国が高速道路料金の広範な見直しを検討しています。その焦点になっている各種割引制度のなかでも、SA・PAの混雑などの問題を引き起こしていることから、早急に取り組むべきとされているのが「深夜割引」の見直しです。
国が高速道路料金の広範な見直しを検討しています。2021年3月10日(水)に開催された有識者会議、第49回国土幹線道路部会において、その概要が改めて示されました。各種割引制度の効果と課題が議論されましたが、そのなかでも「早急に見直すべきとの意見がある」(国土交通省道路局)というのが、深夜割引です。
東名の東京料金所手前で深夜割引を受けようとするトラックが滞留している様子(画像:国土交通省)。
空いている深夜の利用を促す目的で、2000年代からNEXCO管轄の道路などで導入されている深夜割引は、年代により割引率が異なってきたものの、2021年3月現在は一律30%とされています。対象の時間は午前0時から4時のあいだで、たとえば前日から高速道路を走り、0時から4時のあいだに高速道路を出る、あるいは0時から4時のあいだに高速道路へ入って、4時以降に出ても、利用した全区間に割引が適用されます。
問題となっているのは、ドライバーがこの割引を受けるために時間調整をする点で、それによりSA・PAが夜間に混雑したり、場所によっては本線上でも午前0時前にトラックなどの滞留が発生したりしているといいます。とりわけ東京近郊の高速道路では、深夜にも関わらず適用時間帯の前後に渋滞が発生しているそうです。
そもそも何のための深夜割引なのかそもそも深夜割引の導入目的は、「一般道の沿道環境を改善するため」。つまり、高速道路の料金を引き下げることで深夜帯の利用を促進し、一般道からクルマを減らすことにあります。国土交通省は、「深夜割引の導入前後の比較により、一般道の夜間における交通量は大幅に減少しており、騒音環境は改善している」と評価しています。
しかし、これにより夜のSA・PAが時間調整するクルマで混雑して、特に大型車の駐車マス不足が全国で顕在化、溢れたクルマが本線上などで滞留することになるなど、「割引により逆にドライバーの負担となる不経済が生じているため、割引を見直すべき」といった意見が部会で出されています。
ただ、深夜割引の廃止は特にトラック業界からの反発も予想されます。全日本トラック協会は、「(荷主から)高速道路料金を満額受け取るケースは少なく、困難な実態がある。そのため高速道路の料金割引の形態が、トラック運送業界の労働環境に与える影響は大きい」とし、労働環境を歪めることのないよう配慮してほしいとしています。また、休憩施設の拡充、SA・PAの容量拡大も長年にわたり訴えており、NEXCO各社もこれに取り組んでいます。

深夜割引率の変遷(画像:国土交通省)。
こうした意見を勘案し、国土交通省道路局は次のような見直しの方向性を案として打ち出しています。
・割引適用時間帯の走行に対してのみ、割引が適用されるよう条件を見直し。
・割引率を時間帯に応じて段階的に拡大・縮小させることも含めて、適用時間帯を拡大する方向で見直し。
時間帯の拡大については、労働基準法の規定に合わせて22時から5時にすべきという意見が出ています。
一方、2021年3月12日(金)には、一足先に進んでいた「首都圏の高速道路料金」の見直し方針が示され、新たに首都高へ深夜割引を導入する方針が打ち出されました。国土交通省道路局によると、NEXCOなどが管轄する全国的な高速道路料金の方向性については、今夏にも部会で取りまとめるということです。