首都高の湾岸線から都心方面へ延び、晴海で終点となる「10号晴海線」。現状でも高い整備効果が発揮されているようですが、その先、C1都心環状線までの延伸は実現するのでしょうか。

計画“素案”だけは固まっています。

3本目の都心~湾岸線連絡路「晴海線」

 首都高速道路は2023年2月21日、外部有識者を交えた「2022年度首都高速道路事業評価監視委員会」を開催しました。今回の評価対象は、2018年3月に事業区間の全線が開通した「10号晴海線」です。

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晴海線の終点である晴海出口付近(乗りものニュース編集部撮影)。

 晴海線は、湾岸線の東雲JCTから都心方面へ、豊洲を経て晴海までを結びます。9号深川線、11号台場線に並ぶ湾岸線と都心方面の連絡線として計画されたものの、C1都心環状線への接続は未定となっています。

 それでも、豊洲市場のアクセスや、東京オリンピック・パラリンピック選手団の安全輸送にも大きな役割を果たしたと、大会組織委員会や選手団などから評価されているといいます。

 現在の開通区間が事業化されたのは2000年代前半でしたが、都市開発が急速に進展し、沿線エリアの人口は20年間で約3倍に増加。一般道の交通量が増加するなかでも、晴海線の開通以降は走行性や安全性がいずれも向上していることが明らかになっています。

 また、末端が他の首都高の路線に接続していないなかでも、晴海と銀座は目と鼻の先とあってか、9号深川線、11号台場線などからの交通転換が進んでいるようです。経路の選択肢が増え、他路線の通行止め時の迂回路としても機能しているといいます。

 沿線ではまだまだ開発が進みます。

たとえば選手村跡地の大規模マンション「HARUMI FLAG」には、約1900台の駐車場が設けられる予定ですが、晴海線によるアクセスのよさがエリアの魅力向上につながっているとのこと。豊洲駅の混雑に代表されるように、急激な人口集中に対して鉄道整備が追い付かない傾向があるなか、道路はよくなっているという評価も委員から聞かれました。

 こうした効果から、事業評価の指標となる費用対便益(B/C)は「2.0」と試算され、十分な便益をもたらしたことから、今後の事業評価や改善措置の必要性はない、とされました。

 ただ、いまだ事業化されていないC1都心環状線までの延伸については、委員からも早期の事業化を求める声が上がりました。その見込みはあるのでしょうか。

延伸事業やるなら今しか? なぜ決まらないのか

 晴海線の延伸部について、東京都側ではわりと具体的な路線構造などの「素案」を公表しています。

というのも、現在進められているC1「日本橋区間」の地下化事業に合わせて、銀座周辺の新経路「新京橋連結路」の建設、ならびにC1「築地川区間」の大規模更新を同時期に進める必要があるからです。

 新京橋連結路は、銀座の地下にトンネルを掘って八重洲線とC1をつなぎ、現在の江戸橋JCTを経由するC1の環状機能を代替する計画です。東京都の街路計画課によると、現在は環境アセスメントと都市計画の手続きを進めており、今年中には完了したい構え。「日本橋区間の地下化が2035年目標なので、それと同時に新京橋連結路の建設も完了しないといけない」そうです。

 これらに合わせて、老朽化しているC1築地川区間の造り替えに相当するような大規模更新、さらに地域の街づくりなどが同時並行で進められます。逆に言えば、複数の課題を同時に解決できるチャンスだからこそ、銀座のようなエリアにあって数々のプロジェクトが動いているというわけです。

 ゆえに、晴海線の延伸も考慮に入れた素案を都が提示しており、「C1に接続する部分なので、同時に進めた方が安く済む」ものの、実際の動きとなると「白紙」(街路計画課)なのだとか。まずもって、その事業者が決まっていないといいます。

首都高「晴海線」いつまで中途半端なまま? C1延伸計画“素案”も公表済 現状でも高い整備効果
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晴海線の位置関係(画像:首都高速道路)。

 普通に考えれば首都高が事業主体になりますが、要はその莫大な事業費を誰が、どう払うかがまだハッキリしていない状態だそう。ちなみに、これまでの事例を挙げると、たとえばC2中央環状線の品川線(大橋JCT~大井JCT)は東京都と首都高が共同で行っており、山手トンネルの1本が東京都の街路事業として整備されています。こうしたスキームも含め、これから検討が進んでいくと考えられます。