投資初心者に人気の株主優待。株価に一喜一憂せず、企業からの贈り物を待つワクワク感を楽しめることが魅力です。
なぜ日本株は好調なのか?
日経平均株価は最高値を更新し、投資を続けている方は「なぜだか良く分からないけど、資産が増えている!優待株も上がっている!」状況かもしれません。(そうでない方はゴメンナサイ)。
株式市場を取り巻く環境は、政治、経済、国際情勢のいずれにおいても先行きの不透明感が強い状況です。トランプ米大統領の関税政策は、自動車産業をはじめ世界経済に大きな打撃を与えました。
日本国内では依然として物価高が家計を圧迫。給料の上昇は追い付かず、消費のひもは固くなるばかり。閉塞(へいそく)感が漂っています。国際情勢に目を向けると、ウクライナとロシアとの戦争は長期化し、ガザ地区の紛争も解決の糸口が見えないままです。
ネガティブなニュースが多いにもかかわらず、株式市場は堅調に推移している部分もあり、「なぜ株は上がっているのか、結局誰も良く分からない」という声も聞かれます。企業業績の改善期待や、AI(人工知能)など新技術への投資熱、金融政策の動向など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているためと考えられます。
心の平穏を考えるなら、株価を追うより優待投資
「貯蓄から投資」への掛け声の下、2024年に制度内容が新しくなったNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)によって、投資がより身近な存在になりました。
以前は「株なんて、怖いし、危険」と思われていた方の中にも、この先の不透明な世の中で、「自分の資産は自分で守り、増やすことが必要」と考えなおし、恐る恐る投資を始めた方がいるかもしれません。
ネット証券では株の売買手数料の無料化が進み、SNSやYouTubeでは初心者向けの投資情報が簡単に手に入るようになりました。
「投資を始めたら株価に一喜一憂しない」「長期保有が基本なので、下がっても気にしない」などと言う声もありますが、私は「そんなの無理」と思います。自分の資産が減れば心配ですし、この先どんどんマイナス幅が拡大したらどうしようと気になるのは当たり前のことです。
ただ、投資の世界は一本調子に上がり続ける事は非常にまれで、上がり下がりを繰り返すもの。気になるけれど、気にし過ぎないのが心の平穏を保つ秘訣(ひけつ)かもしれません。
この「心の平穏」を保つにはどうしたらよいものか。
株式投資で利益を得る方法は主に二つ。「キャピタルゲイン」は、株価の上昇によって、利益を得る方法。安く買って高く売る、王道の投資方法ですね。でもこの方法は「株価が上がる銘柄を見つける」事が必要で、約4,000の上場銘柄(10月2日現在、東京証券取引所上場銘柄数)から探し出すのはなかなか難しいものです。
もう一つは「インカムゲイン」。
「心の平穏」を考えるなら、株価が下がっても楽しめる優待投資は慰めになります。どちらが正しい、どちらが劣っているなどは全くなく、両方追いかけるも良し。ご自身の性格や投資期間、投資額などを考えて、自分はどちらに軸足を置いた方が良いのか、一度じっくり考えてみるのが良いかと思います。
投資初心者に知ってほしい、優待投資の魅力
優待投資は、投資の入り口としても初心者にお薦めできます。
まず、優待を導入している企業の中には日頃使うお店やサービスを提供している企業が多く、優待投資を通じて企業を身近に感じることができます。
また、企業によって優待をもらえる条件がそれぞれ決まっていますが、投資額は幅広く設定されており、少額からでも始められます。
そして何といっても年に1回、もしくはそれ以上いただける企業からの贈り物。お気に入りの会社の株を買って、そのお礼として優待をいただくのはやはりうれしいものです。
初めて株を買って、権利日が過ぎて、「待てど暮らせど優待が届かない…」と焦りだした頃、権利日の約3カ月後に届いた優待のうれしさ、ありがたさ。今では随分廃れてしまいましたが、お中元やお歳暮など贈り物を大事にする日本独自の文化が表れていると言えるかもしれません。
2025年も残り3カ月となりましたが、優待関係の発表は前年に比べると非常に多くありました。優待を新たに始める企業もあれば、中には廃止の発表も。
苦い思い出、優待未実施の「REVOLUTION」
私の優待生活で、今年一番の「大失敗」をお話します。
優待投資をされている方にとって今年最も大きな衝撃となったニュースは、「 REVOLUTION(8894) の優待廃止」だと思います。私も最後に船に乗ってしまい、そのまま沈んでしまいました(笑)。
同社は2024年10月に優待新設を発表。2,000株以上半年以上継続保有で年間12万円のQUOカードPayの優待をもらえるという内容でした。権利月は4月、10月。
優待内容を金額換算して株価で割った「優待利回り」は、当時の株価で何と14.1%。(※編集注:優待内容を利回り表示することは推奨されていませんが、今回の記事では失敗談としてあえて表現を残しました。)発表が10月の権利前でしたので、初優待の2025年4月を楽しみに株価はかなり上がりました。
ただ、この時は「ちょっと怪しいな」と私は様子見。2024年12月には権利月に2025年1月、4月を追加するとの発表がありました。
その後、優待条件の緩和でより株主が増え、大株主との意見相違に発展。ついに、2025年3月、一度も優待を実施しないまま優待廃止を発表するという前代未聞の事態が起き、大きな話題となりました。
失敗からの学び。良すぎる内容、度重なる内容変更は疑え
悪い見本としてのREVOLUTIONですが、ここから学べることはとても多いもの。傷ついてもタダでは起きないポジティブシンキングも優待投資には必要です。
まずは優待内容があまりにも良すぎる銘柄には飛びつかない。自社製品でも自社のサービスでもない優待内容で、それも金券類の優待で「優待利回り」が14%を超えるなんて、よくよく考えればあり得ない。
実は、REVOLUTIONはずっと無配でした。会社としては業績を上げ、利益を上げ、株主に配当として還元するのが基本。その基本を通り越して先に株主優待で還元するのは、やはり怪しいのです。
また、何度も優待内容の変更を発表することも、怪しい動きと言えます。優待新設を発表した会社はその後株主からの問い合わせが増え、それに回答する形で何らかの発表をする会社も多くあります。そのような発表は良いのですが、急に長期保有の条件を撤廃したり、株を買わせようとする思惑が見え隠れするものは、疑ってみた方が良いかもしれません。
優待投資歴は長い方だと思いますが、いまだにこんな失敗を…。まだまだ学ぶことは多いと改めて実感しました。
優待投資歴20年、マニアがみる優待最新動向
最近は、優待のデジタル化が進んでいます。例えば、以前流行した「プレミアム優待倶楽部」(保有株数に応じて付与されるポイントを品物と交換するサービス)の代わりに、デジタルギフトの優待が増えてきたように思います。
デジタルギフト優待とは、共通ポイントや決済サービス、各種電子ギフトカードなどのことです。QUOカードに比べると利便性が高く、株主それぞれの嗜好(しこう)に合った使いやすい優待だと思います。
ファミリーマートはこのほど、全国の店舗でQUOカードの利用を2025年12月で終了すると発表しました。QUOカードの利用先が一つなくなり、一段とデジタルギフトへの移行が増えることが予想されます。株主優待券も紙からデジタルへとシフトしています。
優待投資は玉石混合。お宝を見分ける方法は?
投資へのハードルが下がり、個人投資家が増えたことで、企業側も「株主還元」で個人投資家を取り込もうと、IR活動に力を入れています。増配や自社株買いに加え、株主優待の新設や拡充を強化。このような取り組みは、時間のかかる業績向上より、手っ取り早く株価上昇や注目度向上につながる施策とも言えます。
個人投資家としては、玉石混交の情報の中、軸足をしっかり持って、優待投資を楽しみたいものです。
私にとっての優待投資の軸足とは、その会社が好きである事、優待が自分にとって使い勝手が良い事、会社が安定的に配当を出している事、投資額が自分の身の丈に合っている事、そして、その優待が届いた時にワクワクする事です。
株主優待投資を始めて20年以上になりますが、多くの失敗を繰り返しながら、それ以上の楽しみを株主優待からいただきました。
投資という未知の大海でもがきながら、株主優待という港に停泊してちょっと休んで、また新たな港に漕ぎ出して。休んだ港ではおいしい食事やお得な体験をして、また次に。初めは笹船かもしれませんが、航海を続けるうちに立派な客船になるかもしれません。
良い事も悪い事も全てまとめて、株主優待投資での経験はプライスレス。無くても良いけど、あった方がより刺激的で楽しい人生送れるはず。「No 株主優待、No Life」ですね。
(優待主婦 まる子さん)