沖縄県本島からさらに東に350km超に位置する南大東空港は、当初は別の場所にありました。新空港の開設で不要になった旧空港はいま、ラム酒工場という新たな姿に変身。
沖縄県に位置しながらも、同県本島からさらに東に350km超に位置する、まさに「離島のなかの離島」、南大東島。ここの空の拠点となっている南大東空港は、実は当初から現在の島内北東部に位置していたわけではありませんでした。
移転前の旧南大東空港は、島のおおよそ中央部に位置していました。移設となった経緯を、国土交通省は、次のように説明しています。
旧南大東空港。いまだ名称板は掲げられたまま(2020年12月、乗りものニュース編集部撮影)。
「旧南大東空港は、旧日本軍により海軍飛行場として建設された。1963年滑走路などが整備され、翌年12月には、滑走路1200mに整備しYS-11型機が就航した。しかし1972年、本土復帰に伴い日本国の航空法が適用されたことで、進入表面が同法の規定に抵触するため、滑走路を短縮して運用される形となり、1974年に、滑走路800mで供用開始した。これまで那覇間に、デ・ハビランド・カナダ(現ボンバルディア)のDHC-6型機が就航していたが、悪天候や横風の影響を受けやすいため、欠航が多かった。そのため機材の大型化に対応する新空港として移転整備し、1997年に現空港を供用開始した」(国土交通省大阪航空局)
新空港が供用開始となってから、いわば“用済み”となってしまった旧南大東空港。
旧南大東空港のターミナルビルは現在、ラム酒の製造工場になっています。「南大東空港」の看板はそのまま掲げられながらも、その部分には、「グレイスラム」の赤い文字が追加されていました。
現在同施設を運営するグレイスラム社の工場長によると、この「旧南大東空港」をラム酒の製造工場としたのは、2004(平成16)年ごろからとのこと。なお、事前連絡をすれば一般の人でも見学が可能とのことです。

現在の南大東空港(2020年12月、乗りものニュース編集部撮影)。
受付部分は、ラム酒などが置かれているなど酒造メーカーらしい側面があるものの、入り口に「搭乗旅客待合室」と書かれたドアやDHC-6型機の座席表、かつての南西航空(現、日本トランスオーシャン航空)や琉球エアコミューターの看板などがそのまま掲げられ、かつて空港だった場所だと想起させるものが随所に残されていました。
このほか、かつて滑走路だったところには、ビジターセンターや「島まるごと館」といった観光施設のほか、島民のためのマンション群が立ち並んでいます。ただ一部駐車場として使われている空き地には、中心部に長大な白線とともにオレンジのラインが引かれているところも。立地条件を鑑みると、かつて「滑走路」だったエリアにあたることから、その時の線がそのまま残っているものとみられます。