東京2020オリンピック開催にあたり、東北新幹線での「夜行新幹線」運行が話題になっていますが、過去にも同様の運行がありました。また「夜行新幹線」の定期運行が検討され、「寝台新幹線車両」が作られたこともありました。
JR東日本が2021年6月30日(水)、東京2020オリンピック開催にともなう臨時列車について発表。仙台発0時45分、東京着4時20分といった「夜行新幹線」の運行があきらかになり、ネット上などで話題になりました。
新幹線では基本的に、深夜は線路のメンテナンス時間であり、騒音などの課題もあることから、0時から6時までは営業列車を運行しません(異常時の遅延は別として)。
東北新幹線のE5系(画像:写真AC)。
とはいえ、毎日全区間でメンテナンスしているわけではないほか、騒音などに配慮することで「夜行新幹線」の運行は不可能ではなく、2002年のサッカー日韓ワールドカップ開催時などに行われています。
ちなみにワールドカップの際、東海道新幹線の掛川から東京、名古屋まで夜行運転された列車の名は「のぞみ」「ひかり」「こだま」ではなく、「特別」でした。
また今回、東北新幹線で運行される「夜行新幹線」は騒音に配慮し、大宮~盛岡間が最高時速160km/h(通常320km/h)、東京~大宮間が70km/h(通常130km/h)での運転になるそうです。
かつて検討された「夜行新幹線」の定期運行 「新幹線の寝台車」も実在したが…かつて、「夜行新幹線」の定期運行が検討されたこともあります。
東海道新幹線が東京~新大阪間で1964(昭和39)年に開業したのち、山陽新幹線が博多まで建設されることになると、夜行列車の需要が想定されました。
ただ深夜帯は、線路のメンテナンスが必要です。
そこで考えられたのが、博多行きと東京行きの夜行新幹線が深夜にすれ違うことになる、新大阪~岡山間での「片側通行」です。
いわば、道路工事における片側交互通行と同じ。

線路がもう1本増やせるようになっている山陽新幹線姫路駅(画像:写真AC)。
そのため新大阪~岡山間では、多くの箇所で上り線と下り線の行き来ができるようポイントが設置されたほか、駅での対向列車待ちなどを夜行新幹線がしやすいよう、姫路と相生は線路の増設を考慮して設置されました。
そして1973(昭和48)年には、車内に寝台設備を備えた「961形試作電車」が製造され、1975(昭和50)年に山陽新幹線は博多まで開業。しかし「夜行新幹線」の定期運行は、実現しませんでした。
運行による騒音、振動の発生が沿線住民の理解を得ることが難しかったことなどが、その理由とされています。この1975年頃は、実際に新幹線の騒音や振動に対する訴訟が起きていた時期です。