JALで長年国内線の主力として使用されてきた「ボーイング777国内線仕様機」が全て退役しました。エンジントラブルにより思わぬ形で即時退役となったわけですが、利用者側から見ると、快適性の面でメリットが多数あります。
2021年3月、JAL(日本航空)が国内線主力機としてきた、P&W(プラット・アンド・ホイットニー)社製エンジン搭載の国内線仕様ボーイング777-200型機、および777-300型機を、全機退役させました。
JALの国内線仕様のボーイング777-200型機「JA007D」(2021年2月、乗りものニュース編集部撮影)。
JALの777-200は375席仕様で、1996(平成8)年から25年間、羽田発着の国内幹線などに用いられてきました。より大型の777-300は、同社最大のキャパシティとなる500席が設定され、1998(平成10)年から使用されています。同社では、国内線仕様の777-200の後継として、2019年からエアバスA350-900型機を導入しており、国内幹線用主力機の更新が進められているところでした。
このなかで、国内線仕様のボーイング777-200が2020年12月、那覇空港を離陸後にP&W製のエンジン不具合で引き返すという事象が起こり、国土交通省が重大インシデントとして認定します。その後、海外でも同系統のエンジンを搭載した777でトラブルが発生したことをきっかけに、2021年2月21日より、P&W製エンジンを搭載するJALの国内線仕様777-200、777-300ともに運航を停止。そして、これらの機体は飛ぶことのないまま、4月に即時退役が発表されています。
この“電撃引退”について、JALは「現時点で運航再開の時期が未確定であることに鑑み、経済性の観点から2020年度内に退役させることとした」としています。
長らく国内線で一線級の活躍をしてきた機体が、思わぬ形で退役を余儀なくされましたが、実は利用者の観点からするとメリットの方が大きいといえるでしょう。というのも、これらの機体が就航していた路線には、より設備が充実した客室をもつモデルが多数投入されるためです。
JAL国内線の新体制に加わった「スゴイ奴」JALの国内線用777-200、777-300が2020年度まで担当していた羽田~千歳線、羽田~那覇線といった国内幹線には、2021年4月現在、A350-900やボーイング787のほか、本来国際線を担当していた777-200ERなどが、国内線機材としてデビューしています。
ボーイング777-200ERは退役した777-200の「航続距離延長型("E"xtended "R"ange)」にあたり、GE(ゼネラル・エレクトリック)製のエンジンを搭載。そのため、先述の運航停止措置を受けませんでした。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で本来の職務である国際線は大幅に減便。このことからか同社は、777-200ERについても「2020年末をもって一部を国内線に転用し、残りを退役させる」と2020年11月の決算会見で発表しています。

JALのボーイング777-200ER。写真は現在退役済みのJA704J(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。
この777-200ERは、見た目こそ従来機777-200とそっくりですが、2022年まで、国際線の客室内装をそのままに国内線へ定常投入されることになったのです。国際線用機材は長距離を飛ぶことから、客室仕様が豪華に作られています。ちなみに席数は、2クラス計312席がスタンダードなものです。
JALの777-200ER型機は、上位クラスの「ビジネスクラス」にフルフラットシートが搭載されていますが、国内線にビジネスクラスは設定されていないため、国内線上位クラス「クラスJ」扱いで乗ることが可能です。クラスJは当日アップグレード料金の場合、普通運賃との差額1000円で乗ることができるJALの独自クラスで、コストパフォーマンスに優れた人気席です。
普通席もなかなかスゴイ777-200ER A350と787も充実今回JAL国内線に導入されたボーイング777-200ER国際線仕様機の普通席は、JALのフラッグシップエコノミークラスがベースになっています。
このエコノミークラスは個人用モニターやUSBポート、電源コンセントを全席に備えるほか、快適性アップのため、座席配置を標準的なものより横1列減らすことで、1席あたりの幅を大きくしています。たとえば777シリーズの場合、国内線仕様機は3-4-3列ですが、国際線仕様機は3-4-2列です。
ちなみに、国内線新鋭機材として導入されたエアバスA350-900、ボーイング787は、座席周りを含めJAL最新の客室内装が導入されています。こちらは座席の広さこそ標準的な範囲ですが、機内モニターやUSBポート、電源コンセントを全席に備えています。

ボーイング777-200ERの普通席(2021年4月13日、乗りものニュース編集部撮影)。
もちろんこれまでのボーイング777-200、777-300の国内線仕様機も、クラスJにはレッグレストを備え、普通席も高品質な本革シートを採用するなどしていましたが、モニターや電源コンセント、USBポートなどはありませんでした。
なお今回の2タイプの退役によって、JALでもっとも多い座席数の飛行機は、A350-900の369席(391席バージョンもあり)となり、国内線仕様の777-300で見られたような500席クラスの旅客機は消滅しました。今回のJAL機の体制変更は、「ジャンボ」ことボーイング747導入から続いてきた大量輸送時代にひとつの区切りがついたと同時に、JAL機の快適性が年を追うごとに向上しているということを物語っているかもしれません。