年間発着数50万回を目指し、さらなる空港拡張に取り組み始めた成田空港。この拡張の図面を見ると、今回の計画が円滑にいったとしても、そこからさらなる拡張が難しそうな将来が見えてきます。

2029年に50万回対応のため拡張

 成田空港は2022年現在、年間発着数50万回を目指し、2029年3月を目標にした空港機能の強化に取り組んでいます。空港の面積を今の2倍近い2297ヘクタールまで拡張、滑走路も1本増やすほか、現在2500mのB滑走路も延伸する予定です。ここから、成田空港はどのように大きくなっていくのでしょうか。

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成田空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 かねてより内陸に位置し、面積の拡大は難しいといわれてきた成田空港。この空港の歴史を知る人々には、今回の空港拡張計画は驚きもあることでしょう。

その反面、今回発表された拡張計画が実行されたあとは、さらに大規模な拡大が困難になりそうで、この空港の運用限界が見えてしまったようにも思われます。

 成田空港は1960年代の初期プランでは、横風用も含めて5本の滑走路を設置するという“青写真”が描かれていました。しかし現実は、用地取得に難儀を極めたことなどから、1978年にA滑走路1本でオープンし、2021年現在はAとB、計2本の滑走路で運用しています。

 当初、成田空港は22万回の年間発着数を上限としていましたが、羽田空港と合わせて「首都圏空港で100万回」へ増やす取り組みが行われ、年間発着数は30万回、そして50万回へ引き上げられました。

 2002年にB滑走路が供用開始された頃、当時の新東京国際空港公団(現在の成田国際空港株式会社)の関係者は「成田の発着数は30万回で打ち止めだろう」と語っていたのを覚えている筆者にとって、今回の拡張計画は「やろうと思えばできるものなのだ」と、驚きを隠せませんでした。

 ただ、今回の計画が円滑にいったとしても、そこから先の拡張は、より困難を極めるのは先述したとおりです。

それは、今回公開された、50万回対応のために機能を拡大した後の成田空港の形状から見てとることができます。

形から見る、将来の成田空港の拡張の難しさ

 2029年までの成田空港拡張計画で提示されている同空港の拡大後の面積は、約2300ヘクタールになります。これは 1964年度の運輸白書に残されている、滑走路が5本あった先述の“青写真”、「新東京国際空港計画案」とほぼ同じ広さになります。

 しかし、新しい成田空港の拡張案は南北に細長い、端正とは言い難い形をしています。これは、「新東京国際空港計画案」とも全く違う姿です。この形のズレが、さらなる用地の拡張を困難であることを示しているのです。

 B滑走路の東には工場や農園、住宅も点在しているほか、河川も流れています。また、取得予定の敷地を見ると、東側の境界線が曲がりくねっている様子が確認できます。これは、圏央道の建設予定地に接しているためです。

成田空港はどこまで大きくできるのか 2029年に大拡張も… “未来図”から見えたのは限界?
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成田空港の航空写真(画像:国土地理院の航空写真を加工)。

 また、今回新設が予定されている3本目の「C滑走路」周辺をもっと拡張しようとしても、東側の圏央道に阻まれてしまうでしょう。なお、このエリアは、その反対側、つまり西側へ拡張しようとしても三里塚の街があります。

 圏央道の予定地を変えたり、大規模な住民の移転を行ったりするには相当な時間がかかり、補償も含めれば、拡張に見合う効果があるかはなんともいえないところです。その一方で、南北へ拡張しようとすれば、これ以上に空港が細長く広がる形となり、航空機のオペレーションのうえでも、不便この上なくなるでしょう。

 なお、仮に将来、4本目の滑走路が求められた場合、横風用として斜めに滑走路を設置するレイアウトが考えられるかもしれません。このことは荒天時の就航率向上などはには大いに期待できるところですが、現在予定されている平行的な滑走路配置に比べて、発着数の大幅なアップができるか未知数です。

 ただ、遠い将来より「2029年の機能強化をまず実現」が大切なのはいうまでもありません。かつて首都圏空港は発着数が限界に近付き、その解決策を議論し発着数を増やしたら、また新たな限界が近づくといった、まさに“イタチごっこ”の様相でした。

 それだけに、将来にわたって成田空港を考えると、50万回達成後のさらなる成長のため、いまから知恵を絞って将来の空港像を模索する必要があるかもしれません。