NHK朝ドラ「舞い上がれ!」の舞台として注目を集める長崎県・五島列島へ、博多から直行フェリーが運航されています。ダイヤ・価格ともに使いやすく、俳優・川口春奈さんが五島に住んでいた頃によく利用されていたそうです。

当時は“ニコモ”だった川口さん 東京通いに利用していたフェリー「太古」とは?

 NHK朝の連続テレビ小説「舞い上がれ!」の舞台としても注目を集める長崎県・五島列島へのアクセスといえば、西九州新幹線の終点・長崎駅近くのターミナルからの航路や、五島福江空港の空路などが考えられますが、他に、博多港から五島列島の4島を直接結ぶ野母商船フェリー「太古」もあります。下り(五島行き)は夜行、上りは昼行で運航され、夜行便で旅客の利用が多いといいます。
 
 このフェリーの終点・福江島(長崎県五島市)といえば、2022年12月現在、フジテレビ系ドラマ「silent」で主演を務める俳優・川口春奈さんの出身地でもあります。

東京→五島列島1000km超 川口春奈さんの“エクストリーム...の画像はこちら >>

4代目「フェリー太古」。川口さんが学生時代に乗船していたのは3代目「太古」と思われる(宮武和多哉撮影)。

 2007年に雑誌「ニコラ」のモデル“ニコモ”として、のん(能年玲奈)さんや二階堂ふみさんなどと同期で芸能界デビューしてからも、仕事のたびに福江島と東京を往復、月曜朝に島へ戻って学校に通うために、東京から飛行機とフェリー「太古」を乗り継いで帰っていたのだとか。

その頃の様子は、さまざまなインタビューやご自身のYouTube「はーちゃんねる」で語られています。

 いろいろと重宝されているフェリー「太古」は、「早朝に到着」「かなり格安」という利点があり、川口さんの当時の通学事情、懐具合にもピッタリと合っていたようです。

フェリー「太古」でしかなし得ない「登校時間ギリギリの福江島到着」

 フェリー「太古」の博多港出港は23時45分(2時間前から乗船可能)。このフェリーなら、福江島に限らず五島列島の各島に最も早朝に到着できます。

「太古」が寄港する各島(宇久島・小値賀島・中通島・奈留島・福江島)には長崎港や佐世保港からの航路もありますが、それらの朝6~7時台の始発便が到着するのは9時以降。福岡で所用や観光を済ませて、翌朝から通常通り仕事につく人々にとって、各港に朝4~8時台に到着できる「太古」は、他の交通手段で代用がきかないのです。

 福江島到着は朝8時台(現在は8時15分)。川口さんは下船後にターミナルビルへの長い通路を駐車場まで移動し、待ち構えていたお母様のクルマの後部座席で制服に着替え、港から1kmほど先の中学校に登校していたのだとか。

 またこのフェリーは、他の移動手段と比べて、圧倒的に安く利用できるのも嬉しいところ。

 例えば空路(オリエンタル・エアブリッジ)なら福岡空港~五島福江空港間で2万円弱、早割の平日予約でもだいたい1万円以上。そして長崎港・佐世保港からの航路も原油高の影響を受け、今や長崎港~福江港で3000円以上。なお「舞い上がれ!」に出演中の俳優・長濱ねるさん所縁の中通島だと、佐世保港からのフェリーが来年1月から3030円に値上げ(調整金等を含めない運賃)される予定です。

東京→五島列島1000km超 川口春奈さんの“エクストリーム通学”支えた夜行フェリーに乗った
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五島福江空港(五島つばき空港)。朝ドラ「舞い上がれ!」にも登場(宮武和多哉撮影)。

 しかし「太古」なら博多港~福江港で4930円(2022年12月現在。2014年に値下げ)、2200円をプラスすればベッド付きのグリーン寝台などに変更できるのも嬉しいところ。当時の川口さんはまだ俳優・モデルとして駆け出しで、懐事情もあって格安なフェリーを利用していたそうです。

 なお博多~長崎間は9月に部分開業した西九州新幹線によって最短1.5時間まで短縮されていますが、前述の通り、長崎港から五島列島への船便のアクセスが今ひとつ。

博多から夜に移動して早朝に到着できるフェリー「太古」は、“コスパ”(コストパフォーマンス)“タイパ”(タイムパフォーマンス)ともに優れているからこそ、新幹線や飛行機と競合しながら生き残ったと言えるでしょう。

川口さんも結構参った?夜行フェリーの独特な乗り心地

 ただ、このフェリー「太古」はその日の天候によって、乗り心地が極めて独特です。年に何度か利用されるという役所関係の方によると、玄界灘(おもに長崎県・平戸島沖)、上五島(中通島の西側)で特に揺れやすく、博多からの便では「玄界灘を越えて安心した人が上五島で一斉にやられている」のだとか。

 現在の「太古」(4代目)は2014年に新造船・就航しており、川口さんが乗船されていたのは、前の世代のひとまわり小さく揺れの影響を受けやすい「太古」だったと思われます。川口さんもこの乗り心地について、ご自身のYouTube「はーちゃんねる」で、決して言語化することなく、感情のこもった身振り手振り・擬音で語っていますが、ご本人がおっしゃられる通り、確かに「ド根性」としか言いようがありません。

 川口さんは仕事が増えるにつれて、最初は月に1回ほどであった東京通いが週1~2に。

その頃には既に「三井のリハウス」「KDDI LISMO」CMに出演するなど多忙になっており、“通勤”の限界もあって上京を決意されたのだそうです。

東京→五島列島1000km超 川口春奈さんの“エクストリーム通学”支えた夜行フェリーに乗った
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川口春奈さんも通ったと思われる福江港の連絡通路(宮武和多哉撮影)。

 なお九州では他にも奄美諸島など、離島への夜行フェリー航路があります。その中で「太古」と同様に博多港から出港するフェリー「うみてらし」は22時30分博多港発、朝の3時25分に上対馬・比田勝港着(朝7時まで船内に滞在可能)。こちらも玄界灘をズバッと南北に横切るため、体調を整えての乗船をお勧めします。