1年前の8月に当時の岸田前総理が辞任を表明した時、ドル/円は現在とほぼ同水準の147円だったが、2日間で149.50円まで2円以上も円安に動いた。石破総理がそうした場合、マーケットは同じ反応を示し150円まで円安になるとの見方もある。
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著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 石破総理「辞任」ならドル/円は150円も?マーケットは円安を警戒 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは147.45円↓下値メドは146.00円トランプ関税:米国との貿易は必要だが、必ずしも不可欠ではない。各国は、米国との貿易の利益と不確実性のコストをてんびんにかけている
トランプ関税:アトランタ連銀総裁「関税の影響が一過性というのは疑問」
米インフレ:FRB「インフレが目標の2%まで下がるにはあと2年必要」
卵:米国の卵の値段、前年比186.4%上昇
米経済:米企業の借り入れ需要は、依然として旺盛
前日の市況
7月24日(木曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.49円「円安」の147.01円。1日のレンジ幅は1.17円だった。

2025年147営業日目は146.41円からスタート。東京時間昼前には7月10日以来となる145円台まで下落してこの日安値となる145.85円をつけた。
日米関税交渉が(思ったより低い)15%の料率で合意したことが円高の理由といわれているが、来週月曜に朝起きたら25%に引き上げられていることもあるわけで、円高を推し進めるには材料不足だった。
その後は再び146円に戻したドル/円は、米国の雇用関連の指標の強さにも支えられ、明け方に147.02円まで上昇してこの日の高値をつけた。
日米関税交渉の合意によって、「不確実性」は低まり、日本銀行は早ければ9月に利上げをするとの見方もでている。しかし「ポスト石破」が誰になるかは流動的だ。金融緩和と財政出動を信奉する人物が総理になれば利上げはさらに遠のくことになる。
レジスタンス:
148.88円 07/18
148.67円 07/21
147.95円 07/22
147.21円 07/23
147.02円 07/24
サポート:
145.85円 07/25
145.75円 07/10
144.22円 07/07
144.18円 07/04
143.44円 07/03
2025年 主要指標 終値

今日の為替ウォーキング Start Me Up
今日の一言
人生には、表面的にはトラブルに見えても、実際はとてつもない恩恵である場合が多くある
Start Me Up
円安?円高?2024年8月14日、当時の岸田文雄前総理は、派閥の裏金事件への「けじめ」として、自民党総裁選挙に立候補しない意向を表明した。その時のドル/円は、現在とほぼ同水準の147.00円だったが、「岸田辞任」のニュースを受けて、2日間で149.40円まで一気に円安に動いた。
岸田前総理は2022年10月に「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を発表した。もう忘れている人がほとんどだと思うが、これは財政支出39兆円、民間支出を含めると71.6兆円という空前の事業規模の景気刺激策だった。果たしてそれに見合う経済効果があったのだろうか。
この総合経済対策は、「円安を生かした地域の『稼ぐ力』の回復・強化」が柱だった。もっとも、日本の製造業の約4分の1はすでに海外に移転し、かつてのような為替レートとの関係も薄れている。「円安」には、観光業など一部のセクターを除くと、多くの日本企業にとって、かつてのようなメリットがないのが現実である。
トランプ政権は製造業の国内回帰のために関税を利用しているが、日本は「サステナブルな円安」を、企業を日本に呼び戻す手段とした。政府・日銀の円安政策のおかげで、ドル/円は今年4月には139円台まで円高に動いたが、現在は147円台まで円安に戻っている。過去3年間の平均も約141円と政府・日銀が目指す「サステナブルな円安」は実現している。
しかし、この状況はいつまで続くのか。米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月利下げサイクルを始め、同時期に日銀が利上げサイクルに向けて始動することになれば、ドル/円が円高に動く確率は円安よりもあるだろう。
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」。歴史でまったく同じことが繰り返されることはないが、似たような出来事が起きることはたびたびあるという格言だ。ある日突然、円安が終わる時が来るかもしれない。1998年8月にヘッジファンドのLTCMが破綻した日もドル/円は現在とほぼ同レベルの147.70円だった。その3カ月後には111円台まで30円も暴落した。
今週の注目経済指標

(荒地 潤)