先週は米国政府閉鎖で乱高下したものの、日立と米オーブンAIの提携など、AIブームが日本に押し寄せてきたことを好感して関連株が急騰。今週は積極財政や金融緩和を掲げる高市自民党新総裁が選出されたことで、内需株中心に日本株が全面高する可能性も高そうです。


今週のマーケット:日経平均、一時史上初の4万8,000円台へ...の画像はこちら >>

高市新総裁を歓迎して防衛・原発関連株が上昇?「高市円安」が進めば外需株にも追い風か 

 4日(土)、自民党の新総裁 に高市早苗前経済安全保障相が選出されました。高市新総裁への期待が高まる中、週明け6日(月)の日経平均株価は4万6,636円でスタート。その後、4万7,000円の大台に乗ったのもつかの間、一時は史上初の4万8,000円台まで急騰しました。終値は4万7,944円と前営業日比2,175円高で取引を終えました。


「責任ある積極財政」を掲げる高市氏が選出されたことで、今週の日本株はさらに大きく上昇しそうです。


 具体的には、高市氏の掲げる防衛力強化や原発推進で 三菱重工業(7011) や 東京電力ホールディングス(9501) 、国土強靭(きょうじん)化政策で土木・建設株。


 高市氏が金融緩和に寛容なリフレ派で、日本銀行の利上げペースが鈍くなる可能性が高いため、金利負担の軽減が見込める不動産関連株などに上昇期待が持てます。


 逆に金利上昇が収益増加に貢献する 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) など銀行株には少し逆風かもしれません。


 また先週末に1ドル=147円40銭台まで円高に振れた為替レートが高市氏の掲げる積極財政や金融緩和継続で円安方向に反転する可能性も高まりました。


「高市円安」が進めば、トランプ関税で株価が不安定な トヨタ自動車(7203) など外需株全般にも追い風が吹きそうです。


 中小型株では高市氏の掲げるサイバーセキュリティ強化政策を受けて、標的型攻撃に強い FFRIセキュリティ(3692) 、核融合発電の実験炉向け温度センサーの 助川電気工業(7711) 、量子コンピューター関連の フィックスターズ(3687) 、宇宙開発関連の アストロスケールホールディングス(186A) といった「高市関連株」が急騰するかもしれません。


 半面、高市氏が保守派であることから中国の反発も予想され、中国向け売上比率が高い ファナック(6954) や 安川電機(6506) など工場自動化関連の機械株、中国で化粧品販売を行う 資生堂(4911) など中国関連株には逆風かもしれません。


 高市自民党新総裁は来週15日(水)に召集予定の臨時国会で日本初の女性首相に選出される見通しです。


 今週は連立政権の枠組み拡大を巡り、大阪副首都構想を掲げる日本維新の会との交渉が進むかもしれません。


 また高市氏が国民民主党の掲げる所得税の基礎控除を178万円に引き上げる「年収の壁」問題やガソリン税の暫定税率廃止に理解を示していることから、国民民主党との連立があるかもしれません。


 国民民主党と組むほうが現役世代の税負担軽減による内需活性化につながりそうなので、日本株にとっては、より追い風といえるかもしれません。


 ただ、米国では2026年会計年度のつなぎ予算成立が難航し、先週1日(水)から政府機関が閉鎖に追い込まれており、今週も閉鎖が続きそうです。


 先週は政府機関閉鎖を受け、3日(金)に米国労働省が発表予定だった9月雇用統計が発表できない異例の事態になっています。


 今週も政府機関の閉鎖が続くと、7日(火)の8月貿易収支、9日(木)の前週分の新規失業保険申請件数などが発表延期になります。


 そのため、注目度の高い経済指標は10日(金)発表の10月ミシガン大学消費者信頼感指数の速報値ぐらいになります。


 8日(水)には9月17日(水)に0.25%の利下げを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録も発表されます。


 また今週は、6日(月)の生理学・医学賞を皮切りにノーベル賞の発表もあるため、日本の科学者が受賞すれば関連銘柄の急騰につながるかもしれません。


 先週の日経平均株価(225種)は米国株が政府機関の閉鎖でも力強い上昇を続けたこともあり、前週末比414円(0.9%)高の4万5,769円と史上最高値を更新しました。


 人工知能(AI)データセンター向け送配電設備で高い技術力を持つ 日立製作所(6501) が米国のオープンAIと戦略的パートナーシップを締結したことで前週末比9.2%も急騰したのが目立ちました。


 米国高速半導体メーカーのエヌビディアと高性能な記憶媒体の共同開発を行うと報じられた キオクシアホールディングス(285A) はストップ高を連発して40.6%も急上昇。


 ここに来て米国AIブームの大波が日本企業にも押し寄せたことで、AI・半導体関連株が一極集中気味に独歩高したことが日経平均最高値更新の原動力でした。


 米国では、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週末比1.09%高。


 9月の雇用統計が発表されなくても民間雇用指標で雇用の落ち込みが確認されたことで、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げが濃厚になったことが上昇の理由です。


 政府閉鎖、雇用悪化でも利下げ期待だけで最高値を更新する米国株には過熱感があるのも確かでしょう。


先週:日本ではAI株が独歩高!内需株、新興成長株の急落が心配!

 先週は指数寄与度の高いAI関連の ソフトバンクグループ(9984) が前週末比6.0%高、 アドバンテスト(6857) が8.4%高したこともあって日経平均株価(225種)が最高値を更新しました。


 しかし、週間の業種別騰落率で上昇したのはAIデータセンター関連の光ファイバー株が属する非鉄金属や半導体株が属する電気機器などAI関連の3業種と医薬品セクターのみ。


 米国エヌビディアとのAIデータセンター向け高速SSD(データ記憶装置)の共同開発が材料視されたキオクシアホールディングス(40.6%高)以外にも、半導体の材料であるシリコンウエハ大手の SUMCO(3436) が18.7%高。


 AI向け電子材料で高シェアを誇る銅メーカーの JX金属(5016) が18.1%高となるなど、AI関連株が幅広く買われました。 


 9月30日(火)にトランプ大統領が米国製薬大手の ファイザー(PFE) に対して、薬価引き下げの見返りに同社の輸入医薬品に対する追加関税を3年間免除すると発表したことで、日本の医薬品株も反発。


 米国売上比率の高い 住友ファーマ(4506) が12.6%上昇しました。


 その半面、残りの29業種は原油価格の下落で鉱業、海運業、石油・石炭製品セクターが6%前後下落するなど、総じて振るいませんでした。


 海外で原油・天然ガスを採掘する INPEX(1605) が6.4%安、石油タンカーが収益源の 日本郵船(9101) は5.3%下落しました。


 9月末の株式配当権利落ちによる下落や、機関投資家の期初に向けたポジション調整の売りも全体相場低迷の要因でした。


 そのため日経平均は最高値を更新したものの、幅広い大型株を組み入れた東証株価指数(TOPIX)は前週末比1.8%安と下落しています。


 内需系の新興成長株を集めた東証グロース市場250指数が4.2%も急落するなど、新興市場への資金流入がぱたりと途絶えたのは少し心配です。


 2025年に入って前年末比112%高と株価が2倍増していた回転すし「スシロー」運営の FOOD & LIFE COMPANIES(3563) も、9月の既存店増収率が1ケタ台に鈍化したことで14.0%急落。


 これまで個人消費拡大や旺盛なインバウンド(訪日外国人)需要で株価の上昇が続いた外食、日用品関連の内需株が軒並み急落しました。


 ただ4日(土)に自民党新総裁に高市氏が選出されたことで、2013年に始まったアベノミクスを踏襲した「サナエノミクス」と名付けられそうな成長投資戦略への期待が高まることは必至。


 今週は中小型の新興成長株を含め幅広い内需株が反発しそうです。


今週:積極財政の高市政権誕生期待で「日本買い」加速!?米国の政府閉鎖が不安要素

 高市トレードで日本株の全面高に期待が膨らむ今週の不安要素はやはり米国の政府機関の閉鎖がいつまで続くか、でしょう。


 米国では、政府支出が決められた上限に到達して政府機関が閉鎖される事態が毎年のように繰り返されてきました。


 今回は議会での共和党・民主党の対立が深刻で、政府閉鎖の責任をお互いの党のせいにする政治的駆け引きもあり、長期化する恐れがあります。


 ただ先週は9月雇用統計が発表されなかったものの、1日(水)の給与計算代行会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)の9月の民間雇用統計が予想外の3.2万人減少と約2年半ぶりの大きな落ち込みとなりました。


 AIブームに沸く米国市場は、政府機関の経済指標の発表がなくても、民間機関の指標で事足りると楽観視。


 雇用の落ち込みで追加利下げが行われる期待感から、「能天気」といっていい上昇が続きました。


 ただ、来週には15日(水)に米国労働省の9月消費者物価指数(CPI)、16日(木)に9月卸売物価指数(PPI)、商務省の9月小売売上高なども発表予定です。


 今週後半まで政府機関の停止が続いて、FRBの利下げ方針にも多大な影響を及ぼす重要物価・景気指標の発表が危ぶまれるようだと、さすがに米国株にも悪影響が出る可能性が高いでしょう。


 8日(水)に議事録が発表される前回9月17日終了のFOMCでは、トランプ大統領の肝いりでFRB理事となったスティーブン・ミラン氏が唯一、0.5%の大幅利下げを主張。


 議事録でFRB内部の意見対立が鮮明になると、2025年内にあと2回の利下げを見込んで上昇が続く米国株にとって不安要素になるかもしれません。


 今週後半からは日本の小売、流通業に多い2月期決算企業の中間期(2025年2-8月)の決算発表も始まります。


 9日(木)には米国のコンビニ事業の業績持ち直しが期待される セブン&アイ・ホールディングス(3382) や「ユニクロ」の ファーストリテイリング(9983) 、牛丼チェーンの 吉野家ホールディングス(9861) 、10日(金)には家電量販店の ビックカメラ(3048) が決算発表します。


 英国のサッチャー首相を信奉し日本版「鉄の女」と海外メディアでは紹介されている高市氏。


 今週、高市新政権発足に向けた連立政権の枠組み交渉が進展すれば、AI株一辺倒の銘柄物色から、幅広い銘柄に買いが入る「日本買い」が復活する可能性も高いでしょう。


(トウシル編集チーム)

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