株主優待の縮小・廃止の流れが続く中、株主優待銘柄の選択を誤ると、大きな損失につながる可能性もあります。どのような基準・ルールで株主優待銘柄を選択し、投資すれば良いのでしょうか?


優待品は「おまけ」、銘柄選びは業績重視で!株主優待、知ってお...の画像はこちら >>

株主優待の「廃止・縮小」が増えている

 前回のコラム「廃止リスクに要注意!株主優待、知っておきたい注意点【基礎編】」にて、株主優待は株主平等の原則に反する可能性が高いことをお話しましたが、実際に、株主優待制度を廃止する企業が増えているのが事実です。


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 特に、外国人投資家も投資対象としているような、いわゆる「グローバル系の大企業」にその傾向が強いように感じます。


 例えば、もともと株主優待銘柄として個人投資家に大人気だった オリックス(8591) は、2024年3月末時点への株主への優待品発送もって株主優待を廃止しました。


 また、同様に株主優待が人気を博していた JT(日本たばこ産業:2914) も、2022年12月末の株主への優待を最後に、株主優待制度を廃止しています。


 ですから、今後株主優待銘柄へ投資する際は、「株主優待の廃止・縮小」のリスクを常に考慮した上で投資先銘柄を決める必要がある点、十分に心得るようにしてください。


 では、このような株主優待廃止・縮小リスクを踏まえて、具体的にどのように株主優待銘柄に投資していけばよいのでしょうか。以下、具体的なチェックポイントを解説していきます。


チェックポイント1:業績を必ず確認

 まず一つ目のポイントは、「その企業の業績」です。売上高や営業利益、経常利益などの業績が堅調か、最新の業績見通しが前向きか、などを必ず確認するようにしてください。もし企業業績が好調であれば、仮に株主優待制度が廃止・縮小となったとしても、株価へのマイナスインパクトは比較的軽微で済むからです。


 例えば、上で挙げたオリックスやJTは、株主優待制度が廃止されたものの株価は堅調に推移しています。


 しかし、業績があまり良くないにもかかわらず、魅力的な株主優待により個人投資家を惹きつけているような銘柄は、極めて注意が必要です。


 株主優待をするにもコストがかかりますから、業績が悪化してしまうと株主優待を続けることができず、廃止・縮小のリスクがさらに高まります。


 その結果、株主優待廃止により期待していた優待がもらえなくなるばかりか、株価の大幅な下落により多額の含み損や実現損が発生してしまう可能性があります。


チェックポイント2:できる限り分散投資

 二つ目のポイントは、「できるだけ複数の銘柄に分散投資する」ということです。


 前回のコラムで、「100株投資しても200株投資してももらえる株主優待の内容が同じであれば、無理に200株投資する必要はなく、100株で十分、というのが株主優待重視の投資の場合の考え方です」と述べました。


 さらに、「チェックポイント1」で述べたように、突然の株主優待廃止・縮小リスクもあるため、そのリスクを軽減させるために、できるだけ多くの銘柄に資金を分散させるべきです。


 キャピタルゲイン(値上がり益)重視の投資であれば、少ない数の銘柄に集中投資をしてより多くの利益を狙う、という考え方もあるのですが、株主優待重視の投資の場合は考え方が異なる点に注意しましょう。


「長期保有」が条件の優待銘柄に投資する際の注意点

 近年、個人投資家の安定株主を確保しようと、株式の保有期間に応じて優待内容を変える企業も増えています。


 例えば、株主優待を受ける権利が発生するための条件として、1年以上継続保有、などの保有期間を指定したり、3年以上継続保有した株主にはプラスアルファの優待をしたり、というようにです。


 これは、現物買いと信用売りを組み合わせて行う、いわゆる「優待つなぎ売り」という方法により、株主としての株式保有期間をごく短期間に抑え、株主優待のみを効果的に受け取る投資方法に対する、企業からの防御策といえます。


 ただ、長期保有を前提とした株主優待となると、それだけ株価変動リスクを大きく受けることになります。


 1年以上、3年以上の保有が条件となると、株価が下落した場合、得られる株主優待品の価値を大きく上回るような損失・含み損を被る可能性もあります。それでは、何のために長期保有したのか分からない…ということになります。


 この点、筆者は、もし長期保有するのであれば、その企業のファンダメンタルズ(企業の財務状況や経済環境を分析するための基礎的な要素)を、よく見極めることが重要だと考えます。


 株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)などの指標を確認し、その企業が長期投資に値する、と思われるのであれば投資する、そうでなければ見送る、というスタンスが良いと思っています。株主優待をもらえるから、という理由だけで長期間保有することはお勧めしません。


 株主優待はあくまでも「おまけ」と捉えて、ファンダメンタルズ分析に基づいて、長期保有に見合う業績をあげる銘柄へ投資することが、望ましいと考えています。


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(足立 武志)

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