2021年9月・10月に運行を開始する一般路線バスの新路線をまとめました。コロナ禍の中で路線休止・廃止が相次ぐなか、既存路線を再編し新規路線を開設する動きも。

「バスが中心市街地へ乗り入れる」という地域の常識が覆される事例もあります。

市内中心部の「大通り」乗り入れ、やめます!

 2021年9月・10月に運行を開始するバスの新路線をまとめました。この記事では一般路線バスを対象に取り上げます。

関東自動車:宇都宮駅東口~岡本駅西口・和久線ほか(栃木県

・運行区間:宇都宮駅東口~御幸ヶ原元町~上野団地~岡本駅西口・和久
(10月1日〈金〉運行開始)

 宇都宮市を中心にバス路線を運行する関東自動車は、2018年に東野(とうや)交通を統合したのち、旧・東野交通の路線・設備を中心に整理を進めてきました。今回大幅な再編が行われる「東野平出営業所」(旧・東野交通本社)管内では、同じ方向へ向かう路線がいくつも存在し、それぞれ本数が1日数本にとどまるという状態が続いていました。

 今回、ダイヤ改正で9路線の廃止とともに新設される宇都宮駅東口~岡本駅西口・和久線は、始発を既存路線の宇都宮東武(東武宇都宮駅・百貨店併設)からJR宇都宮駅の東口に移し、渋滞が激しい競輪場通り・竹林地区を通過する必要がある「大通り」乗り入れ(JR宇都宮駅西口~東武宇都宮駅)を解消することで、宇都宮駅への所要時間を一気に30分以上短縮。本数は、運行を集約することによりおおむね1時間2本を確保します。

 宇都宮駅東口には2023年春に「芳賀・宇都宮ライトレール」の開業が予定されているため、交通拠点としての東口の重要性はさらに増すのではないでしょうか。一方、旧東野交通の路線は旧道を経由するものも多く、今後も整理の対象となるケースが続くかもしれません。

東武バスセントラル:社会実験バス 花畑桑袋団地~六町駅(東京都

・運行区間:六町駅~元淵江公園~文教大学~花畑桑袋団地
(10月1日〈金〉運行開始)

2021年秋のバス新路線【一般路線バス】 「脱・中心市街地」...の画像はこちら >>

花畑桑袋団地~六町駅の社会実験バスは小型車両で運行(東武バス公式Twitterより)。

 東京都足立区の北端に位置する「花畑桑袋団地」は、区内の東武スカイツリーライン竹ノ塚駅や西新井駅へバスが通じているものの、それらより距離的にも近いつくばエクスプレスの六町駅には、六18系統が1日に1往復のみでした。今回新設される路線は、六18よりも遠回りする形で、保木間地区・淵江地区の中でも現状のバス路線でカバーされていない地域や、2021年に開校した「文教大学・東京あだちキャンパス」(湘南キャンパスからの移転)を経由するなど、足立区内での移動に便宜が図られています。

 花畑地区の公団住宅は徐々にリノベーションが進んでおり、新しい住民も段々と増えつつあります。しかし路線の維持には収支率24%、1便あたり乗車5人(シルバーパスを除く)という目標が設定され、最大2年の実証運行での目標達成が求められています。この2年間の運行にかかる経費は、足立区が負担します。

まず実証実験→「本設」 ただしハードル高い?

 東京では他にも意欲的な新路線が登場しました。

京王バス:052系統(東京都)

・運行区間:渋谷駅~新宿駅西口~新宿御苑前駅~四谷一丁目~大手町(グランキューブ)~新橋駅(渋谷行きは大手町を経由せず、新宿御苑周辺も別ルート)

 昭和40年代中盤までは永福町営業所を拠点に「東京線」(東京駅~武蔵境駅)や「新橋線」(新橋駅~永福町)などのバス路線を展開していた京王バスが、数十年ぶりに山手線の内側へ戻ってきます(委託を受けている新宿区のコミュニティバス「WEバス」を除く)。

 四谷一丁目から東側はほとんど停車することなく、新橋方面で大手町に停車するのみですが、定期観光バスの定番ルートである皇居内の代官小路や、箱根駅伝のコースとしてもお馴染みの日比谷通りなどを経由します。水素を用いる燃料電池バス「SORA」での運行で、車内も静か。座席に座ったまま、車窓から街並みや桜を眺めるのにちょうど良い観光路線といえるのではないでしょうか。

2021年秋のバス新路線【一般路線バス】 「脱・中心市街地」がトレンド? 地域の常識を覆す新路線も

京王バスの燃料電池バス「SORA」。山手線横断の新路線へ投入する(画像:京王バス)。

西東京バス:八王子市中心市街地循環バス(東京都)

・運行区間:京王八王子駅~みずき通り~沢淵~京王八王子駅~JR八王子駅北口
(9月21日〈火〉運行開始)

 JR・京王八王子駅エリアから北西の住宅街を経由し、中心部を巡ってまたJR八王子駅に戻る、1周23~26分の循環バスが運行を開始しました。コロナ禍で利用者が減少するなか、西東京バスの一般路線バスとしては9年ぶりとなる新設路線です。

 この路線が循環するのは半径1km少々のエリアですが、八王子市中心部のなかでも人口増が続く地域です。駅から新興住宅街→集客施設の集積地を回り、また駅に戻るという形態をとります。

中心市街地スルー路線を一挙2路線新設

 中心市街地スルーな新路線は東海地方でも。

岐阜バス:笠松県庁線・モレラ山県線(岐阜県

・運行区間:笠松駅~岐阜保健大学南~西岐阜駅(笠松県庁線)、モレラ岐阜~長良北町~山県バスターミナル(モレラ山県線)
(笠松県庁線は10月1日〈金〉、モレラ山県線は10月2日〈土〉運行開始)

 岐阜市内の路線バスのほとんどはJR岐阜駅・名鉄岐阜駅エリアに集中しますが、今回新設される笠松県庁線は中心部に乗り入れず、岐阜市街地のはずれを結ぶような路線です。

 郊外路線となるモレラ山県線も岐阜市街地は経由せず、2021年6月に岐阜市北側の山県市へ新設された山県バスターミナルと、樽見鉄道の駅もある商業施設「モレラ岐阜」(本巣市)を直結しますが、土休日のみ運行の路線です。沿線には岐阜大学もあります。時間帯によっては混み合う名鉄岐阜駅発のバスに次ぐ新しい選択肢となるかもしれません。

 これら新路線は、既存路線のバス停や、路線休止によって使用されなくなっていたバス停どうしをつないで形成されています。いずれも、「中心部・渋滞箇所を経由しない」という実験的な取り組みとも言えるのではないでしょうか。

2021年秋のバス新路線【一般路線バス】 「脱・中心市街地」がトレンド? 地域の常識を覆す新路線も

岐阜バスの車両(画像:岐阜バス)。

西鉄バス北九州:東谷~徳力線(福岡県

運行区間:中谷~頂吉越ほか
(10月1日〈金〉運行開始)

 北九州市中心部の小倉・砂津から田川市の後藤寺まで直通していた「田川快速」は、2017(平成29)年に市街地南部の中谷発着に短縮され、中谷~後藤寺間は2時間に1本程度の運行頻度となるローカルバスとして存続していました。今回は、この区間の路線を廃止し、路線の北半分にあたる中谷から頂吉越(かぐめごし。

香春町との境に近い)まで、小型バスによる新路線が開設されます。

 同時に、博多~後藤時間で運行されている「筑豊特急」も香春まで延伸され、廃止区間のうち金辺(きべ)峠越え区間以外がカバーされることになります。しかし今回の路線新設・延伸にはいずれも北九州市など自治体からの補助があり、本格運行への移行は1年間の実証実験での利用実績次第です。

※一部修正しました(10月9日15時40分)。

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