島津製作所は研究室・医療機関向け計測機器で世界的な大手です。コロナ関連特需終了後も、バイオ医薬品など構造の複雑な製品の計測需要拡大などを背景に収益拡大が継続し、売上総利益は4期連続で過去最高更新中です。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の西 勇太郎が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 島津製作所を買い推奨!売上総利益が4期連続で過去最高を更新 」
150年の歴史を誇る計測機器大手の島津製作所はノーベル賞受賞者も輩出
前々回のレポートでは、「異なる液状産業廃棄物同士を混ぜ合わせることで無毒化効果を得られるノウハウを蓄積し対応可能範囲を拡大してきた点が、他社には模倣困難な」ダイセキの「強みとなっている」という点に触れました。
▼前々回のレポート
廃棄物処理大手ダイセキを買い推奨!2期連続でEBITDAが過去最高を更新中
このノウハウ蓄積に欠かせないのが成分分析を行う計測機器です。その流れで、今回は計測機器大手の島津製作所を取り上げたいと思います。
島津製作所(7701:東京) (株価3,706円:9月19日終値)は、1875年に仏具職人であった島津源蔵が、輸入に頼っていた理化学機器を国産化することで教育と科学の普及に貢献しようと京都で創業した企業です。
息子の島津源蔵(二代目)の下で、理化学機器事業で培った光学機器(顕微鏡、分光器)の技術を活用し、レントゲン博士がX線を発見したわずか11カ月後の1896年10月10日に日本で初めてX線撮影に成功。
X線装置に使用するX線管や電子管には高真空環境が不可欠なことから、真空ポンプ開発技術も蓄積。真空ポンプで必要とされる精密な圧力制御技術は航空機の油圧機器などにも応用可能なことから1930年代の航空機器事業進出へとつながりました。
現在は計測機器(質量分析装置、クロマトグラフ、分光分析装置、環境分析、食品・医薬品検査、表面組成分析装置、材料試験機、疲労試験機、硬さ試験機、非破壊検査機器)、医用機器(X線診断装置、血管撮影システム、マンモグラフィー/TOF-PET)、産業機器(ターボ分子ポンプ(TMP)、油圧ギヤポンプ、工業炉)、航空機器(コックピット用ディスプレイシステム、空調機器、飛行制御機器)を扱っています。
また同社は、2002年に社員の田中耕一氏がタンパク質の質量分析を、タンパク質を壊さずに実現する技術でノーベル化学賞を受賞したことでも知られています。
売上総利益が4期連続で過去最高益更新も、研究開発費増加による当期純利益減益の中、株価は下落して4,000円割れ
島津製作所の2025年3月期の売上高は5,390億円で、5期連続で過去最高を更新中。売上総利益は2,344億円で、こちらは4期連続で過去最高を更新中です。これは、コロナ禍関連の検査特需が寄与したことも事実ですが、バイオ医薬品など構造の複雑な製品の計測需要拡大という大きな流れが追い風となっており、コロナ禍収束以後の最高益更新継続に結び付いています。
当期純利益については2024年3月期をピークに減少へと転じていますが、これは分析ニーズの高度化に対応するために研究開発費を大幅増加させたことによるものであり、事業実態としては成長が継続している状況です。
他方、株価については当期純利益の変動に素直に反応する形で、2024年3月期をピークに水準を切り下げており、9月19日時点で3,706円と4,000円を割り込む水準となっています。
<島津製作所の株価および当期純利益(2017年以降)>
PBRが過去平均水準に回復すれば株価は5,100円
過去7年間の変化で見ると、売上高が1.4倍に増加したのに対して売上総利益は1.6倍、営業利益は1.7倍、当期純利益率は1.8倍と増加ペースが売上高を上回っており、利益率上昇を伴いながらの事業拡大が実現できたことが分かります。株主資本の蓄積も順調に進んで1.9倍に達している中、時価総額も増加してはいるものの、変化倍率は1.2倍にとどまっています。
当期純利益が2024年3月期をピークに水準を切り下げていることなどが影響しているものと思われますが、結果的には株価純資産倍率(PBR)は3.3倍から2.2倍へと低下。割安感が出ています。この割安感が解消され、PBRが過去7年間の平均水準である3.0倍にまで上昇した場合には、株価は5,100円になると試算されます。
<島津製作所の業績推移(2017年度と2024年度)>
ちなみに、島津製作所の利益率上昇をけん引しているのは産業機器セグメントの利益率上昇です。
同セグメントでは半導体製造装置において真空環境を構築するためのポンプ、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)の売上高が日本、北米、アジア(中国以外)で大きく伸びたことにより、利益率上昇を伴って売上高が増加。連結ベースでの利益率向上に大きく寄与しました。
<島津製作所のセグメント別・顧客地域別売上高(2018年3月期と2025年3月期の比較)>
2026年3月期の会社予想は減収減益となっていますが、これは「円高と関税影響(世界経済悪化・コスト増)を織り込んだワーストシナリオを想定」したものとされています。
いずれにしましても株主資本の蓄積は着実に進むことが見込まれているため、株価水準がこのまま変わらなければ、2027年3月期にはPBRは2.0となり、一層割安な水準になるという計算になります。
<島津製作所の業績予想>
計量・計測機器製造の同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は6,000円
島津製作所の比較対象に適する計量・計測機器製造の上場同業他社には米 サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(TMO:NYSE) 、米 アジレント・テクノロジー(A:NYSE) 、米 ブルカー(BRKR:NASDAQ) 、米 ウォーターズ(WAT:NYSE) などがあります。
これらの企業について、自己資本利益率(ROE)を横軸、PBRを縦軸とした散布図を作成すると、おおむね比例関係にあることが分かります。その中で、島津製作所については大きく割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があると言えます。この割安感が解消された場合の島津製作所のPBR(下図の青破線に乗る水準)は3.5であり、相当する株価は6,000円です。
<主な計量・計測機器製造企業のROEとPBRの関係>
<主な計量・計測機器製造企業10社のROEとPBR>
また、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、11年連続で増配してきた島津製作所は1.8%の利回り(1株当たり配当66円で計算)となっており、最も高い水準です。また、2025年3月期については自社株買いも行っており、総還元率は同業他社比で相対的に高いものでした。
<主な計量・計測機器製造企業10社の配当および総還元利回り>
ここまでご説明した通り、島津製作所は今後も高収益継続が見込まれる中で、株価は過去実績比、同業他社比で割安感があるため、投資判断を「買い推奨」とします。
(西 勇太郎)

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