先週は米国・オラクルが強気なAI関連見通しを発表して急騰。日経平均株価や米国三大株価指数が、過去最高値を更新するAIトレードが沸騰しました。
オラクル効果や自民党総裁選相場で最高値更新続く?パウエル議長発言に注目!
9月15日(月)が敬老の日で祝日のため、16日(火)から始まった今週の日本株市場は、日経平均株価(225種)が史上最高値を更新して4万5,000円台、いや10月初旬までに5万円台に到達しても不思議のない状況です。
昨晩15日の米国市場では創業者のイーロン・マスク氏が約10億ドル(約1,470億円)の自社株を購入した電気自動車メーカーの テスラ(TSLA) などハイテク株が上昇。
機関投資家が運用指針にするS&P500種指数やハイテク株が集まるナスダック総合指数がまたしても史上最高値を更新しました。
火がついたような米国株の上昇はとどまることを知らず、買われ過ぎが心配になるほどです。
17日(水)には米国の政策金利を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)で6会合ぶり、約9カ月ぶりに0.25%の利下げが行われることがほぼ確実視されています。
最近の米国では雇用市場が急速に冷え込み、景気指標も失速気味。トランプ関税でもそれほど急速な国内物価高が進んでいません。
これを受け、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が2025年内に残された2度のFOMCや来たる2026年にかけて、継続して何度も利下げを行う姿勢を示唆した場合、米国株や日本株はさらに青天井で上昇する可能性もありそうです。
一方、パウエル議長が次回10月29日(水)のFOMCでの利下げはあくまで物価指標などデータ次第という従来の立場を崩さない場合、17日の利下げでいったん好材料出尽くし感が広がり、米国株が一時的に反落する可能性もあります。
日本でも19日(金)に日本銀行の金融政策決定会合が終了しますが、こちらはトランプ関税による米国経済の下振れリスクを警戒して、利上げは見送られる観測です。
利上げ見送りに加えて、石破茂首相退陣表明による自民党総裁選相場の継続もあり、今週の日本株はさらなる最高値更新に期待できるでしょう。
15日(月)早朝のニューヨーク為替市場は1ドル=147円30銭台で推移。
心地よい円安トレンドが続いていることも外需株中心に日本株にとって追い風です。
先週の日経平均株価(225種)は前週末比1,749円(4.1%)高の4万4,768円と史上最高値を更新して終わりました。
そのけん引役は前週末比21.9%高の アドバンテスト(6857) 、17.3%高の ソフトバンクグループ(9984) など人工知能(AI)関連株や半導体株でした。
米国で10日(水)に2025年6-8月期の決算を発表したソフトウエア会社の オラクル(ORCL) がAIクラウド事業の好調もあり、3カ月で受注残高が3.3倍となる驚異的な好決算を発表して、株価が前週末比25.5%も急騰。
AI関連の花形株 エヌビディア(NVDA) が6.47%高と5週間ぶりに週間で上昇に転じた他、オラクル効果もあって幅広い関連株が上昇しました。
機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は前週末比1.59%も上昇。
日本では、旺盛なAI投資によるフラッシュメモリ市場好転で外資系証券会社が目標株価を引き上げた キオクシアホールディングス(285A) が前週末比44.9%も急騰したのが象徴的でした。
また石破首相の退陣表明により、次の自民党新総裁の有力候補に挙げられる高市早苗氏が掲げる金融緩和の継続や防衛力強化などにちなんだ銘柄が買われる「高市トレード」も株価上昇に貢献。
防衛関連の IHI(7013) が6.8%高、金融緩和の恩恵を受けそうな不動産会社の 住友不動産(8830) が4.5%高となりました。
来週9月22日(月)に告示され10月4日(土)に投開票される自民党総裁選まで、新政権の積極的な財政政策への期待感で、今週も高市氏をはじめとした新総裁候補の関連株が好んで物色されそうです。
祝日明けの16日(火)の日経平均は4万4,948円でスタート、一時は4万5,000円を超え年初来高値を更新しました。
先週:米国物価高が予想以上に進まず安ど感広がる!AIバブルの様相も!
先週の日米株式市場は連日、主要株価指数が史上最高値を更新するAI熱狂相場に沸き立ちました。
懸念されていた米国の物価指標に関しては、10日(水)発表の8月卸売物価指数(PPI)が米国内の需要の弱含みを反映して前年同月比2.6%の伸びまで減速し、前月比では0.1%の下落とマイナスでした。
11日(木)発表の8月消費者物価指数(CPI)は食品価格の上昇もあり、前年同月比2.9%、前月比0.4%の上昇と伸びが加速しましたが、ほぼ予想通りだったこともあり、逆に米国の主要三大株価指数はそろって史上最高値を更新しました。
週間で1.59%上昇したS&P500だけでなく、ハイテク株が集まるナスダック総合指数は前週末2.03%も上昇。
景気失速懸念で2025年9月以降も追加利下げがあるという期待感の中、旺盛なAI投資で受注が急増したオラクル(ORCL)が前述のように25.5%高、AIコンピュータ向け高性能メモリに強い マイクロン・テクノロジー(MU) が19.7%高と急騰。
AIトレードの物色のすそ野がソフトウエア会社や半導体メモリメーカーまで広がったことが米国株絶好調の原動力です。
AIトレード旋風は日本市場も席巻。
週間の業種別上昇率ランキング上位には、米国でオラクルと共同してAIデータセンター投資を行うソフトバンクG(9984)が属する情報・通信セクターや半導体株が属する電気機器セクターが急浮上しました。
12日(金)から新作ゲームなどを紹介する動画チャンネル「Nintendo Direct」の配信を開始した 任天堂(7974) が前週末比7.3%高となり、その他製品セクターの上昇に貢献しました。
またカーシェアサービス「タイムズカー」の料金実質値上げを発表した パーク24(4666) が8.7%高となるなど、今週19日(金)の日銀の利上げ見送りを見越して、低金利が収益に貢献する不動産セクターなど内需株の一角も好調でした。
ただし、ソフトバンクGやアドバンテストなど値がさAI関連株の影響力が強い日経平均株価が前週末比4.1%高だったのに対して、時価総額の大きな大企業全般の値動きを反映した東証株価指数(TOPIX)は1.8%の上昇にとどまっています。
日本株の主力銘柄といえる トヨタ自動車(7203) は米国の景気失速懸念もあってか前週末比2.5%安、株価が割安な 日本製鉄(5401) は2.6%安と反落しました。
日経平均株価が史上最高値更新といっても、半導体株やAIデータセンター関連株など一部のハイテク株が突出して上昇しているだけという面も際立った一週間でした。
今週:高市氏、小泉氏が総裁になると株価はどうなる?自民党総裁選相場の行方!
今週は17日(水)に終了する米国FOMCで0.25%の利下げが確実視されています。
もし0.5%の利下げに踏み切った場合はビッグサプライズで株価が急騰しそうです。
FOMC後は参加理事たちが今後の政策金利の水準を予想した分布図「ドットチャート」も発表されます。
トランプ大統領の露骨な利下げ圧力がかかる中、2025年に残された2度のFOMCでさらに連続の追加利下げを予想する理事がどれぐらいいるかが注目です。
前日の16日(火)には米国の個人消費の動向が分かる8月小売売上高も発表になります。
そして19日(金)には日銀の金融政策決定会合も終了。こちらは利上げ見送りが確実視されています。
同じ19日には8月の国内CPIも発表になりますが、電気・ガス料金に対する政府の補助金再開で、変動の激しい生鮮食料品を除くコアCPIは前年同月比2.7%の伸びまで低下する予想です。
自民党総裁選の投開票日が10月4日(土)に決まったことで、今週以降も引き続き誰が自民党の新総裁になるかに期待した総裁選相場が続きそうです。
保守層から人気が高い高市早苗氏が新総裁に選出された場合、積極財政、金融緩和路線が見込まれるため、円安再加速で外需株、金融緩和路線で金利負担の軽減が見込める不動産株、原発推進で電力株、国土強靭(きょうじん)化や防衛力強化といった政策で建設株、防衛関連株にとって追い風になりそうです。
一方、靖国神社参拝などで対中国との関係が悪化する懸念も高いため、中国市場でのビジネスが収益源になっている機械株や小売株、金融緩和路線で日銀の利上げが遅れると収益停滞の可能性がある銀行株には逆風かもしれません。
もう一人の有力総裁候補の小泉進次郎氏が新総裁に就任した場合、財政規律を重んじ減税には消極的といわれるため、円高・株安に振れる可能性もあります。
ただ、小泉氏は現在も農林水産大臣として米の流通改革に取り組んだり、ライドシェア全面解禁を掲げるなど規制緩和に積極的です。
また大阪副首都構想を掲げる日本維新の会と良好な関係にあるため、陸運株、農業関連株、大阪関連株などが物色される可能性もあります。
とにかく「うわさで買って事実で売る」のが株式相場。
まだ誰が自民党新総裁に就任するか決まっていない時期ほど、期待感が先行して株価は上昇しやすくなるので、9月下旬にかけての総裁選相場の盛り上がりに期待しましょう。
とはいえ、世界を見渡せば、ロシアのドローンによる欧州ポーランド領空侵犯や、イスラエルによるイスラム組織ハマス幹部殺害を狙ったカタールの首都ドーハ爆撃など、きな臭い動きも出ています。
熱心なトランプ支持者だった右派活動家のチャーリー・カーク氏が先週10日(水)に暗殺されたことによる米国社会の分断と対立も激化しています。
そうした地政学的なリスクの高まりが一線を超えない限り、自民党総裁選相場やAIトレードの盛り上がりで、10月までに日経平均株価が夢の5万円台に到達する可能性も夢ではなさそうです。
(トウシル編集チーム)