名鉄名古屋本線の西枇杷島駅は、屋根もベンチもなく、狭く湾曲したホームだけが本線上にある変わった構造でしたが、2021年1月に拡幅工事が完了しました。駅の様子はどのように変化したのでしょうか。
名鉄名古屋駅から岐阜方面へ3駅目にある、名鉄名古屋本線の西枇杷島駅(愛知県清須市)は「極狭ホーム」で有名です。新幹線の車窓からも見える、「新月のように細く湾曲した、屋根もベンチも無い、ホームだけのホーム」は見た目のインパクトも十分でした。
しかしこの西枇杷島駅が2019年度からの改修工事によって、大きく様変わりしました。待避線を撤去するなどしてホームを拡幅し、駅舎も改築。2021年1月に新駅舎が供用開始されましたが、元の姿とは似ても似つかぬ風景になっています。
改修工事で大きく変化した西枇杷島駅(乗りものニュース編集部撮影)。
まず目に入るであろう大きな変化は、駅舎が上下線両側に設置されていることです。以前は、南側にあった駅舎と2本のホームとが構内踏切で結ばれていましたが、改修後は改札を出るまでに本線の線路を横断することがなくなりました。またこれにより、西枇杷島駅の名物であった「電車が到着する直前まで、駅舎からホームへ立ち入ることができない」という客扱いも解消されました。
新しいホームには屋根やベンチが設置され、「ごく普通の駅」な外観です。上下線どちらのホームも車椅子用のスロープが設置され、バリアフリー構造となっています。
ホームの有効長は、改修前と変わらず4両分です。
ところで、西枇杷島駅に停車する列車は少なく、日中は1時間に2~4本程度です。ラッシュ時には「普通→須ケ口から準急→名鉄名古屋から普通」のように、西枇杷島周辺の駅を通過するためだけに一部区間だけ優等列車に種別変更する普通もあるほど。ホームの簡素さも相まって、「都市部の秘境駅」のような雰囲気を醸し出していました。
しかし西枇杷島駅には、雰囲気や利用者数では見えてこない、重要な役割があります。それは、すぐ東隣にある「枇杷島分岐点」にある信号機やポイントの管理です。名古屋本線と犬山線が分岐・合流し、短絡線を含めてデルタ線を形成する交通の要衝のため、担当係員を配置する目的もあって、戦後の1949(昭和24)年に駅として開業したのです(戦前は枇杷島橋という休止駅もあり)。この詰所は駅舎とともに戦後以来の姿のままでしたが、新たな建屋に更新されました。

改修工事前後における西枇杷島駅の配線図(乗りものニュース編集部作成)。
ちなみに、枇杷島分岐点にあるデルタ線のうち、名古屋本線と犬山線とを結ぶ短絡線を通過する定期列車は今は無く、回送列車がごくまれに使用するのみとなっています。この線路は西枇杷島駅の改修後も残されましたが、駅北側の駅舎と名古屋方面とのホームの間を分断する形になっており、名古屋方面の利用者は構内踏切を渡ってホームへ向かいます。
戦後すぐから令和時代まで生き残った名鉄の「珍風景」の面影は、この構内踏切にわずかに残っているように感じられます。