ここ数日、参議院選挙やFRBに対する圧力、米景気後退懸念など材料が多く円安・円高と上下に動きました。8月に入る来週は、FOMCや相互関税発動など相場を大きく動かす重要イベントが集中しており、円安よりもドル安要因の方が勝る可能性に注意が必要です。
参院選とFRB圧力で円高進行へ。月末に向けて大きく動きづらい相場に
20日の参院選は自公過半数割れとなりましたが、選挙前には過半数割れを材料にすでに1ドル=148円台後半へ円売りが進んでいたことから、結果判明後の週明け21日には、警戒していたほど大敗ではないとの見方から利食いがみられ円高に動きました。
その後ベッセント財務長官の利下げ要求発言(「もしインフレ率が低ければ、金利を引き下げるべき」)も影響し、1ドル=147.10円近辺まで円高が進みました。
石破茂首相続投方針によって、取りあえず政局混迷を避けられた安心感も円高材料になったかもしれません。
参院選を材料にした円売りポジションの調整も一巡したかと思われましたが、トランプ政権からの米連邦準備制度理事会(FRB)に対する圧力が強まってきていることや、22日には、7月米リッチモンド連邦準備銀行製造業指数が▲20と予想の▲2を下回ったことも相場の重しとなり、1ドル=146円台半ばへ円高が進みました。
ここ数日で日本の政局混迷、日本の財政拡張への警戒感、FRBに対する利下げ圧力とパウエルFRB議長への解任圧力、米景気後退懸念などの材料によって円安、円高と上下に動きましたが、来週は7月末と月初に重要イベントが待ち構えていることから大きく動きづらい相場となっています。
ドル/円、8月へ向けた焦点。来週は相場を動かす重要イベントが集中
来週7月29~30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、7月30~31日の日本銀行金融政策決定会合、7月30日の米国4-6月期国内総生産(GDP)、8月1日の米雇用統計、相互関税発動日とイベントが集中しています。これら一連のイベントは相場を大きく動かす可能性もあるため注意が必要です。
石破首相続投方針によって、取りあえず政局混迷を避けられましたが、23日付の読売新聞によると、「石破首相は22日、米国の関税措置を巡る日米協議の進展状況を見極め、近く進退を判断する意向を固め、周辺に伝えた」と報じています。
惨敗しながら続投を表明したことへの反発が自民党内で広がっていることを考慮したもので、交渉の成否が見え次第、進退を明らかにする考えだと伝えています。
23日、日米貿易協議が合意に達したと報道されましたが、合意を受けて石破首相が退陣するのかどうか注目されます。
どのような政権になるにせよ、衆参両院で過半数割れとなったことから政権基盤の脆弱(ぜいじゃく)性は続くと思われ、勢力を拡大した野党が財政拡張的な政策を唱えることが意識され、円売り地合いはくすぶり続ける可能性があります。
日米貿易協議合意が市場に伝わると、ドル/円は1ドル=146.30円割れまで円高が進みました。貿易協議という先行き不透明要因が一つ払拭されたことから円高となりましたが、その後はすぐに円安に動きました。まだ、詳細が分からないことから大きな値幅では動いていません。
日本からの円売り材料もありますが、米国からのドル売り材料もあるため、円安も大きな動きにならない可能性があります。むしろ、ドル安要因の方が勝る可能性もあるため注意が必要です。ドル安要因として市場が警戒しているのは、トランプ政権からのFRBに対する圧力です。
トランプ大統領からのFRBに対する利下げ圧力や解任を示唆する発言、FRB本部改修費の批判など、ここへきて一段と強まってきています。また、ここ最近はベッセント財務長官からのFRBに対する圧力も高まってきていることも気になる動きです。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ベッセント財務長官は7月に、米経済や市場への影響、FRBが年内の利下げに踏み切るという見方、そして2026年5月にFRB議長の任期が終了するといった理由から、パウエル議長の早期解任は必要ないとトランプ大統領に伝えたとのことですが、21日のCNBCとのインタビューで同長官は「連邦準備制度全体が成功しているかを検証する必要がある」と述べ、FRBが物価予測で「数多くのミス」を犯したと批判しています。
しかし、22日には、パウエル議長について「今辞任すべき理由は見当たらない」と支持を示しました。
31日のFOMCやパウエル議長の記者会見で、FRBへの批判や圧力に対してどのような反応を示すのか注目です。内容によっては相場が大きく動き出すかもしれません。
米景気についても気になる指標が22日に発表されました。17日に発表された米国の個人消費の動向を知る上で重要な6月小売売上高は前月比+0.6%と、5月の▲0.9%から予想以上に回復し、経済が勢いを取り戻しつつあることを示しました。
ところが、22日に発表された米7月リッチモンド連銀製造業指数は▲20と、6月の▲7から改善予想に反して悪化し、5カ月連続のマイナスとなり、昨年8月以降ほぼ1年ぶりの低水準となりました。これを受けてドル/円は1ドル=147円台前半から1ドル=146円台半ばへのドル安・円高となりました。
指数の重要項目の新規受注は▲25と2024年8月来で最低となったほか、出荷は▲18と、コロナの影響を受けた2020年5月来で最低となり、雇用は▲16と昨年9月来で最低となりました。
6カ月見通しでは新規受注や出荷は小幅増加しましたが、雇用は▲10と6月の▲4から一段と悪化しており、労働市場がリスクになるかもしれない見通しとなっています。8月1日の米雇用統計では、非農業部門雇用者は前月14.7万人増加より低下予想となっており、失業率は前月4.1%より上昇予想となっています。予想に対してどのような結果になるのか注目です。
(ハッサク)