ターミナル駅のホームで営業を続けてきた「日本一小さなファミリーマート」が閉店しました。“駅ナカコンビニ”がコンコースや改札外に進出するなか、売店から進化したホームのコンビニは徐々に減少しつつあります。

「日本一小さなファミマ」見かけは売店、でもお客さん多数!

 近鉄線・鶴橋駅の構内にある「ファミリーマート近鉄鶴橋駅1番ホーム東店」が、2022年5月31日9時をもって閉店しました。「日本で一番小さなファミリーマート」の看板を掲げた同店の突然の閉店告知に驚く人々も多く、駅利用者が店の写真を撮っていく姿も見られます。

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ファミリーマート近鉄鶴橋駅1番ホーム東店。5月31日閉店(宮武和多哉撮影)。

「1番ホーム東店」がある鶴橋駅1・2番ホームは2本の線路に挟まれ、名古屋・伊勢志摩方面の特急から奈良方面の普通まで、多くの列車が停車します。JR大阪環状線や地下鉄千日前線からの乗換客も多く、人影が絶えることはありません。

 その中で「1番ホーム東店」は、ホームの幅が4~5mまで狭くなった場所にあり、店舗の幅はわずか2m×2mほど。店の頭上にはファミリーマートの共通仕様であるグリーンとホワイトの“行燈”(電飾看板)が設置され、さらにその上に「日本で一番小さなファミリーマート」の看板が掲げられています。客が店内へ入るスタイルではなく、その佇まいはコンビニと言うより駅ホームの売店といった方がしっくり来ます。店の立地はホームの端に近い場所ですが、コンコースへの階段に近いこともあり、この店舗は重宝されてきました。

 なお、「日本で一番小さな」の看板には小さく「2014年3月現在」と書かれていました。近年ファミリーマートは「マイクロコンビニ」と呼ばれる売店スタイルの店舗を工場・病院などに多く出店しており、現在はさらに小規模なファミリーマートがあるかもしれません。

 しかし、この「1番ホーム東店」のようなホーム上の店舗は、鶴橋に限らず、他の駅でも徐々に数を減らしつつあります。かつて鉄道駅の構内といえば、国鉄の「キヨスク(kiosk)」、阪急「アズナス」、名鉄「サンコス」など、各社ごと独自ブランドの売店やコンビニの牙城でした。それらが現在では、ファミリーマートなどの大手コンビニチェーンに集約され、さらに整理と再編が進んでいるようです。

売店→コンビニ化で盛り返した近鉄の“駅ナカ店舗”

 昭和末期まで主流であった「キヨスク」など駅売店の主力商品は、スポーツ新聞、ガム、缶コーヒーなど、通勤中のサラリーマンに向けたラインナップでした。JANコート(バーコード)も電子マネーもなかった当時、全ての商品と価格を暗記して乗客をさばく店員さんの“職人技”によって店が成り立っていたと言えるでしょう。

 しかし多様な乗客に支持されるべく、鉄道会社は各社とも“コンビニ化”への舵を切っていきます。

 2000年代以降、近鉄の売店事業も年3%程度の売り上げ減少に悩まされ、2005(平成17)年頃から自社の売店を「K-PLAT」「Pochet plat(ポケットプラット)」へ転換。近鉄は、もともと系列会社にコンビニチェーン「am/pm」のフランチャイズ展開を行う「エーエム・ピーエム近鉄」があり、駅構内や駅近でコンビニを展開していたノウハウもあってか、約60店舗の転換を一気に進めることができました。この転換は目に見えた成果を挙げ、店によっては日販(1日の売り上げ)6割もアップしたそうです。

鶴橋名物「日本一小さなファミマ」閉店 徐々に消えるホーム上の売店&コンビニ
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閉店告知(宮武和多哉撮影)。

その後、2013(平成25)年3月には上記2ブランド約60店を運営する「近鉄リテーリング」がファミリーマートのFCに加盟、その際に鶴橋駅ホーム東店も売店スタイルの「Pochet plat」から転換し、「日本で一番小さなファミリーマート」を掲げることになりました。

なお前述の「am/pm」も2010(平成22)年にファミリーマートへ合併され、近鉄の駅構内店舗を含む全店の転換が1年ほどで完了しました。

つまり近鉄の駅構内にあった複数ブランドのコンビニ・売店は、複数のルートでファミリーマートへ合流したことになります。

ホーム上のコンビニのライバルは「同じ駅の同系列店」?

 このような鉄道コンビニの大手チェーン化は、他の鉄道会社でも同様です。広い駅構内に数店が展開される場合もあり、例えば鶴橋駅では閉店する「1番ホーム東店」のほか、「1番ホーム西店」「3番ホーム西店」「東3階店」など複数のファミリーマートが存在。いずれも“日本一小さい” 1番ホーム東店より商品が揃っています。

 また1番ホーム東店の手前側には「アーバンライナー」「しまかぜ」などの特急券販売窓口があり、かつては行列ができるほど賑わっていました。しかし現在はチケットレス乗車が浸透、かつ近年ではコロナ禍で乗客の減少・運転本数の3割削減など、近鉄特急そのものにとって厳しい状況が続き、以前ほどこの場所に人が滞留しなくなっていたことも、閉店の一因と言えるかもしれません。

鶴橋名物「日本一小さなファミマ」閉店 徐々に消えるホーム上の売店&コンビニ
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近鉄難波駅1番ホームのファミリーマートも2022年3月末で閉店した(宮武和多哉撮影)。

 なお、近鉄独自ブランドからファミリーマートに転換した店舗の中でも、近鉄名古屋(4番ホーム)、大阪難波駅(1番ホーム)など、ホーム上の店舗の閉店が相次いでいます。

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