円キャリートレードの環境が変化

 キャリートレードは、日本円などの低金利通貨を借りてそのお金をドルやトルコリラなどの高金利通貨に投資して、スワップポイント(金利差収入)を積み上げながら長期的な収益を狙う運用手法です。


 日本円を利用した「円キャリートレード」は、スワップポイントに加えて円安による為替差益も得やすいということで、FX投資家の間ではとても人気の高い手法となっています。


 ところが2026年夏以降、円キャリートレードを取り巻く環境が大きく変化しました。

高金利通貨のスワップ収益は魅力的ですが、その収益を円高による為替差損が打ち消してしまうことになったのです。


2026年1月から運用していたらいくらもうかった?

 前回のレポートでは、9月までの3カ月間のキャリートレードの損益を分析しました。この期間は、政府・日本銀行の円買い為替介入、日銀利上げ、そしてトランプ政権からの円安懸念発言など、キャリートレードには厳しい条件が重なり、下半期にキャリートレードを始めた個人投資家は、どの通貨ペアを選択しても損失となるという結果になりました。


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 しかし、キャリートレードは短期勝負ではなく「長期的な収益を狙う運用手法」です。今回のレポートでは、2026年1月2日から、円キャリートレードを始めていた場合、2026年9月末時点で、どれほどもうかったのか?を、


為替損益(キャピタルゲイン)
スワップ収益(インカムゲイン)
総合収益
収益率


を比較して、「勝ち組・負け組通貨」を検証します。


【検証条件】
運用資金(証拠金):200万円
レバレッジ:5倍
検証期間:2026年1月2日(始値)~9月30日(終値)[271日間]
取引枚数:取引可能額1,000万円相当(取引枚数は通貨によって異なる)


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トルコリラ円

収益率ナンバー1はトルコリラ円 ~ スワップポイントが為替差損を逆転

 収益率トップは「トルコリラ円」でした。200万円の運用で総合収益は、70万円の利益。投下資本に対する利益の割合(ROI)は約35%になりました。


 詳細を見るとこの通貨ペアならではの特徴が分かります。トルコリラ円の為替差損はマイナス116万円、スワップ収益は+186万円。つまり、為替で大きな損失となったものの、スワップ収益によって最終的には利益を確保できたのです。キャリートレードの理想形とは言えませんが、高金利通貨のパワーを示す結果となりました。


豪ドル円

実質的な勝者は豪ドル円 ~ キャリートレードの理想形

 トルコリラ円は、総合収益1位となりましたが、為替差損も10通貨ペアの中で最も大きく、ハイリスク・ハイリターンの勝利でした。


 その点、収益の安定感では、豪ドル円に軍配が上がります。豪ドル円の収益は為替利益+42万円、スワップ収益+24万円、合計収益は+66万円でした。

為替収益とスワップ収益の両方がプラスとなっていて、極めて理想的なキャリートレードになっています。ROIも33%を超えていて、収益率1位のトルコリラ円との差はわずかでした。


メキシコペソ円・南アランド円

高スワップ通貨は今年も健在

 新興国通貨グループで安定感があるのは、メキシコペソ円と南アフリカランド円です。メキシコペソ円は62万円の利益、ROIは31%。南アランド円も約57万円の利益、ROIは29%でした。


 新興国通貨ゆえに豪ドルに比べると安定感に欠けますが、トルコリラほどの高リスクではなく、「高スワップポイントを受け取りながら収益を積み上げる」というキャリートレード本来の魅力を示した通貨ペアと言えます。


ドル円

ドル円も健闘 ~ 逆風に耐えプラス収益を確保

 ドル円の成績は5位。総合収益は約23万円、ROIは11%でした。トルコリラ円や豪ドル円の30%超リターンと比べると見劣りしますが、為替介入や日銀利上げという大逆風の中で善戦したと言えます。


 政府の円安政策と日銀の金融政策が今後転換する可能性が高まる中で、ドル円の為替差益とスワップポイントで安定的に稼げる時代は終わりに近づいているかもしれません。これはドル円だけではなく、円キャリートレード共通の問題です。


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負け組通貨

ユーロ円とカナダ円は大苦戦 ~ スワップ収益だけでは円高に勝てなかった

 最下位はスイス円です。スイスフランは伝統的な安全資産ですが、そのぶん金利面で不利です。スワップポイントがマイナスになっている今の状況では、キャリートレードに適していません。


 ワースト2位はユーロ円で、総合収益はマイナス20万円。

ワースト3位はカナダ円で、総合収益はマイナス13万円でした。原因は円高による為替差損の拡大です。ポンド円も為替差損を計上しましたが、総合収益では+6万円のプラスを確保しています。この違いは、ユーロ円とカナダ円のスワップ収益だけでは為替差損をカバーできなかったためです。


 ユーロ円のスワップポイントでカバーできる、為替差損幅(円高耐久幅)は、約1.75円です。キャリートレードは「長期的な収益を狙う運用手法」ですが、9カ月間かけて積み上げたスワップ収益も、わずか2円程度の円高によって失われるリスクがあります。


まとめ ~ 高スワップだけでは勝てない

 高金利を前面に押し出してキャリートレード投資を勧める情報は数多くあります。しかし、今回の結果で分かったのは、「高金利だからもうかる」という単純な話ではないということです。重要なのは、高いスワップ収益と為替変動リスクのバランスです。その意味で、2026年ここまでの勝ち組は豪ドル円、メキシコペソ円、南アランド円と言えます。


※本レポートで使用している数値や試算は、理解を助けるための参考例であり、実際の利益を保証するものではありません。為替相場や金利は変動するため、実際の取引結果は大きく異なる場合があります。


(荒地 潤)

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