航空自衛隊からYS-11FCが姿を消します。同機は入間基地にある飛行点検隊で運用されていた飛行点検機。
航空自衛隊入間基地で2021年3月26日(金)、飛行点検隊のYS-11FC退役に伴う機種更新記念式典が実施されました。式典に先立ち、3月17日(水)には運用終了に伴うラストフライトが行われており、今回の式典を無事終えたことで、自衛隊の現有装備からも完全に退いたといえるでしょう。
飛行点検隊の格納庫内で行われたYS-11FC退役に伴う機種更新記念式典の様子(2021年3月26日、柘植優介撮影)。
YS-11FCがこれまで担ってきた任務は、「飛行点検」と呼ばれるものです。飛行場やその周辺には、航空機が安全にフライトできるよう離着陸などを支援するための航空保安無線施設が配置されています。これらが必要な機能を保持し、かつ正常に動いているか、実際に上空を飛んで評価・判定するのが飛行点検機の役割です。
飛行点検隊は、そのための専用機であるYS-11FCを始めとした「飛行点検機」を運用する専門部隊です。なお陸上自衛隊や海上自衛隊には飛行点検を実施する部隊は存在しません。航空自衛隊の飛行点検隊が、全国の防衛省管理下にある42基地163施設の航空保安無線施設すべてを一手に担っています。そのため、年間の飛行点検回数は約300回にも及ぶそうです。
ちなみに日本で飛行点検機を運用しているのは、航空自衛隊以外に国土交通省航空局もあります。
飛行点検には種類があり、大きく「設置位置調査」「初度飛行点検」「定期飛行点検」「特別飛行点検」に分けられるといいます。
・設置位置調査:飛行場などを新設するにあたり、設置位置が適しているかを調査するためのもので、まだ施設がない場所を飛ぶ。
・初度飛行点検:施設が完成し、運用開始に先立って行う最初の点検で、運用をスタートしても問題ないかチェックするもの。
・定期飛行点検;運用中の施設に対して定期的に行う点検。飛行点検隊が常時実施している飛行点検の大半がこれに該当する。
・特別飛行点検:飛行場などで滑走路の延伸や敷地の拡幅、施設の移設など大幅な変更が行われた場合や、施設に重大なトラブルやアクシデントなどが発生し、運用を一時中断したのち再開する際などに行う点検。

飛行点検隊に配備されている2種類の飛行点検機。左手前がU-125、右奥が新型のU-680A。YS-11FCが退役したため、今後は2機種計5機で全国にある自衛隊の航空保安無線施設の点検を行う(2021年3月26日、柘植優介撮影)。
飛行点検隊によると、それぞれの割合は「設置位置調査」が約0.1%、「初度飛行点検」が約10%、「定期飛行点検」が約70%、「特別飛行点検」が約20%だとのこと。いずれも航空機が安全運航するにあたり必要な任務のため、飛行点検隊もやはり日本の空の安全を守るため忙しく日本各地を飛び回っているといえるでしょう。
さて、戦後初の国産旅客機が姿を消すことは惜しいものの、自衛隊機の安全な運航のために今度は新鋭のU-680Aが既存のU-125とともに日本中の自衛隊飛行場を飛び回ります。
飛行点検機は自衛隊の飛行場がある場所には必ず飛んでいくため、遠いところでは小笠原諸島の硫黄島や日本最東端の南鳥島までも足を延ばします。
これまで、YS-11FCは、飛行速度が遅いものの、短距離離着陸性能が優れていたため、それら遠方の飛行場まで点検任務のために時間をかけて飛んで行っていました。一方U-680Aは短距離離着陸性能に優れるとともに飛行速度も速いため、これまでよりも短時間で効率よく点検任務を済ますことが可能になるそうです。
【動画】間近で見ること少ない飛行点検機を中までじっくり!