福井県の景勝地「三方五湖」に、観光地をむすぶ路線バスが運行中。12月下旬までの実証運行ですが、タクシー以外で駅からの公共交通による移動手段がこれまで無かったことから、期待が集まっています。
福井県が2021年11月3日から、美浜町・若狭町にまたがる景勝地「三方五湖」へのアクセスとして、周遊バス「ゴコイチバス」の実証運行を行っています。12月26日まで、土休日の運行です。
JR駅と三方五湖の主要地をむすぶ「ゴコイチバス」(乗りものニュース編集部撮影)。
三方五湖は福井県嶺南地域の若狭湾近くにある5つの湖の総称です。これまで三方五湖の観光スポットへは、公共交通機関によるアクセス手段が無く、駅からタクシーもしくはレンタカーを利用する必要がありました。今回の取り組みは、北陸新幹線の敦賀開業を見据え、敦賀から若狭地域への周遊を促進する施策として行われます。
「ゴコイチバス」は1日9便。おおむね1時間~1時間半間隔の運行で、うち3便はJR敦賀駅発着、6便はJR小浜線の美浜駅発着です。敦賀駅発着便は大型観光バス、美浜駅発着便はコミュニティバスなどに使用される小型バスにより運行されます。
路線バスながら風光明媚な車窓美浜駅11時55分発。敦賀から来たJR小浜線は11時40分に到着し、駅を出た乗客のうち6名がバスに乗り込みました。
バスの車内放送では、地元の美方高校の学生により、名産品や三方五湖の魅力について音声案内が行われます。

JR駅と三方五湖の主要地をむすぶ「ゴコイチバス」(乗りものニュース編集部撮影)。
バスはレインボーラインに入ると、湖と湖の間を縫うように走行。日向の料金所を超えると一気に標高が上がり、小型バスはエンジンを唸らせて尾根を駆け上がっていきます。
しばらくして、バスは小さな駐車スペースにしばし停車。ここは湖の水位を調整するためのトンネル「嵯峨隧道」に差し掛かる地点で、トンネル自体は真下にあるため見えませんが、日向湖の入り江と漁村風景をパノラマで楽しむことができます。
バスはそこからさらに標高を上げ、車窓が空に包まれていくような気分になっていきます。標高300mを超えたところで、山頂公園展望台の麓の駐車場へ到着。美浜駅からの乗客は全員が降車し、リフトもしくはケーブル(スロープカー)で山頂公園へ向かっていました。山頂公園を出て三方駅へ向かう麓の道中では、往路と打って変わって、車窓は湖面を間近に臨む風景となります。
運行間隔は1時間程度のため、山頂公園や縄文ロマンパークなど各地の滞在時間を細かく配分できそうです。もっとも乗り放題乗車券は有効期限が2日間のため、旅の日程に余裕があればじっくりと滞在してもいいかもしれません。
敦賀駅発着の13時台の便は福井鉄道の観光バス車両で、最大20名近くの乗客があり、半数近くが縄文ロマンパークからの乗車でした。そのうち50代の女性はニュースでバスの存在を知ったそうで、9時台の敦賀発の便で山頂公園入りし、次の便で縄文ロマンパークへ。敦賀着が15時前なので、そのまま福井市内へ向かうとのこと。タクシーも便利だが、バスがあると旅の計画が立てやすくなる、と話していました。
なお、レインボーラインは有料道路です(普通車の通行料は1040円)が、管理者である福井県道路公社の解散に伴い、2022年10月の無料開放に向けて調整が行われていますが、無料化による訪問客の増加にも期待がかかっています。また北陸新幹線の敦賀延伸を2024年春に控え、福井県嶺南地域は今後ますます熱視線が集まることとなりそうです。