かつて運航されていた超音速旅客機に加え、近年、ハイパーループや宇宙エレベーターなど、常識を覆す乗りものの計画が浮上していました。それらはどうなったのでしょうか。
「ハイパーループ」や「宇宙エレベーター」など、常識を覆すような乗りものの計画が近年、浮上していました。また、かつて営業運航を行っていた、いわゆる「超音速旅客機」の復活も計画されています。それらはどうなったのでしょか。
超音速旅客機ブリティッシュ・エアウェイズが運航していたコンコルド(画像:ブリティッシュ・エアウェイズ)。
1970年代から定期国際航路に就航し、巡航速度マッハ2(時速にして約2200km)を記録していた唯一の超音速旅客機「コンコルド」が2003(平成15)年に退役して以降、超音速旅客機は実現できていませんでした。しかし2010年代に入って超音速旅客機開発の機運が高まり、運用に向けて国際的に議論が活発化しています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)では音速の5倍であるマッハ5で飛行する超音速旅客機の研究が進められています。この飛行機の運用が実現すれば、東京からロサンゼルスまで約10時間かかるところを、約2時間に短縮できます。2021年にJAXAはIHIなどと官民一体の協議会を立ち上げ、米ボーイングなどと共同開発をすることを発表。ボーイングは2030年ごろの運用開始を想定しているので、超音速旅客機に乗れる未来も近いかもしれません。
また、JAL(日本航空)も提携するアメリカのスタートアップ企業ブーム・テクノロジーが開発中の「オーバーチュア」と呼ばれる超音速旅客機は、すでにユナイテッド航空が2021年に発注済み。こちらはマッハ1.7(約2100km/h)で運航し、東京~サンフランシスコを6時間で飛ぶとされています。
ハイパーループと宇宙エレベーターはどうでしょうか。
ハイパーループハイパーループとは、真空のチューブの中を超高速で移動する新しい交通システムのこと。世界中で複数のチームが開発していますが、アメリカの電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスクCEOはこの新システムを開発するために「The Boring Company」という会社を2016年に設立しており、ハイパーループの本格的なテストは今年後半に行われるという趣旨のツイートを2022年4月26日に投稿しています。今後数年間で実用化する予定で、ハイパーループの最高時速は約1100キロにもなるといいます。
また、6月24日には日立製作所がハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ(HTT)とともに、ハイパーループの信号システムや運行管理システムなどを統合的に試験できるデジタルシミュレーターの開発に成功したと発表、ハイパーループの商用化に重要なマイルストーンを達成したと発表しました。
こちらは、トンネル内をカプセル様の移動体で最高1200km/hにて移動する想定。次のステップでは、物理的な信号インフラとシミュレーションモデルの両方を実際のカプセルとデジタル的に統合し、フランス・トゥールーズにあるHTT社の試験線でシステム全体の物理的試験に移行するための道が開かれるとしています。

日立製作所が関与するHTTのハイパーループのイメージ(画像:日立製作所)。
宇宙エレベーター
人工衛星から地表まで下ろしたケーブルを伝って宇宙まで上がっていくという輸送手段が宇宙エレベーター(軌道エレベーター)です。日本では建設大手の大林組も2050年の運用開始に向けて宇宙エレベーターの開発を進めています。そのケーブルの長さは10万kmにも及ぶ想定です。
実は宇宙エレベーターの仕組み自体は100年前に考案されていました。
インフラとしての宇宙エレベーターが出来上がれば、膨大なエネルギーを使うロケットよりも容易に宇宙へ行けるようになり、宇宙開発や観光にも役立つと期待されています。ただ、目下の課題となっているのは、カーボンナノチューブを長くする技術。現在はまだ十数cmほどのものしか作ることができないそうで、これを10万kmまで延ばすには、カーボンナノチューブを接合するといった新たな技術が発見されれば、研究が大きく進展するといわれています。