「ラファール」納入までの繋ぎ。

大統領が中古購入は好ましくないと言ったことも

 インドネシア国防省は2023年6月15日、カタール空軍が所有していた「ミラージュ2000-5」戦闘機を12機中古購入すると発表しました。

しかし、この件に関して同国の議員から「機体が古い割には価格が高い」と批判を受けています。

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インドネシア国防省が購入に動いたカタール空軍で使用されていた「ミラージュ2000-5」(画像:アメリカ海軍)。

 元カタール空軍所属の「ミラージュ2000-5」は、中古戦闘機の代理店を務めているチェコの企業から約8億ドル(約1140億円)で購入する予定です。インドネシア空軍では現在、同じくフランスのダッソー製である「ラファール」を42機購入し、老朽化したF-5E/F「タイガーII」やBAe「ホーク」を代替することにしていますが、初回納期は少なくとも2年後、全機揃うには5年以上かかるとみられており、それまでの繋ぎとして中古ミラージュの購入を計画したようです。

 しかし、カタール空軍が購入したのは1997年のことであり、機体年齢の割に高価だという指摘のほか、老朽化した機体であるため、安く購入したとしても、修理などで結局割高になるのではという意見もあるそう。とある議員が「中古ジェット機を購入しなければならないほど、何が緊急なのか」と疑問を呈したという現地メディアの報道もあります。

 なお、同国のジョコ・ウィドド大統領も過去に「インドネシアは中古の兵器システムを購入すべきではない」と述べたこともあります。

 中古機の購入を決定するに至った経緯について、同国のプラボウォ・スビアント国防相は「(ラファールが届くまでの)5年間を乗り切るためには、暫定的な抑止力が必要である。その抑止力がミラージュ2000-5であることはわかるはず」と6月15日の防衛産業系のイベントでスピーチしたといいます。プラボウォ氏はほかにも、「ミラージュ2000-5」には「ラファール」にも使われている技術があるため、同機で訓練した方が「ラファール」への移行がスムーズにいくとも説明しているようです。

 今回の中継ぎともいえる戦闘機の中古購入に至った経緯には、国際情勢も影響しています。

 もともとインドネシアはF-5E/F「タイガーII」をロシア製のSu-35に置き換える予定で、2018年にはロシア政府とほぼ合意の状態にありました。

しかしロシアは2014年にウクライナ領だったクリミアの併合を宣言したことでアメリカと対立を深めており、同機を購入した影響でアメリカが制裁に出る可能性があるということで断念。そこで「ラファール」に変更したため、新型機の納入が遅れてしまいました。