成田空港では現在、3本目の滑走路建設に向け、さまざまな動きが見られます。ただこの新滑走路、他の滑走路の延長線上という、通常では考えられない場所に設置されます。
成田空港に3本目の滑走路を建設する動きが、具体化しつつあります。
国土交通省航空局(CAB)が2022年度の予算概算要求についての説明資料を2021年9月に公表しており、この中に、成田国際空港に関する記載があります。ここでは「航空需要の回復・増大への的確な対応による活力ある日本経済の実現」とあり、まず「羽田空港の現状機能強化」が触れられ、ついで成田空港の議題へ続きます。
成田空港の事業概要では「B滑走路の延伸及びC滑走路の新設等の整備に対する支援を行い、更なる機能強化として、B滑走路の延伸及びC滑走路の新設を実施し、令和10年度末の完成を目指して整備を進める」とあります。
成田空港を離陸するユナイテッド航空機(乗りものニュース編集部撮影)。
2021年現在の成田空港は、4000mのA滑走路とそれに平行する2500mのB滑走路の2本で運用されてます。3本目の滑走路を建設する計画は、正直なところ今に始まった話ではありません。成田空港は供用開始直後から現在の2本の滑走路に加え、A滑走路に交差するような形のC滑走路を将来つくる計画でした。
ただ、今回のプランで打ち出されたC滑走路は、念願だった横風用の斜め向きのものではなく、A、B滑走路と同じ向きに3500mのものをつくる、というものなのです。このC滑走路建設を含む、同空港の滑走路レイアウトの変更は、すでに地元の合意を取り付けており、同空港を運営するNAA(成田国際空港)に変更許可が出ています。
なぜ、このようなことが起こっているのでしょうか。
成田空港はそもそも、処理能力の限界が想定された羽田空港を補完するため、設置が計画されました。新空港建設にあたって、滑走路をどのように配置するかということは最重要な課題のひとつです。
成田空港の計画当時は、国際線の大型機材である「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747が安全に離着陸でき、なおかつ将来的により大型の機材が就航できる余地を残しつつ、できれば超音速旅客機も就航可能な滑走路の長さを検討することになりました。
また滑走路が1本では、何らかの支障が発生した際に、空港機能が止まります。そのため、機能を補完するサブの滑走路として、少し短めの平行滑走路を配置するのがベターでしょう。ただ成田空港では、反対運動をはじめとする諸事情により、A滑走路1本でとりあえず1978(昭和53)年に開港し、サブ的役割を担うB滑走路は2002(平成16)年に2120mで使用を開始したのち、2009(平成21)年に2500mまで延長されました。

現在の成田空港の滑走路レイアウト(国土地理院の地図を加工)。
そして同空港で長年のテーマとなってきたのが、いわゆる「横風用滑走路」です。
滑走路の方角は、まず空港周辺における年間の風向きの傾向を調べ、検討を進めます。成田空港の場合は、風向きがほぼ南北方向であるという統計結果から、ほぼ南北を貫いている現在の滑走路方向が決定されたようです。
ただし、気象は変化するものですから、当然風向きも年中固定されているわけではありません。
ちなみに2021年現在、国内でこの条件を満たしている空港は、羽田のみとなっています。
新滑走路で30万→50万まで発着回数増加ナゼ?成田空港の場合は、40年以上の運用実績をもとに、横風用滑走路の設置よりも、離着陸回数を年間50万回に増やすことを前提として、既存の滑走路2本と並行するC滑走路の新設を優先したものと思われます。
ただ、B滑走路とC滑走路は並行するというより、ほとんど一直線上にあり、とてもこの2本から同時に離着陸できるようなレイアウトではありません。どうやって発着回数を増やすのでしょうか。

成田空港の拡張計画(画像:国土交通省)。
前出の通り国土交通省は、成田空港で新滑走路を作ることで発着回数が年30万回から50万回まで増やせるとしています。この根拠は「スライド運用」というルールで、実装すれば同空港の実質的な運用時間を増やすことができるとしています。
スライド運用では、深夜早朝の時間帯にかけB滑走路と新C滑走路を“早番”と“遅番”で使い分け、それぞれの滑走路で時間をズラして7時間の静穏時間を確保します。
なおすでに、新C滑走路の設置には地元との調整も住んでいるとのことですが、歴史的に見ると、用地買収には時間を要すると考えるのが妥当でしょう。
現代の大きな空港は海上につくるのがトレンドですが、成田は、そのなかでも貴重な陸上の大空港です。これにはさまざまな利点もあります。今後も、成田空港が発展を遂げることを祈りたいものです。