航空機を安全かつ円滑に飛ばすコツのひとつに「天気を読む」というのがあります。そのための専門部隊として航空自衛隊には気象隊があり、全国各地に配置しています。
航空機と天気は切っても切り離せない関係であるのは、日本の空を守っている航空自衛隊も同じ。このため、航空自衛隊には気象予報と観測を専門とする部隊が存在します。
全国の航空自衛隊基地(分屯基地含む)70か所以上のうち、約20か所に航空機を運用する部隊が配置されています。航空自衛隊が運用する航空機は、固定翼機や回転翼機、さらには気象レーダーを機体に装備していないような小型の練習機などもあるため、それらが安全に飛行できるよう、そういった基地にはもれなく気象情報を専門に扱う部隊が所在しているのです。その任務の一端を、岐阜県各務原(かかみがはら)市にある航空自衛隊岐阜基地で見てきました。
岐阜基地の管制塔。赤い矢印で指したところが観測スペース(2021年4月、柘植優介撮影)。
取材した岐阜基地所在の「岐阜気象隊」は、岐阜基地周辺の気象観測や予報を実施・発表している部隊です。
岐阜基地には2700mの滑走路があり、主に航空機本体や部品の調達、保管、補給、整備、を行う第2補給処とともに、航空自衛隊が保有する様々な航空機の試験などを行う飛行開発実験団が所在します。また、防衛省外局である防衛装備庁の岐阜試験場もあり、ここでも各種航空機の試験を行っています。
業務や任務の一環で、平素より様々な航空機が岐阜基地を発着していることから、それら航空機のパイロットに対して岐阜気象隊が気象情報の提供を行っています。
取材時は2名が気象観測を行い、そのデータをもとに1名が気象予報を作成、そして1名がそれら気象情報をパイロットなどに提供するための資料としてまとめていました。岐阜気象隊長の説明によると、高所から注意深く空を実際に見ることで、雲の量や高さ、どれぐらい遠くまで見えるか(視程)をチェックしているといいます。

目視で気象観測する岐阜気象隊の隊員(2021年4月、柘植優介撮影)。
このように気象隊ではコンピューター上のデータだけでなく、隊員が実際に観測した情報も盛り込んで、精度の高い気象情報を出せるように取り組んでいました。そのために設けられている観測スペースが、管制塔の管制室下にあります。
地上6階の高さに相当するこのスペースは、360度全方位がガラス張りになっており、季節や天候に関係なく気象観測が行えるようになっています。庁舎の屋上だと、どうしても見渡せる方角や視程に限りがあるそうで、全方位を遠方まで見通せる場所として使っていました。
ちなみに、岐阜気象隊の隊員のなかには、国家資格を持つ「気象予報士」もいます。防衛省・自衛隊も気象庁が定める「気象業務法」に基づき、気象予報を担当する隊員については資格を取得する必要があるとのことでした。
気象予報士試験の合格率は約5%前後と、一般的に資格取得の難易度は高いとされています。そんな気象予報士の有資格者が複数いる気象隊は、まさしくプロフェッショナルの集団だと感じました。
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