東京メトロ南北線が相鉄線まで乗り入れることが発表されました。現行の東急、埼玉高速鉄道との直通に加え、鉄道ネットワーク拡大の一翼を担う同路線ですが、始まりは都区部北部を、行ったり来たりするだけの路線でした。
埼玉高速鉄道および東急目黒線と相互直通運転を行う東京メトロ南北線が、相鉄線まで乗り入れることが2022年1月末に発表されました。約30年前の開業当時、ほかの地下鉄から孤立して駒込~赤羽岩淵間のみを4両編成で結んでいた時代に、この未来を誰が想像できたでしょうか。
直通先の東急目黒線を走る、東京メトロ南北線の9000系電車(2021年12月、大藤碩哉撮影)。
東京メトロには2022年現在9の路線があります。同社は2004(平成16)年4月に営団地下鉄(帝都高速度交通営団)が民営化されて発足しましたが、南北線はその営団時代に開業した最後の路線でもありました。営団は南北線を、21世紀を見据えた新しい路線と位置づけ、当時の最新技術を盛り込んで開業させています。
例えばホームドアの設置です。今でこそ都市部の駅では目にする機会が多いものですが、同線は当初から導入していました。それも、床から天井までを隔てるフルスクリーン型であり、これは現在でも少数派です。
ほかにもワンマン運転の実施、これに寄与するATO(自動列車運転装置)の採用、利用客に身近な例ではプリペイドカードの導入などを行いました。これらは稼働・利用状況を伺うという意味で試験的な要素もあり、「孤立路線だからできた」側面もあるといえるでしょう。
「最新の地下鉄」は徐々に南へ延伸していき、車両も6両編成となり、ついに2000(平成12)年9月、溜池山王~目黒間の開通をもって全線開通。
ただ東京メトロ各駅の2020年度乗降人員を見てみると、南北線は少ない順の上位5駅に、3駅がランクインします。1位が西ケ原、3位が志茂、4位が本駒込です。
「乗りものニュース」は2021年4月、東京の地下鉄で利用したことがない、もしくはあまり利用しない路線はどれか尋ねるアンケートを実施。回答者907人のうち51.8%が南北線を選択しましたが、これは都営地下鉄を含む13路線で最多でした。理由として、新しいゆえに地下深くを通っていること、JR山手線の大ターミナル駅に接続していないことなどがありました。

先行開業区間の終点だった赤羽岩淵駅(2021年12月、大藤碩哉撮影)。
一方で利用客からは、溜池山王や飯田橋といった都心部に直接アクセスできる利便性を評価する声が聞かれたほか、輸送障害の少ない南北線を、JR線が不通の際にサブルートとする人もいました。利用客が少ないゆえ混雑が比較的少なく、快適に移動できる点も挙げられました。
2023年3月には、新規開業する相鉄・東急新横浜線を介して広がる直通運転ネットワークの中に南北線も組み込まれ、車両も順次8両編成に増結されます。開業当初は実質的に「北区シャトル」(駒込駅のみ豊島区)だった南北線ですが、ネットワークの広がりとともに、実際の利用者から聞かれた利便性や快適さを多くの人が実感することになるのでしょうか。