東京の奥多摩にある御岳山ケーブルカーは、JR青梅線の御嶽駅からバスで10分ほどの場所にあります。交通系ICカードが使えるなど「都会の電車」感もあるここは、御岳山登山の足でもあり地域の生活路線でもあります。
東京都の奥多摩にある御岳山。その山頂には、紀元前90年ごろに崇神天皇が創建した武蔵御嶽神社があります。
御岳山は標高929mの山頂近くで、24軒の宿坊や10軒の商店が営業し、150人ほどが暮らす「天空のまち」と言えるような場所です。その御師集落の生活維持や、神社参拝客の大切な足となるのが、御岳登山鉄道(通称:御岳山ケーブル)です。
御岳山ケーブルカー(2021年10月、安藤昌季撮影)。
JR新宿駅から、青梅線直通の「ホリデー快速おくたま」号(土日祝のみ運行)に1時間20分ほど乗車すると、御嶽駅(青梅市)に到着します。ここから西東京バスに10分ほど乗車すると「ケーブル下停留所」に到着。さらに徒歩で5分ほど向かった先に、御岳山ケーブルカーの始発・滝本駅があります。
ケーブルカーの線路は急勾配の鉄橋に敷かれており、天空に真っ直ぐ伸びる様子は、まるでアニメ『銀河鉄道999』の銀河鉄道のよう。滝本駅は、その鉄橋の下にあります。
山中の駅ですが、どことなく「都会の電車」を感じさせる要素がありました。改札ではPASMOやSuicaなどの交通系ICカードが使えるためタッチパネルが設置されています。
またケーブルカーの前頭部には「KEIO」のロゴが。そう、御岳山ケーブルカーを運営するのは、大手私鉄の京王グループなのです。車内は、固定式クロスシートが階段状に設置されていましたが、京王でクロスシートを備えるのは有料座席指定列車「京王ライナー」だけなので、贅沢な気分です。
「都会の電車っぽさ」…だってパンタグラフあるもんもうひとつ特徴的なのが、車体上にパンタグラフがある点です。ケーブルカーは一般的に、その名の通り地面を這わせた「ケーブル」が車体を引っ張るため、直接的に電力を必要としないはずですが……。
御岳山ケーブルカーが架線から電気を得ているのは、車内照明などのため。家庭用コンセントと同じ100ポルトの電気が流れています(普通鉄道の架線は運行用で600~2万5000ボルト)。電車のような見た目ですが、動力が電気の「電車」ではないのがまた面白いところです。

ケーブルカー車両としては大変珍しく、車体上にパンタグラフがある(2021年10月、安藤昌季撮影)。
さて、車内に犬を連れた乗客がグループで乗り込んできました。しかもケージに入れずにです。
車内には最前部と最後部に犬用のスペースがあります。武蔵御嶽神社に大口真神(おいぬ様)が祀られている関係で、ここには犬を連れた参拝客が多く訪れます。そのため御岳山ケーブルカーの計らいで、ケージなしで犬を乗せられるのです。
標高407mの滝本駅を出発すると、ケーブルカーは大鉄橋を真っ直ぐ登って行きます。車内から見ても大迫力です。
終点駅からリフトでさらなる高みへ鉄橋を登り終えてしばらく行くと、列車交換設備がありました。その脇に「スカイツリー六三四m」の標識を発見。そう、この地点の標高は東京スカイツリーと同じなのです。
ケーブルカーは総距離1107mを6分で登り終え、終点の御岳山駅に到着しました。滝本駅からの高低差は423.6mもあり、御岳山駅は標高831mです。駅には土産物屋やお洒落な喫茶店も併設されていました。
御岳山駅のすぐ近くに、大展望台へと向かうリフト(土日祝のみ営業)の御岳平駅があります。スキーのリフトとほぼ同じつくりで、1人乗りの座席が自動的に回ります。

ケーブルカーの終点 御岳山駅からさらに大展望台へ向かうリフト(2021年10月、安藤昌季撮影)。
5分ほど登ると、終点の大展望台駅へ。その標高は881mです。以前は駅舎にはギャラリースペースがありました。
ここから山頂の武蔵御嶽神社を目指します。山頂まで集落が続く関係で道が舗装され、楽な登山です。徒歩20分ほどで到着しました。山頂は神社だけでなく、宝物殿や土産物屋、食堂、ラジウム泉の立ち寄り湯ができる宿もあります。
御岳山は都心からの交通の便もよいため、気軽な登山体験ができます。