りする可能性が出てきたため、日本の財政悪化懸念で日本株、日本国債、日本円が全て売られるトリプル安が進む恐れもあります。


 しかし、石破茂首相は選挙後、続投宣言しており、自民党中心の政権運営が続く公算が高そうです。


 また石破首相に代わる新たな自民党総裁選も取り沙汰されていることから、悪材料出尽くし感や減税・財政出動による景気浮揚効果、円安進行によるトランプ関税克服期待で日本株が上昇する可能性のほうが高そうです。


 先週18日(金)の日経平均株価(225種)は前週末比249円(0.6%)高の3万9,819円と3週間ぶりに小幅上昇。


 15日(火)にトランプ大統領が米国内で総額920億ドル(約13.7兆円)もの人工知能(AI)関連投資が行われると表明したこともあり、AIデータセンターに光ファイバーなどを供給する 古河電気工業(5801) が8.3%高となるなど、週間の業種別上昇率でも非鉄金属セクターがトップでした。


 データセンターに大量の電力を供給する電気・ガス業も3位に入りました。


 またトランプ大統領が当初は200%という高い関税を課すとしていた輸入医薬品に対し、7月末から「まずは低い関税率でスタートする」と語ったことで、医薬品セクターも上昇率2位に浮上。


 米国での売上比率が全体の3割を占める、主力の 第一三共(4568) が10.4%高と反発しました。


 先週の米国市場では、14日(月)にAI関連の花形株 エヌビディア(NVDA) が米国政府から輸出許可の確約を得たことで中国向け主力半導体の販売を再開すると発表。


 エヌビディア株が前週末比4.54%上昇するなどAI関連のハイテク株が好調で、ナスダック総合指数は連日のように史上最高値を更新。

前週末比1.51%上昇しました。


 また、15日(火)発表の米国6月消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇と予想を上回る物価高が進んだものの、16日(水)の6月卸売物価指数(PPI)は前月比横ばいで予想を下回りました。


 17日(木)発表の6月小売売上高も前月比0.6%増と予想を大幅に上回ったこともあり、トランプ関税による米国の個人消費減速懸念が和らぎました。


 これを受けて機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は0.59%高となり、ナスダックとともに最高値を更新しました。


 日本が祝日だった21日(月)、米国株は続伸。ただトランプ関税の影響で主要3指数の中でもいまひとつ調子の悪い重厚長大企業の多いダウ工業株30種平均は取引時間中、上昇したものの、結局、マイナスで終わっています。


 日経平均先物(期近)も参議院選の与党大敗にもかかわらず小幅上昇しており、今週の日本株はやはり政局次第でしょう。


 今週は米国で2025年4-6月期の決算発表が本格化します。


 22日(火)夜にはトランプ関税の悪影響が懸念される自動車メーカーの ゼネラル・モーターズ(GM) 、24日(木)早朝にはグーグルの親会社 アルファベット(GOOGL) や電気自動車の テスラ(TSLA) が決算を発表します。


 日本でも7月下旬~8月上旬に本格化する3月期決算企業の第1四半期決算の発表を前に、トランプ関税による輸出企業の業績下方修正に注意が必要です。


 先週17日(木)も一足早く2025年4-6月期の決算を発表した半導体研磨装置の ディスコ(6146) が2025年度中間期の減益・減配見通しを発表したため、翌18日(金)に前日比8.8%も株価が急落しました。


 今週、米国では大きな経済指標の発表はありませんが、22日(火)に民間会議で米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が講演を行います。


 先週、16日(水)には一時、パウエル議長の解任報道が流れ、ニューヨーク為替市場で1ドル=148円台後半から146円台後半まで約2円近くドルが急落。米国売りが加速しました。


 しかし、トランプ大統領が即座に解任を否定して米国市場が平静を取り戻しただけに、パウエル議長が今後の利下げスケジュールについて、どのような発言をするのかに注目が集まりそうです。


 連休明け22日(火)の日経平均株価は、前営業日45円高の3万9,864円でスタート。一時4万円を超える高値となりましたが、44円安の3万9,774円で終えました。


先週:米国では「関税発動で買い」のTACOトレード流行中!日本株にはトランプ関税不況迫る?

 先週は日本25%、カナダ35%、欧州連合(EU)・メキシコ30%といったトランプ大統領の強気の相互関税の関税率発表にもかかわらず、米国株は順調に上昇しました。


 相互関税は8月1日(金)から発動される予定ですが、米国市場ではトランプ大統領が過激な関税政策を打ち出してはすぐに撤回・延期する姿勢を皮肉った「TACO(トランプはいつもビビってやめる、という英文の頭文字をとった造語)」トレードが流行中です。


 先週16日(水)にもパウエルFRB議長の解任報道が流れて一時S&P500が急落するなど米国売りの動きが広がると、トランプ大統領は即座に解任の可能性を否定。


 TACOトレードにとって絶好の買い場を提供することになりました。


 また、17日(木)に半導体受託製造世界最大手の TSMC(台湾積体電路製造:TSM) が好調なAI半導体需要で2025年4-6月期の純利益が前年同期比61%増になると発表したことも、エヌビディアなど米国ハイテク株の上昇に貢献しました。


 ただ、オランダの最先端半導体製造装置メーカー、 ASMLホールディング(ASML) が16日(水)にトランプ関税による貿易摩擦などを理由に慎重な2026年の売上見通しを示したこともあって、日本の半導体株はほぼ横ばいで推移。


 ASMLと関係の深い半導体検査装置メーカーの レーザーテック(6920) が前週末比9.3%も急落しました。


 エヌビディアへの販売比率の高い半導体検査装置の主力株 アドバンテスト(6857) も16日(水)まで10連騰して上場来高値を更新していましたが、17日(木)のディスコ(6146)の減益・減配予想発表を嫌気した利益確定売りに押され、週間では1.2%安でした。


 18日(金)にはトランプ関税の悪影響で電炉メーカーの 東京製鉄(東京製鐵:5423) が2026年3月期の業績予想を下方修正して、前週末比7.4%安と急落。


 鉄鋼セクターが週間の業種別騰落率で最下位になるなど、日本株には「トランプ関税不況」の足音も迫ってきています。


 さらに、参議院選で減税勢力が台頭し、日本の財政赤字が拡大する懸念から、長期金利の指標となる10年国債の利回りは1.53%台までじわじわと上昇。


 金利の上昇が負担になる不動産セクターが業種別下落率でワースト3位でした。


 東京都千代田区がマンション転売の規制強化に乗り出したこともあり、 住友不動産(8830) が前週末比3.8%安となるなど、大手不動産株が下落しました。


 18日(金)発表の日本の6月CPIは変動の激しい生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比3.3%の上昇と、依然として米国を上回るような物価高騰が続いています。


 参議院選挙で「日本人ファースト」を打ち出した参政党が躍進したように、これまでインバウンド(訪日外国人)需要で潤ってきた日本の内需株の業績にも国内消費者のインフレ疲れ、インバウンド疲れの悪影響が出てきそうです。


今週:参院選後の景気刺激策期待で日本株は買い!?過熱気味の米国株高はいつまで続く?

 今週は参議院選での与党過半数割れという結果を受けて、悪材料出尽くしの日本株上昇に期待したいところです。


 選挙結果が判明した21日(月)夜のニューヨーク為替市場では11日(金)終値の1ドル=147円台前半まで円高が進行し、日本売りは収まっています。


 先週は参院選後の減税勢力台頭による財政赤字懸念で長期国債が売られ金利も上昇しました。


 にもかかわらず、AIデータセンターバブルやトランプ関税発動後のTACOトレードで上昇する米国株の追い風もあり、日経平均株価は4万円台の大台定着を狙う高値圏にあります。


 選挙結果を受け、緊縮財政派で日米通商交渉でもトランプ大統領に押し切られたままの石破首相が退陣するようなら、減税などの景気刺激策や日米関係の好転に対する期待感から日本株の上昇が続く可能性もありそうです。


 ただ今週は1ドル=150円台乗せの円安が進む可能性もあるため、半導体株、輸送用機器など外需株を中心にした見直し買いに期待が持てるかもしれません。


 また、8月1日(金)の相互関税発動まであと2週間を切ったこともあり、米国トランプ政権と日本やEUなどとの通商交渉の進展にも期待が集まりそうです。


 EUはもし米国が30%の上乗せ関税を発動した場合、新たに米国 ボーイング(BA) 製の航空機や自動車、バーボンウイスキーなどに対する第2弾の報復関税発動を検討中と伝えられています。


 実際にEU、インドなどが米国に対して報復関税を発動する事態になれば、TACOトレードの流行で、ある意味、能天気に最高値を更新してきた米国株もさすがに無傷ではいられないでしょう。


(トウシル編集チーム)

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