自動車税制の見直しを促す具体案を東京都の税制調査会がまとめました。都が国などへ働きかけていくための基本資料となるものですが、その内容は、脱炭素時代へ向け現状の税制を根本から覆すものです。
東京都知事の諮問機関である都税制調査会が2021年10月22日(金)、自動車税をはじめとする税制の在り方を取りまとめた答申を発表しました。今後、都はこの答申に基づき国などへ税制の改正を働きかけていくことになります。
自動車関連の税制は、世界的に見てかなり複雑とも指摘されている。写真はイメージ(画像:写真AC)。
このうち自動車税関連は、都税制調査会の分科会が5年にわたり検討してきた結果が取りまとめられています。いわゆるCASE(コネクテッド/自動化/シェアリング/電動化)や脱炭素への動きなど、自動車業界の変革を捉え、現行の税制度について根底から見直しを促す内容です。税を徴収する側である自治体が今後の税の在り方を示した点でも注目され、都税制調査会も「ここまで明文化されるのは全国でも初めてだと思う」と話すほどです。
その骨子は次のとおり。車体課税については、「CO2(二酸化炭素)排出量の要素(基準)を取り入れ」、中長期的には「課税標準を車体重量または走行距離に、あるいはCO2排出量基準との組合せとする方法を検討」すべきとしています。
また、これにより積極的に自動車関連税制を「環境税制として位置付けていくことが極めて重要であり、速やかに導入を検討すべき」だといいます。
背景には、これから自動車関連の税収がさらに減少していくのに対し、インフラ整備に係る支出は増えていく、という懸念があります。
すでに道路整備費が税収を上回る自動車四税(自動車税、自動車取得税、軽油引取税、軽自動車税)による税収は、2000(平成12)年度は約3.6兆円、税収総額に占める割合は約10%でした。
というのも、現在の自動車税制が「内燃の自動車を所有すること」を前提としているためです。
単純に考えても、低排気量で軽いクルマが増えるほど税収は下がり、今後EV(電気自動車)などが普及すれば、さらなる減収が見込まれます。

新東名の最高速度120km/h引き上げ区間。こうした高速化への対応にもコストがかかる(中島洋平撮影)。
またシェアリングの拡大や自動運転技術の進展は、「自動車の稼働率を高める」一方で、保有車両の規模縮小を促し、その影響で車体課税は減収すると見込まれているそう。すなわち、新しい技術やサービスに対応した道路整備のコストばかりが膨らんでいく、というわけです。
すでに2016(平成28)年度には、自動車関連税収3.4兆円に対し、道路の新設・維持補修などの費用が約4.1兆円、交通安全対策費が約1.1兆円と、自動車に係る行政需要が、自動車関連税収を大きく上回っているといいます。
新たな課税基準は?では、新しい課税基準とは、どのようなものになるでしょうか。
答申では、国土交通省の自動車燃費一覧において、燃費だけでなく1km走行あたりのCO2排出量も車種ごとに明示されていることから、課税システムの構築も可能ではないか、としています。
また、道路に影響を与える「車体重量」を課税指標とした場合は、「将来新たな動力源を用いた自動車が登場した場合にも対応できることや、課税指標が共通するという観点からもシンプルで分かりやすい」とのこと。
一方で、「走行距離」を指標とした場合は、公平制こそ担保されるものの、地方在住者や事業者ほど税が重くなりやすいなど、いくつもの課題を含有するといいます。

都税制調査会が提示した自動車税見直しイメージ。CO2排出量基準の早期導入を求めている(画像:東京都税制調査会)。
答申では自動車関連税の見直しを、「脱炭素社会実現に向けた取組は、一刻の猶予も許されない時期に来ていることから、速やかに導入を検討すべきである」としています。
「法律改正も伴うため、1年や2年といったレベルの話ではないと思われますが、都知事も都内で新車販売される乗用車を2030年までに『ガソリン車ゼロ』とする方針を表明しており、答申もこれを見据えています」(東京都税制調査会)
※一部修正しました(10月29日11時10分)。