決して「コロナだからたまたま…」ではなさそうです。

一般的には「遅延しやすい」環境?

 宮崎県を拠点とする航空会社ソラシドエアが、航空データ分析を提供する英国CIRIUM社より、定時到着率部門「The On-Time Performance Awards」で、2021年LCCカテゴリーで世界ランキング1位の認定を受けました(ソラシド自体は「LCC」を名乗っていない)。

また、2020年1-3月期から、国土交通省「特定本邦航空運送事業者に係る情報」でも、3期連続でトップの定時運航率をキープしています。なぜ同社はここまで「時間通りに目的地に着く航空会社」になったのでしょうか。

機材ほぼ全稼働のキツめダイヤでなぜ「定時運航率世界一」に? ...の画像はこちら >>

ソラシドエア機(乗りものニュース編集部撮影)。

 CIRIUM集計では、ソラシドエアの定時到着率(定刻に対して遅延15分未満に到着した便の全体に占める比率」を示す)は「97.9%」を記録しました。ただ同社は、一般的にそこまで定時性を保ちやすい環境で就航しているわけではありません。ちなみに、2018年度の国交省集計の定時運航率は87.2%。これは国内航空会社でも下位の方でした。

 というのも、本州の拠点となる羽田空港は混雑することも多く、おもに就航している九州地域の空港も、運用時間の制限が多いなどの制約があり、便間を長く取りづらいのだそうです。

 また、高い定時率をうたう航空会社のなかには、予備の旅客機をスタンバイさせ、トラブルの際にすぐに代替できるようにしているところもあります。実はソラシドエアの“凄さ”はここにあります。同社の担当者によると「14機を保有していますが、予備機がスタンバイしているケースは、うち1機あるかないか」とのこと。つまり、飛行機を“寝かせない”効率的な機材繰りをしつつも、遅延も発生させない――というのがポイントで、この点はCIRIUM社からも高く評価された点だとしています。

 高橋宏輔(「高」は「はしごだか」)代表取締役社長は「このギリギリの厳しいダイヤでありながらも、現場社員の努力で達成できました。本当に現場が頑張ってくれたんだなと思います。ある意味、(普段の稼働率の高い)厳しいダイヤに鍛えられていたのかもしれません」と話します。

 ソラシドエアでは、具体的にどのような取り組みをしたのでしょうか。

ソラシドはどう「無遅刻会社」になったのか

 ソラシドエアでは2018年、社内横断的プロジェクトとしてTCP (Time Commitment Project)プロジェクトを立ち上げ、部門横断的に定時運航率向上に取り組みました。また、各部門でも、さまざまな取り組みを実施。具体的な内容は以下のとおり。

・機体の「予防整備」を徹底し経年部品の早期交換をするなどして不具合を未然に防止する(先述の効率的な機材繰りの一因)。
・出発便の預け手荷物の積み込み場所を前方貨物室にすることでスピードアップを図る。
・オリジナルの機内安全ボードを設置することで旅客が自席を見つけやすくする。
・通路での乗客滞留による遅延を防ぐため、たとえば「一歩座席側に入ることで通路を開けるよう」アナウンスを工夫する。
・地上係員は定刻ではなく、早発(インタイム)を意識したキャンペーンを多客期に実施。

チームで早発便の数を競い合うことで、成果を“見える化”する
・パイロットもCAとともに機内準備を手伝うことで、乗客の搭乗開始を早められるようにする。

機材ほぼ全稼働のキツめダイヤでなぜ「定時運航率世界一」に? ソラシドエアの工夫がスゴい件
Large 02

左から3番目がソラシドエアの高橋社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 高橋社長は「コロナ禍という大変な時期ではありますが、当たり前のことを当たり前ではないレベルで徹底してやる努力が、この実績にあらわれています。社員には自信をもってプロ意識を高めてほしいです。コロナ後は空港混雑が戻るでしょうが、なんとか定時率を悪化させないように努力していければと思います」と話します。

編集部おすすめ