横浜の名物駅弁「シウマイ弁当」とコラボした「関西シウマイ弁当」が姫路駅で発売。製造・販売は姫路駅弁を手掛ける「まねき食品」です。

「シウマイ弁当」と一見同じように見えて、「まねき」「関西」ならではのこだわりが詰まっていました。

関西版「シウマイ弁当」 横浜・姫路、駅弁業者が夢のコラボ

 横浜を拠点に、駅弁のジャンルに止まらない展開を続ける「崎陽軒」の看板商品といえば、何といっても「シウマイ弁当」ですが、2021年11月26日(金)、「関西シウマイ弁当」が発売されました。場所はJR姫路駅の新幹線改札前売店。崎陽軒と姫路駅弁「まねき食品」とのコラボレーションによって開発された商品です。

 1954(昭和29)年に発売され、いまも1日2万5000万食が売れるシウマイ弁当が他業者とコラボするのは初めてで、「あの『シウマイ弁当』が!」という驚きが広がっています。

「関西シウマイ弁当」見参! 崎陽軒×姫路まねき 空前絶後の東...の画像はこちら >>

関西シウマイ弁当(宮武和多哉撮影)。

 まずは1日100個限定、2回販売(午前9時に70個、14時に30個)で、初日からその出足は順調だそうです。最初の週末となった11月27日(土)は、発売時間前からできた50人以上の行列は途切れることなく、9時19分には早々に完売。購入した人のなかには、新幹線で遠方から来られた方もいれば、近所の代表で購入上限の5個を買いに来た方のほか、駅員さんや清掃員の方も行列に並んでおり、注目のほどが窺えます。

「シウマイ弁当」と「関西シウマイ弁当」は、パッケージのデザインも似ています。しかしよく見ると、シウマイ弁当は黄色に竜のイラスト、関西シウマイ弁当はカーキ色に虎のイラスト。また水晶玉の周りに書かれている観光地も、関西シウマイ弁当では姫路城や太陽の塔(大阪)、京都の“五山送り火“、岡山の桃太郎など。

近畿地方と中国地方を結ぶ要衝・姫路だけあって、描かれている場所が広範囲に及びます。

 また関西シウマイ弁当は、経木の容器を使用し、フタで閉じているため掛け紙・かけひもはありません。シウマイ弁当は横浜バージョンが掛け紙とかけひもで止めるタイプ、東京ならびに関東全域バージョンが被せフタ・マジックテープで止めるタイプですが、関西シウマイ弁当は後者に近いスタイルです。

 蓋を開けてみると、シウマイに俵型のごはんの盛り付けはシウマイ弁当と似ています。しかし、そこには駅弁だけでなく駅そばも展開してきた「まねき」ならではのこだわりが、驚くほど詰まっているのです。

いざ実食! まねきの部長さんに解説してもらったぞ!

 まねき食品株式会社 営業一部部長の岩本健司さんにコメントを交えながら、「関西シウマイ弁当」を実食リポートしてみます。

●シウマイ

「見た目は崎陽軒のシウマイと同じですが、昆布だし・鰹節で味付けに関西らしさを出しています」(まねき食品 岩本部長)

 2.5cm×2.5cm、高さ2cmというシウマイのおおよその寸法は確かに同じですが、噛んだ瞬間にふわっと広がるだしの香りに関西の味付けを感じます。崎陽軒のシウマイは干しホタテ貝柱で香ばしさを出していますが、関西ではだしの香りと旨みがその役割を担っています。

 また従来のシウマイと違い、グリーンピースではなくレンコンを練り込んでいるため、今までにない「シャキッ!」とした食感に驚かされました。

●ごはん(俵飯)

「ごはんに関しては、崎陽軒さんがとてもこだわった部分です。幾度となくやりとりを繰り返し、水分量の調整で最適な状態に仕上げました」(まねき食品 岩本部長)

 シウマイだけでなく、冷めても美味しくいただけるごはんも、弁当の重要な要素です。水分を適度に吸う経木の容器を使用するだけでなく、お米の“チューニング”とも言える、炊飯時の水分の管理も重要で、崎陽軒では独自の「蒸気炊飯」(木桶に高温の蒸気を流しこんで炊き上げる)によって、少ない水分で食感と旨みを最大限に引き出すことに成功しています。

「関西シウマイ弁当」見参! 崎陽軒×姫路まねき 空前絶後の東西コラボ シウマイの味も関西風

関西シウマイ弁当のポスター。この前で記念撮影をする人までいた(宮武和多哉撮影)。

 対してまねき食品は、近年でも「幕の内辨當」(明治22年に発売した幕の内弁当の復刻版)などで経木容器向けのご飯を炊いた経験もあり、数十種類にも及ぶ駅弁の中でも、和洋を問わず幅広く最適なご飯を炊き上げている印象があります。おそらく崎陽軒が出したであろう高い水準の要求に応えられたのは「“まねき”だから」ではないでしょうか。

 なお、ごはんのトッピングの変更点として、黒胡麻は白胡麻に、青梅干しは赤梅干しに変わっています。

「おかず」も似ているようでかなり違う!

●おかず

「おかずの寸法や配列は変えていませんが、地元食材を意識した材料選びや味付けで関西らしさを出しています」(まねき食品 岩本部長)

 シウマイ以外のおかずも東西で似ているものの、唐揚げは姫路に程近いたつの市「ヒガシマル醤油」のあごだしを使用。玉子焼きもだしの風味が引き立ち、ふんわり柔らかい仕上げになっています。またタケノコも「シウマイ弁当」の角切りではなく、長さ2.5cmほどの繊維に沿った拍子切りに。かつ姫路駅名物「えきそば」のだしで煮込んでいます。食感だけでなく、しっかり染みた駅そばのだしを噛むほどに味わえるのは嬉しいところです。

 他にも、マグロ照り焼きは「サバの幽庵焼き(柚子風味)」に、切り昆布と千切り生姜は「レンコン甘酢漬け・柴漬け」に、あんずは「黒花豆煮」に。関西シウマイ弁当の味付けは全体的にあっさりと、だしの香りもあり、シウマイ弁当と違った楽しみ方ができます。

「関西シウマイ弁当」見参! 崎陽軒×姫路まねき 空前絶後の東西コラボ シウマイの味も関西風

姫路駅のえきそば。関西シウマイ弁当のタケノコはこのだしで煮込んでいる(宮武和多哉撮影)。

なぜ作った? まねき食品のシンプルな動機

 今回の異例コラボが実現した背景には、新型コロナウイルスによる、駅弁業者の全国的な売り上げの落ち込みがあります。まねき食品も例外ではなく、売り上げは前年の7割減という壊滅的な状況が続いたそうです。

 そうしたなか、「美味しいもので人々を元気に」というとてもシンプルな動機で、同社は2020年3月に崎陽軒へコラボレーションを申し入れ、密かに商品の開発を進めていたとか。

 なお、このコロナ禍の中でも、まねき食品は野外テントで「えきそば」や駅弁を販売するドライブスルーとイートインを本社に設置し、姫路の人々に商品を提供し続けました。今回の「関西シウマイ弁当」に並ぶ人々のなかには、駅の入場券を買って来る人も見られ、「また“まねき”が何か面白そうなことをやっている」だけで、いそいそと地域の人々が集まる様子に、100年以上この地で営業を続けてきた同社の強みを見た気がします。

 まねき食品によると、今後は、関西シウマイ弁当の販売箇所や数量を徐々に増やしていきたいということです。また全国の駅弁フェアなどへの出店も期待されますが、この弁当は添加物などを使用していないため、消費期限は製造から7時間とかなり短め。配送可能な地域も限られていますが、将来的には、距離的に近い大阪のフェアなどへの出品も考えているそうです。

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