中央道上り線の渋滞ポイント「小仏トンネル」に並行して新しいトンネルを掘り、新ルートを建設するという抜本的な対策が本格化しています。下り線でも相模湖IC付近で渋滞対策が進行中。
「小仏(こぼとけ)トンネル」を先頭に〇km渋滞――中央道を利用する人は、ラジオの交通情報などで、このトンネルの名を聞いたことがあるかもしれません。上り線で発生する長い渋滞を解消するための抜本的な対策が、いよいよ本格的に始まります。
東京都と神奈川県の境に位置する小仏トンネルの上り線は、その手前からトンネルにかけて長い上り坂になるため、速度が低下し渋滞しがちです。長野方面の行楽から東京方面へ帰るクルマが増える休日の午後などは、数十キロに及ぶ渋滞が毎週のように発生しています。
これを解消するために進められているのが、上り線側に「新小仏トンネル」を含む新ルートを建設する工事です。2020年9月にはトンネル本体の工事契約も締結され、急峻な山中の現場には大規模な工事用道路もできてきました。
渋滞する中央道上り線、小仏トンネル手前の左側車線が減少する箇所。将来はこの左側車線に新ルートが接続する(2020年11月、中島洋平撮影)。
現在の上り線は、小仏トンネルの手前で3車線から2車線に減少しますが、この位置から小仏トンネルを抜けたところまで、約5kmにわたり1車線分の道路が、現上り線を迂回する形で建設されます。その先の1.5km区間も、車線運用の見直しや拡幅が実施され、八王子JCTまで3車線になる見込みです。
「現在は小仏トンネル手前の車線減少部分で、クルマが左側から合流してくることが、渋滞のひとつの原因になっています。
この前後区間は、山の斜面の下側に下り線、上側に上り線が通っており、新上り線がさらにその上を通るという斜面を3段に活用した構成になります。新ルートには新小仏トンネルのほかにも、谷をまたぐ橋脚高さ50mに及ぶ新底沢大橋など大規模な構造物が建設されます。
下り線渋滞にも対策 開通はいつ?上り線だけでなく、下り線でも渋滞対策が実施されます。下り線は小仏トンネルの西側、相模湖東ICから相模湖ICにかけての上り坂で速度低下による渋滞が発生しているためです。休日の午前中などには、ここを先頭に渋滞が東京の首都高まで伸びることもあります。
下り線側は、相模湖東IC~相模湖IC間の約2kmにかけて、左側に登坂車線を新設して3車線化します。こちらは、中央分離帯を少し削るとともに、現状の路肩を活用することで1車線分を捻出するということです。
NEXCO中日本八王子支社は、これら対策により上り線、下り線とも渋滞の解消が見込まれるとしています。

狭い用地で工事用道路の建設が進む。左の斜面上が中央道の下り線(画像:NEXCO中日本八王子支社)。
なおNEXCO中日本八王子支社によると、早ければ2021年春にも新小仏トンネルの本体工事に着手したいといいます。
この中央道沿線ではもうひとつ、リニア中央新幹線というビッグプロジェクトが進行しています。こちらは、いまのところ2027年開通の予定は変わっていません。品川から相模原までをたった十数分で結ぶリニアによって、人の移動が劇的に変わり、モノの移動すなわち物流において、中央道の役割もますます高まると予想されます。その意味でも、「小仏」のボトルネック解消に期待がかかります。